去る仲間を見送り続けたPONにとって、「夢を語り合うこと」とは
──今回リリースされるシングルの表題曲「シンボル」はアニメ「『食戟のソーマ 餐ノ皿』遠月列車篇」のオープニングテーマに使用されていますが、ラックライフには「僕ら」「リフレイン」「風が吹く街」など数多くのタイアップ曲が存在します。以前PONさんは各タイアップ作品の原作を参考にして楽曲を制作しているとお話ししていましたが、今作も同じ方法で制作したのでしょうか。
そうですね。「ソーマ」は以前から原作を読んでいたので、タイアップが決まったときは「来たー!」って感じで(笑)。今回はソーマと自分、それぞれ重なる部分を歌にしてみました。
──これまでPONさんが作詞した楽曲は寄り添うような優しさが表現されていたり、ある特定の人に向けて作られたものが多かったですよね。「シンボル」は「共に行こうぜどこまでも 奇跡なんていらないから」「夢を夢のままにしないで ほら今叶えなきゃ」など、ポジティブな言葉でリスナーを引っ張っていくような内容になっています。
「ソーマ」って学校が舞台で、仲間と一緒に刺激し合って敵に挑んで、自分の理想を追いかけていく作品じゃないですか。俺らはライブハウスで同じことをやってきたんです。いろんなバンドとおもくそライブして、打ち上げでああでもない、こうでもないって話し合ったり、「こんなバンドになりたい」「あんなことをやりたい」って夢を語り合ったり。でもそれを何年も続けてきて、ある日「同じことをずっとやっていてもしょうがない」って考えたことがあって。
──今の活動に疑問を感じたと。
でもお互いがお互いの道で活躍して、カッコいい音楽を作って、何十倍も大きな会場でまた会ったとき、そこでまた夢を語り合うことができたら最高やなって思ったんですよ。俺らもそうだし、地元や全国にはまだ売れてるとは言えない仲間がめっちゃいる。俺はみんなと一緒にすごく売れたいと思うし、その中でも特にカッコよくなりたいとも思うし。そんなことを考えながら歌詞を書いたんです。
──当時と同じ仲間たちと名を上げつつ、ずっと夢を語り合いたい、ということですよね。
それが一番カッコいいですよね。夢はもっと大きくなってるかもしれんし、もしかしたら変わらずに持ち続けているものかもしれない。そういう話を未来でできるようにしないとあかんと思って。「みんなで売れような!」「カッコよくなろうぜ!」ってことですよね。
──10年以上にわたる活動の中では、活動を辞める友人も多かったのではないでしょうか?
ある時期がくると辞める人がたくさん出てくるんですよね。高校生だった18歳のときは、一緒にやってたバンドはほぼ解散しちゃって。気付いたら休止もせずに活動してたの、俺らだけだったんです。ほかには22歳、25歳の頃はみんな就職を考えて辞めていって。解散ライブとか休止前ラストライブとか、何本も呼ばれましたよ。だからこそ、今でも残っている仲間とは強いつながりがあると思うんです。もちろん続けることだけが正義だとは限らないけど。
──この話、仲間たちが聞いたらうれしいでしょうね。歌い方がこれまでの楽曲と比べて、パワフルな感じに変わっているのも特徴的です。
やっぱりメッセージがメッセージやしね。「オラ、やろうぜ!」って仲間たちに向かって歌ってるような感じにしました。
ライブでは一生やらないかもしれない「ルーター」
──一方2曲目「ルーター」では「なにがわかんだよ」「壊れそうな僕」など、かなり切羽詰まった心情が歌われています。今までPONさんが作ってきた楽曲では、ネガティブな部分があっても、最終的にはポジティブな答えを導き出すようなものがほとんどでした。ただ「ルーター」についてはまったくポジティブな要素が込められていなくて、救いようがないと言うか……。
この曲を作る前、すごくショックな出来事があって。今までメチャクチャ大事にしていたものがあっさりとなくなってしまったんですよ。そういう体験を経て「俺が大事だと思ってただけで、ほかの人にとっては大事ではなかったんや」「俺の信じてたものってなんやったんやろ?」って考え込んでしまって。
──相当ショックだったんですね。
大事にしてきたことは事実やし、今も大事にしたいと思ってる。それが「なにがわかんだよ」って歌詞に表れているんですよね。「どんだけ大事にしてきたのかわからんやろ? 何がショックなのかお前にはわからへんやろ? けど、めっちゃ大事やねん」っていう思いが込められてて。でも「涙が出るのか出ないのか、ようわからんぐらい悲しい。これちょっとわかってくれへんかな」みたいな気持ちもある。丸投げにすることはできなかったんです。
──これまでPONさんは自分の感じた思いだけで歌詞を作ってきたとお話ししていました。だからこそ、この曲の歌詞を見てPONさんを心配する方も出てくるかもしれません。
「これを聴いて、誰がどう思うの?」って話ですよね。でも、誰がどう思うとかそんなんじゃなくて、俺がただ歌いたかった、わかってほしかったという曲なんです。だからライブでは一生やらないかもしれない。でも、これを聴いて救われる人がいるのであれば、俺も救われます。
──とてもパーソナルな内容ですが、それにも関わらず今回のシングルに収録したのはなぜでしょうか?
