ナタリー PowerPush - LOVE ME TENDER
“奥渋谷系”バンドが描き出す、アーバンな「大人の思春期」
2011年リリースの自主制作ミニアルバム「FRESH!」、そして2ndミニアルバム「Twilight」で展開された中毒的なアーバンポップマジックが静かな衝撃となって広がっている5人組バンド、LOVE ME TENDER。話題の書「プロ無職入門」の作者でもあるキーボーディスト、高木壮太(SOTA TAKAGI)がメンバーであることからも注目を集めている彼らが初のフルアルバム「SWEET」を完成させた。
一部で架空のバンドと思われているほどにいまだ謎に包まれている彼らの実体に迫るべく、今回ナタリーでは「奥渋谷」とも呼ばれている円山町エリアのとあるバーにてインタビューを実施。メンバーが足繁く通い、バンド結成に大きく関わっているというこのバーにて、まずはビールを手に取るところから取材は始まった。
取材・文 / 小野田雄 撮影 / 井出眞諭
撮影をお願いしたらカメラじゃなくてキーボードを持ってきた
SOTA TAKAGI(Key) それでは1stアルバム完成を祝して乾杯!
一同 かんぱーい!
──えー、まずはLOVE ME TENDERの成り立ちからお伺いしたいんですが、元々はMAKIちゃん、ARATAくん、TEPPEIくんの3人で始まったんですよね?
MAKI999(Vo, Dr) そうですね。確か2007年だったと思うんですけど。メンバーはみんな神泉のとあるバーに集う遊び友達なんです。そのバーの2軒隣、今はなくなってしまったバーで伝説のセッションをやったんですよ。すごい小さいお店だったんですけど、ちっちゃいアンプやドラムセットを入れて、7時間くらい延々と演奏したのが最初ですね。
SOTA TAKAGI セッション。フランス語でいうところのセショーヌですよ。
──セッションといえば、ARATAくんは、JazztronikやMonday満ちるさん、Port of Notesのサポート経験があったり、それ以前は井上薫さんのレーベル、SEEDS & GROUNDからアルバムデビューしたセッションバンド、ZEROでギターを弾いてましたよね?
ARATA(G) そうですね。それ以前はアポロス(會田茂一、LOW IQ 01らが結成したスカバンド)に後期に短期間だけ在籍してたり、サイケデリック・キンキー・フェローズでの活動があったりとか。
──それからTEPPEIくんは、ブラジリアン打楽器集団、ナタカトシアに参加するパーカッショニストという認識だったんですけど、LOVE ME TENDERではベースをプレイしているんですね。
TEPPEI(B) それ、よく言われるんですよね。「あれ、VJじゃないの?」とか、「パーティオーガナイザーでしょ?」とか(笑)。確かに渚音楽祭に出たナタカトシアではパーカッションを叩いていたんですけど、元々はベーシストなんですよ。
──MAKIちゃんはリズム主体の3人組インストバンド、HBのドラマーとしても活動されていますけど、過去に歌モノを作ったことは?
MAKI999 このバンドが初めてです。
──そういう経歴の3人から歌モノのLOVE ME TENDERはやはり意外ですよね。
ARATA そうですね。セッションに飽きちゃったというか。まあ基本としてセッションはするんだけど、ずっとセッションだけやってると曲が作りたくなるっていう。この3人も最初の1、2年は遊びでセッションをやってたんですけど、それに飽きて、曲をやるようになったんですよ。
TEPPEI 3人でリハーサルをやってるとき、MAKIちゃんが声ネタのつもりでフレーズを連呼してたら、その声がいい感じだったから、そのまま歌ってみようよって。
MAKI999 一応、3人とも歌ってみたんですけど、私がその中で一番がんばれそうかなって。で、あるとき、同じく飲み友達だった壮太くんも参加するようになったんです。
TEPPEI 壮太くんが参加することになったいきさつは、相模湖のレコーディングスタジオで3人の演奏をレコーディングしようっていうことになって、その様子を壮太くんに撮影してもらおうとお願いしたら、その当日、カメラじゃなく、キーボードを持ってきて(笑)。
SOTA TAKAGI カメラとキーボードって、形が似てるから。
──ははは(笑)。1ミリも似てないでしょ。
