ナタリー PowerPush - LOVE ME TENDER

“奥渋谷系”バンドが描き出す、アーバンな「大人の思春期」

プロデュースしてほしい人はトッド・ラングレンしか思いつかなくて

──初のフルアルバム「SWEET」についてなんですが、この作品に収録しているのはライブで演奏してきた曲なんですか?

TEPPEI いや、ほぼ新曲ですね。

SOTA TAKAGI ライブでやってない曲が多いスタジオアルバムって感じで、特にコンセプトもなく、できた曲を11曲収録しているんですよ。

──2曲目の「Unlimited」にトークボックスでフィーチャーされているLUVRAWくん(LUVRAW & BTB)も、メンバーが集うバーの常連だそうで。

SOTA TAKAGI でも、そういう「渋谷のバーに夜中生息している人たち」として見られているからか、怖いって言われたりもするんですよね。

インタビュー写真

ARATA まあ、ジャンルとしてわかりやすい音楽をやってるわけじゃないからね。

ACKKY 「どんなバンドなんですか?」って言われるのがすごい困る。

SOTA TAKAGI そういうとき、なんて言ってるの?

ARATA 歌モノ。

TEPPEI J-POPって言ってる。

MAKI999 その場に合わせて説明が変わっちゃうかも。

ACKKY メンバーの年齢も通ってきた音楽も違うからね。例えば、俺なんかはceroみたいな今のバンドも好きで聴いてるし。

TEPPEI あと、二見さんのDJでかける和モノはみんな共通して好きかも。夜通し4つ打ちを聴いた明け方、ちょっと生音が欲しくなったときに70年代の日本のシティポップスを聴くと、そのときの喜怒哀楽にフィットするんですよね。

MAKI999 もちろん、大貫妙子とかユーミン、はっぴいえんどなんかも好きだし、あとはカラオケで歌える昭和の名曲とか。

──今回、カバーしているアニメ「ドラゴンボール」のエンディングテーマ曲「ロマンティックあげるよ」もそのうちの1曲とか?

MAKI999 そう。その曲は私のカラオケの十八番っていう、ただそれだけ(笑)。

ACKKY 俺個人でいえば、和モノを意識するようになったのはこのバンドを始めてからですね。それまでは洋楽一辺倒だったから。

MAKI999 でも、洋楽を通過した後で昭和の名曲を聴き直してみたら、「この曲、すごかった」って曲はいっぱいあるから。

ARATA とは言え、そういう昔のシティポップスをリサイクルしているわけではないというか、そういうことに興味があるわけではないから。

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SOTA TAKAGI そう、自然にやってるだけですよ。プロデューサーを付けようかっていう話もあったけど、トッド・ラングレンしかやってもらいたい人が思いつかなくて(笑)、結局、セルフプロデュースに落ち着いただけだし。

ARATA ただ結局のところ、僕はコード進行の洗練とか、転調が好きなんですよね。しかも、それを頭でっかちに難しい形で聴かせるんじゃなく、例えば70年代のスティーヴィー・ワンダーの3部作(「トーキング・ブック」「インナーヴィジョンズ」「ファースト・フィナーレ」)みたいにポップで聴きやすいけど、実はすごいコードを使っていて、その洗練具合からアーバン感がにじみ出る音楽をやりたい。

TEPPEI しかも、それをそのままやると世代感が出てしまうから(笑)、年齢的に若い俺とMAKIちゃんがそれを崩していくっていう。

MAKIちゃん抜きで活動するのは不可能なので活動休止します

──そのMAKIちゃんのボーカルにしても、しっとり歌うのではなく、無機質に歌うことで、演奏とのコンビネーションから伝わってくる温度も熱くなりすぎていないんですよね。

TEPPEI そう。MAKIちゃんがエモーショナルなボーカリストだったら、シティポップスそのまんまになってしまうから、今みたいな音楽性にはなってなかったでしょうし。

MAKI999 まあ、エモーショナルには歌えないんですけど(笑)、もしドラム叩きながらエモーショナルに歌ってたらムカつくだろうなって(笑)。

SOTA TAKAGI あとはまあ、演奏していて気持ちいいかどうか。

ARATA これといったコンセプトもなく、アルバムを出そうということになったときのバンドをそのまま切り取ったのが今回の「SWEET」っていうアルバムですよ。

MAKI999 私個人でいえば、実際に今、スウィートな状況だったりもするし(笑)。

──MAKIちゃんはご懐妊なんですもんね。バンドとしてはアルバムリリースを機に活動休止になるそうですが。

SOTA TAKAGI MAKIちゃん抜きに活動するのは不可能ですからね。

ARATA だからライブ以外のリミックスだとか、各々の活動に励みつつ。まあでも、俺らのことを知らない人からすれば、産休で1年くらい休んだってどうってことはないでしょう。

SOTA TAKAGI とは言え、正直いえばショックですよ。だって、俺たち4人はMAKIちゃん親衛隊の幹部ですから。

ARATA 4人がMAKIちゃんに失恋したような……でもまあ、しばしの休止を経て、雨降って地固まるんじゃないですかね。

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LOVE ME TENDER - メスカリーター

ニューアルバム「SWEET」 / 2012年11月21日発売 / 2100円 / P-Vine Records / PCD-20241
ニューアルバム「SWEET」
収録曲
  1. メスカリーター
  2. Unlimited featuring LUVRAW
  3. ロンリーダンサー
  4. リバウンド
  5. 恋をしたなら…
  6. ムードウーマン
  7. リーガール? イリーガール?
  8. 富士山
  9. タイムライン
  10. 神泉サンライズ
  11. ロマンティックあげるよ
LOVE ME TENDER "SWEET" RELEASE PARTY ~また逢う日まで~

2012年11月28日(水) 東京都 WWW
OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>
LOVE ME TENDER / ホテルニュートーキョー / LUVRAW & BTB / DJ:二見裕志

LOVE ME TENDER(らぶみーてんだー)

「奥渋谷系」とも評される、MAKI999(Vo, Dr)、ARATA(G)、TEPPEI(B)、SOTA TAKAGI(Key)、ACKKY(Sax)からなる5人組バンド。シティポップスを思わせるアーバンで洗練されたサウンドに乗せて、わずかな毒を含んだ歌をあどけない声の女性ボーカルが歌う。なおMAKI999はHBのドラマーで、LASTORDERZのオリジナルメンバー。SOTA TAKAGIはさまざまなアーティストのサポートメンバーを務める傍ら、高木壮太名義で映画「RAWLIFEとその時代」の監督や著書「プロ無職入門~高木壮太の活ける言葉」を発表するなど映像作家や文筆家としての顔も持ち、サックスのACKKYは国内の地下ハウスシーンでDJとしても活躍している。