この曲と3曲目「バースデー」は去年の夏頃にはレコーディングし終わってたんですけど、完成してから「どうしようか、これ」って話し合って、そのままやったんですよね。でも温存しててもな……って感じだったし、収録することにしたんです。
「自分のための日」が「自分の人生を振り返る日」に
──もう1曲「バースデー」は誰かに対して寄り添うように歌う、これまでのラックライフらしさが踏襲された曲になっています。「ルーター」の内容がハードだったので、こちらを聴いて安心しました(笑)。
「PON戻ってきたわ!」って感じしますもんね(笑)。これはオカンに向けて作った曲で、近所の川でアコギを弾いて作った曲だったんですけど、何の気なしに歌ったフレーズが冒頭の「今日は僕の産まれた日」だったんですね。別に誕生日じゃなかったのに(笑)。原曲はいつできたかもう覚えてなくて、ラックライフの曲にしようとも思ってなかったんですよ。でもあるとき、バンドメンバーと新曲を作ろうとして、「こんなんあるけどやってみる?」って紹介したら、レコーディングすることになったんです。内容はもう、聴いたまんまですよね。みんながオカン思い出してくれたらそれでいいよ、みたいな。
──歌詞を見た際、友人や恋人などいろんな人に当てはめられる内容だと思ったんです。誰にでも「バースデー」はありますし。
そうなんですね。誕生日って部分は意識したかも。誕生日って、年を重ねると感覚が変わってきますよね? 昔は自分が主役になれる日と言うか、みんなが「おめでとう」って言ってくれる日、って感じだったじゃないですか。でも大人になったら高揚しなくなって、「ヤバ! 誰に会おう?」みたいなこともなくなったし、誕生日になる0:00きっかしまでケータイ見て待つ……みたいなこともしなくなったし。
──確かに、歳を重ねるとそこまで意識しなくなりますよね。
「自分のための日」から、「自分の人生を振り返る日」になったと言うか。で、そういうときに思い出すのがオカンのことだったんですよね。以前アルバム「正しい僕の作り方。」をリリースしたときに受けたインタビューで、「plain」って曲についての話題になったんです。その曲は最初両親に向けて作ろうとした曲だったんですけど、書いてるうちに今まで出会った人たち、みんなが自分を作ってくれた……って内容になったんです。その話をしたとき、ライターさんに「じゃあお父さんとお母さんについて歌った曲はないんですね?」って質問されて、「まあ、いつか作れたら」と答えたんですよ。ある日それを思い出して、完成したのがこの曲なんです。
──「正しい僕の作り方。」を発表した2014年から、およそ4年を経て生まれたわけですね。
だから一番最初の歌詞も、「生まれた日だったらオカンを思い出すかな」みたいな感じで思い浮かんだのかもしれないです。俺は親としゃべることもそんなになくて、むしろ親のこと、すごい嫌いやったんですよ。ちゃんと親に対して「ありがとう」とか言ったことなかったから、歌だったらいいかなって。この曲の歌詞、「ホンマにこれでいいんかな?」とか「俺こんなこと言うん?」とか思いながら作っていったんですけど……なんか、こういうメッセージって恥ずかしいじゃないですか(笑)。
──でも、「ありがとう」というメッセージをストレートに歌うことができる、という強さもありますよね。
なるほど、そうっすね。確かに恥ずかしいと思って作った曲とか、「ホンマは恥ずかしいけど、思ってること全部言ってみよう」って曲のほうが自分でも印象に残るし、ファンのみんなも好きになってくれることが多いです。
──ラックライフの楽曲は感謝や素直な気持ちなど、普段言葉にしづらいことを歌った楽曲が多いですよね。そこがラックライフならではの魅力の一つだと思うんです。
やっぱり歌じゃないと伝えづらいことってありますからね。だって、母の日にお母さんにお花あげて、「いつもありがとう」とか言えます?
──うーん……恥ずかしいですよね……。
ですよね!?(笑) 男子が母の日にプレゼントって……もう「恥ずかしい!」ってなっちゃいますよね。情けない話ではあるんですけど……なかなかできへんと思うんですよ。
──普段言いづらいことだからこそ、この楽曲に込められたメッセージが共感を生むんでしょうね。
俺自身もオカンへのメッセージは「この曲で堪忍! 一生分ってことでいいですかね?」ってことにしたいですよ(笑)。聴いてくれた人が「お父ちゃんとお母ちゃんに会いたくなる」とか、「昔のことを思い出す」とか、そういうことが起こればいいなって思いますね。聴いてくれた人のオトン、オカンを思い浮かべてくれたら、それでええんじゃないかな。
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LACCO TOWERとの出会い
- ラックライフ「シンボル」
- 2018年5月9日発売 / バンダイナムコアーツ
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初回限定盤 [CD+DVD]
2268円 / LACM-34750 -
通常盤 [CD]
1404円 / LACM-14750
- CD収録曲
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- シンボル
- ルーター
- バースデー
- 初回限定盤DVD収録内容
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2018.1.18「ラックライフ 2017-2018 ~Change The World TOUR~」
- 初めの一歩
- 変わらない空
- 存在証明
- サニーデイ
- 僕ら
- ラックライフ
- 2005年に高校の同級生であったPON(Vo, G)、ikoma(G, Cho)、たく(B)、LOVE大石(Dr)の4名で前身バンドを結成し、大阪・北摂を中心に活動を開始。2008年「ラックライフ」に改名し、2013年に事務所内のインディーズレーベル・I WILL MUSICへと所属した。2016年1月にはランティスからメジャーデビューすることを発表し、同年5月に同レーベル所属後初のシングル「名前を呼ぶよ」、2017年3月にメジャー1stフルアルバム「Life is beautiful」を発売。2018年5月9日にはメジャー6枚目のシングル「シンボル」をリリースした。シングル表題曲「シンボル」は現在アニメ「『食戟のソーマ 餐ノ皿』遠月列車篇」のオープニングテーマに使用されている。