ナタリー PowerPush - livetune

集大成作「Re:Dial」が示す 濃密キャリアとクリエイター魂

kzによるユニットlivetuneが、初音ミクのボーカロイド楽曲の集大成となるベストアルバム「Re:Dial」を3月20日にリリースする。

Google Chrome -初音ミク編-のCMソングとしてlivetuneの名を広く知らしめた「Tell Your World」を筆頭に、2007年から現在に至るまで発表された数々の話題曲を収録した本作。インターネット発のクリエイターの先駆者として活躍する彼の足跡をたどる1枚になっている。

今回の特集では、アルバムについてkzにインタビューを実施。彼のキャリアのスタートから、今見据えている未来まで、改めてじっくり語ってもらった。

取材・文 / 柴那典 インタビュー撮影 / 佐藤類

 
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今だから自分の足元を確認したい

──今のタイミングで集大成的な作品を出すことになったのは、どういうきっかけから?

kz

メジャーデビューして5年でキリがいいし、「Tell Your World」を出してから「そろそろまとめ的なものを出しましょうか」っていう話もあったし、僕も同じことを思っていて。ここぞっていうタイミングを考えたというより、自然発生的な流れという感じですかね。

──去年から今年にかけてはlivetuneへの注目度も増したと思うんです。例えばリミキサーとしてZEDDのリミックスを手がけたり、作曲家としても、プロデューサーとしても、相当の数の仕事が舞い込んでいる。そういうタイミングでのベスト盤でもあるわけですが。

自分を取り巻く環境に大きなプロジェクトが多くなってきたということは感じますね。「マクロス30~銀河を繋ぐ歌声~」の主題歌もそうだし、T.M.Revolutionの「UNDER:COVER 2」で西川貴教さんと一緒にお仕事させていただいたりもした。2012年は、物事がどんどん肥大化していくところに自分がどうやって対応できるかっていうのを考えた1年ではありましたね。立っているステージが大きくなってきたからこそ、とりあえず一度曲をまとめて自分の今いる足元を確認したいなっていうのもあって。

──メジャーなフィールドで仕事をするようになって、クリエイティブな部分はどう変わりました?

クリエイティブに対する真面目さ、熱量みたいなものは昔から変わらないんですけど、よりシリアスになったというか、もっと厳密なものになった感じはあります。簡単に言うと「ほんとに下手なもん作れないな」という感覚がどんどん大きくなってきたっていう。期待にちゃんと応えなきゃいけないって思いますからね。

小学生のときから作曲家になろうと思ってた

──今回、改めてkzさんの今に至るまでの話を聞いていければと思うんですけれども。そもそもkzさんが曲を作り始めたのは何年ぐらい前ですか?

曲をちゃんと作り始めたのは中学校2年生ですかね。十何年か前くらい。

──それは、どういうきっかけだったんでしょう?

小学校3~4年生くらいのときに、親に坂本龍一さんのコンサートに連れて行ってもらったんです。そこで衝撃を受けたというのが音楽を好きになった原体験で。そこから曲を作りたいと思い始めて、それが具体化したのが中2の頃だったんです。たまたま自分の手元に電子ピアノがあって。で、それがMIDIでパソコンに接続できるものだった。打ち込みの音楽をやりたいっていうのは小学生の頃から思ってたんですけど、それでやれるようになったという。

──「beatmania」というゲームをきっかけにクラブミュージックにハマり始めたという話を以前に聞きましたけれども、それも中学生くらいのときですか?

そうですね。ちょうどその頃に「beatmania」と出会ったんですよ。最初は単純にカッコよかったんですよね。当時の中学校2年生からすると、あのときゲーセンにいた人たちって、クラブで遊んでるような人が多くて、それがカッコよく見えたんだと思います。

──それからいろんなクラブミュージックを聴いていった感じでした?

kz

実はそこまで深く掘ってはいなかったです。HIROSHI WATANABEさんが当時「beatmania」に曲を提供してたので、その周辺は聴いてたんですけど、どっぷりハマるというよりむしろ作ってるほうが楽しかったので。そのあと、劇的にハマったのはどっちかっていうとロックンロールのほうが大きいんですよね。イギリスのロックをよく聴いてました。モッズとか、それに影響を与えたモータウンとか、そこらへんもすごく好きで。その影響は大きかったですね。

──モッズとかモータウンは当時すでに過去のブームという感じだったと思うんですが、リアルタイムの音楽は何が好きでした?

高校の頃はメロコアとかも好きだったけど、リアルタイムでちゃんと好きだったのはやっぱりJUSTICEとかになりますね。出てきたのは2005年頃だったかな。

──作曲家、クリエイターとしてやっていこうという意識は、その頃にはもうありました?

それはもう、小学校のときからずっとそうでした。坂本龍一さんに衝撃を受けてから、そこはずっと変わってなくて。

──そうなんだ。じゃあ、10歳の頃からまったくブレずに今の地点にたどり着いたわけだ。

そうですね。それ以外は特に考えてなかったから。今ここにいなかったら、ホント、どうしようって感じですよ(笑)。

──例えば周囲から「ちゃんと就職しなさい」みたいなプレッシャーはなかった?

そういう空気はなかったです。音大に通ってたんで、周りの奴らも就職してないんですよ(笑)。一度だけ就活というものをしてみようと思って、就職試験を受けたんですけど、ほかの大学の人たちのパッションを目の当たりにして、「これは自分には無理だ」って(笑)。

ベストアルバム「Re:Dial」/ 2013年3月20日発売 / TOY'S FACTORY
期間限定盤[CD+DVD] 3500円 / TFCC-86427
通常盤[CD] 2500円 / TFCC-86428
CD収録曲
  1. Redial
  2. Tell Your World
  3. Packaged
  4. ファインダー
  5. Light Song
  6. ストロボナイツ
  7. Yellow(Re:Dialed)
  8. Magnetic
  9. Fly Out
  10. Weekender Girl
  11. Heart Beat
  12. D.E.N.P.A.(Re:edit)
  13. our music(kz's The Beginning of The End remix)
  14. Last Night, Good Night(Re:Dialed)
  15. Tell Your World -English Version-
初回限定盤DVD収録内容
  • Tell Your World -Music Clip-
  • Weekender Girl(Music Video)
  • Fly Out(Music Video)
  • Last Night, Good Night(Music Video)
livetune(らいぶちゅーん)

音楽プロデューサーのkzによるユニット。2007年9月、ボーカロイド「初音ミク」を使用して制作したオリジナル楽曲「Packaged」を動画サイトに投稿し、注目を浴びる存在となる。2008年8月にアルバム「Re:package」でデビュー。その後、さまざまなジャンルのアーティストの楽曲の作詞、作曲、リミックスなどを手がける人気クリエイターとして活動する。2011年12月に「Google Chrome “あなたのウェブを、はじめよう。”キャンペーン」のCMソングとしてlivetune名義の新曲「Tell Your World」を制作。YouTubeで公開されたCM映像は1週間で100万再生回数を超え、CM楽曲も話題に。2012年1月に同曲を配信リリースし、3月にミニアルバム「Tell Your World EP」を発表。さらに同年8月には八王子Pとのコラボシングル「Weekender Girl / fake doll」を、9月にボーカリストに中島愛、Yun*chiを迎えたシングル「Transfer」をリリースした。2013年3月に新曲2曲を含むベストアルバム「Re:Dial」を発表する。