TEPPEI その会場へ行くときにカメラマンとしてのギャラを壮太くんに渡そうと思ったら、なぜか受け取らなかったんですよね。しかも、「みんなで酒買おうよ」って言い出して、なんかおかしいなって思ったら、現地に着いてから、オルガンとかのセッティングを始めたんですよ。でも「きっと、カメラは持って来てるだろうから……」と思って、特にツッコまずにいたら、本番ではカメラは回さずに全曲プレイヤーとして参加して、そのまま今に至るっていう。だから、壮太くんはメンバーじゃないのかもしれない(笑)。
SOTA TAKAGI 角田美代子方式。というか、みんな演奏うまいし、一緒に演奏したら楽しいかなと思って。
誘ってもらわなかったら、もう一度楽器を手にすることはなかった
──そして、サックスのACKKYくんが入ったのが最後になるんですよね。
ACKKY(Sax) まあでも、もう入ってから3年経つんですけどね。最初はMAKIちゃんからmixi経由でメールをもらって。
MAKI999 そう、スカウト。「ACKKYがサックスを吹けるらしい」って噂を聞いて。
──ACKKYくんはハウスDJとして活動しながら、プロデューサーとして、2010年にインストのハウスアルバム「COMPOSITION」をリリースしていますが、かつてはハードコアパンクバンド、NUKEY PIKESのサックス奏者だったんですよね。
ACKKY そう。だから、17年ぶりにサックスを手にして、「ホントにできるんだろうか?」ってところから、がんばって今に至るっていう。でも、誘ってもらってなかったら、サックスをまた手にすることはなかっただろうから、MAKIちゃんには感謝してますよ。今はホント楽器をいじることに一番ハマっているかも。
──しかも、ACKKYくんはボーカルまで披露してますけど、歌った経験も……。
ACKKY ないですね。
TEPPEI それがリキッドルームのライブでは山下達郎の「クリスマス・イブ」を歌いましたからね。
ARATA カラオケに行くと、ACKKYが一番うまかったりするし。
TEPPEI レコーディングで試しに歌ってみたら倍音が少ないACKKYの声はMAKIちゃんの声にたまたま合ったんですよ。
SOTA TAKAGI 俺はサックスじゃなく、セックスにハマってるんだけどね(笑)。
MAKI999 3年くらい前から?(笑)
──壮太くんにしても、Blue BongosやSoul Missionといったインストバンドに参加した後にリリースしたGENERAL名義のアルバム「THE LIGHTS ARE ALWAYS LESS THAN THE CIGARETS」や、ソロ名義のアルバム「WHITE SUMMER」はどちらもクラブミュージックから派生したインストゥルメンタルでしたよね。
ARATA まあ、だから僕の個人的な解釈としては、うちらは当然ダンスミュージックは通過しているんですけど、中学高校生の頃は普通に80年代ポップスを聴いていたから、基本は8ビートのポップス好きということがあって、その後クラブミュージックの16ビートも好きになったから、自分たちの中では8ビートと16ビートが両方混在しているというか。
MAKI999 うん。だからLOVE ME TENDERにたどり着くまでに、みんな、それぞれ好きな音楽が何周かしちゃってるんですよね。
収録曲
- メスカリーター
- Unlimited featuring LUVRAW
- ロンリーダンサー
- リバウンド
- 恋をしたなら…
- ムードウーマン
- リーガール? イリーガール?
- 富士山
- タイムライン
- 神泉サンライズ
- ロマンティックあげるよ
LOVE ME TENDER "SWEET" RELEASE PARTY ~また逢う日まで~
2012年11月28日(水) 東京都 WWW
OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>
LOVE ME TENDER / ホテルニュートーキョー / LUVRAW & BTB / DJ:二見裕志
LOVE ME TENDER(らぶみーてんだー)
「奥渋谷系」とも評される、MAKI999(Vo, Dr)、ARATA(G)、TEPPEI(B)、SOTA TAKAGI(Key)、ACKKY(Sax)からなる5人組バンド。シティポップスを思わせるアーバンで洗練されたサウンドに乗せて、わずかな毒を含んだ歌をあどけない声の女性ボーカルが歌う。なおMAKI999はHBのドラマーで、LASTORDERZのオリジナルメンバー。SOTA TAKAGIはさまざまなアーティストのサポートメンバーを務める傍ら、高木壮太名義で映画「RAWLIFEとその時代」の監督や著書「プロ無職入門~高木壮太の活ける言葉」を発表するなど映像作家や文筆家としての顔も持ち、サックスのACKKYは国内の地下ハウスシーンでDJとしても活躍している。