ロザリーナ×マンガ家・藤田和日郎|「からくりサーカス」原作者と語り合う、アーティストとマンガ家の共通点

読みながら、本当に何度も泣きました(ロザリーナ)

──ここから「からくりサーカス」の話に踏み込みまして。ロザリーナさんが特に好きな登場人物を挙げるとしたら誰ですか?

ロザリーナ 私は作品を読んで、ギイ、ルシール先生、パンタローネ、(才賀)正二が好きになりました。私は物語を見るときに誰かに恋をしながら見るんですけど、中でもギイには特別に惹かれました。

藤田 ギイが(才賀)勝を殺そうとする場面があるんだけど、すべて吹っ切れたあとで最後に「幸せになれよ」と退場していく。そこでギイをすごくいい男に描けたのは大きかった。ルシールも普通の母親として子供をかわいがっていたのが悲劇になって、それから固く生きてきたんだけど最後に柔らかい顔を見せる。好いてくれたのは、そういうギャップを持ったキャラクターですよね。

ロザリーナ そうなんです。作品を読みながら、本当に何度も泣きました。藤田先生がお好きなキャラクターは誰ですか?

藤田 鳴海と勝です。勝は小さくて路傍の石ころのようだったのが、鳴海と出会ったことで成長していく。鳴海は男として憧れが強くて「こんなことを言えたら最高だな」という思いがあったので、その2人がすごく好きですね。

ロザリーナ

ロザリーナ 話が進んでいくと実は勝が……っていうまさかの展開があるじゃないですか。そこを読んで鳥肌が立ちました。普通が何かは難しいですけど、普通のマンガって5巻くらいまで読むと「こういうストーリーで進んでいくんだな」って想像ができるんですけど「からくりサーカス」は全然違って。私は何回ビックリさせられるんだろう、と。あれだけ話の枝葉が分かれたのが、最後はちゃんと1つのストーリーにつながりますよね。どうやって作ったのかなと思って。

藤田 もう意地ですね! マンガ家は最初に32ページで読み切りをやらされて、1つの話をおしまいまで持っていく訓練をするんです。それがたくさん並んでいるのが「からくりサーカス」じゃないかなと。しろがねの話とか、勝の話とか、アンジェリーナの話とか、そういうのがいっぱい並んでいるだけで。大きな話というのは、その連続の集まりじゃないかなと思います。

エンディングテーマという“蓋”が必要なんだな(藤田)

ロザリーナ 私、アニメ版を観て「『からくりサーカス』はすごく壮大な作品だな」と改めて感じました。音が付いて、映像になって、迫力が増して、映像の色味もすごくきれい。五感すべてを使って作品に触れると、やっぱりとてもスケールの大きい作品だと思いましたね。

藤田 うれしいなあ。俺はオープニングとエンディングを観て、テーマ曲という“蓋”は必要なんだなと思いました。フルコースは最後に食べるデザートでごはんの印象が決まる、とよく言うじゃないですか。アニメの「からくりサーカス」では古いフィルムのような演出が音楽にかかっていて、アコーディオンのような昔の郷愁をそそるサーカスっぽい音で歌う「マリオネット」がエンディングに流れて、心がスーッと落ち着いて美しい最後につながっていく。聴いていると、ゆっくりとメリーゴーランドの光の中へ溶け込んでいくような感じがするんですよね。暗黒にフェードアウトしていくんじゃなくて、明るい光の中へみんなの気持ちを溶け込ませていくみたいな。

ロザリーナ ありがとうございます。欲を言えばアニメをもっと長い時間やってほしいです(笑)。放送時間30分と言われてますけど、曲とCMが入ったら「もう終わっちゃった」って毎回そんな気分になるんです。

藤田 「さっきオープニングだと思ったら、もう私の曲か」っていうね。それって夢みたいだと思いません? 面白くない映画を観ているときって、つい時計を見ちゃうじゃないですか。「この時間があったら、ハンバーガーを食べられたな」って。そういう気持ちが「からくりサーカス」にはまったくない。

ロザリーナ なんかジェットコースターみたいですよね。

ロザリーナ「マリオネット」
2018年11月28日発売 / Sony Music Records
ロザリーナ「マリオネット」通常盤

通常盤 [CD+DVD]
1300円 / SRCL-9952

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ロザリーナ「マリオネット」期間生産限定盤

期間生産限定盤 [CD+DVD]
1800円 / SRCL-9953

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CD収録曲
  1. マリオネット
  2. タナトス
  3. Stereo
期間生産限定盤DVD収録内容

TVアニメ「からくりサーカス」エンディングムービーノン・クレジットver.

「からくりサーカス」
毎週木曜 22:30~TOKYO MX、
BS11ほかにて放送中
Amazon Prime Videoにて日本・海外独占配信
ロザリーナ
ロザリーナ
女性シンガーソングライター。2016年に西野亮廣(キングコング)の著書「えんとつ町のプペル」のテーマソングを担当し、知名度を一気に上げる。12月に1stミニアルバム「ロザリーナ」を発売した。その後、首都高速道路ETC2.0やauなどのCMソング、「妖怪アパートの幽雅な日常」のテーマソングを担当。2017年10月にそれらの楽曲を収録した1stシングル「音色」をリリースし、2018年4月にシングル「タラレバ流星群」でソニー・ミュージックレコーズからメジャーデビューを果たした。10月よりTOKYO MXほかにて放送中のテレビアニメ「からくりサーカス」のエンディングテーマ「マリオネット」をシングルとして11月にリリース。
藤田和日郎(フジタカズヒロ)
1964年5月24日、北海道旭川市生まれのマンガ家。1989年、第22回小学館新人コミック大賞佳作受賞作「連絡船奇憚」が週刊少年サンデー増刊号(小学館)に掲載されデビューを果たした。1990年より週刊少年サンデー(小学館)にて代表作となる「うしおととら」の連載を開始。同作で1992年に第37回小学館漫画賞少年部門、1997年に第28回星雲賞コミック部門賞を受賞した。同誌にて「からくりサーカス」を連載したのち、「邪眼は月輪に飛ぶ」(小学館)「黒博物館スプリンガルド」(講談社)などの中篇を出版社をまたぎ刊行する。現在は「週刊少年サンデー」にて「双亡亭壊すべし」を連載中。本人の人気もさることながら、安西信行、雷句誠、井上和郎など氏のアシスタントを経てデビューし、人気作家となった者が多いことでも知られる。