“歌謡ロック”だけじゃない Little Black Dress フィナンシェで女心を描いた等身大のラブソング

「フィナンシェ」から伝わる女心に感動

──2ndシングル「雨と恋心」も前作と同じく川谷絵音さんのプロデュースですね。ポップな手触りとエッジィな要素が共存している楽曲だなと。

Little Black Dress

めっちゃカッコいいですよね! デモが届いたとき、私はMISIAさんのライブにオープニングアクトとして出演するため、河口湖のホテルに泊まっていたんです。朝7時くらいに「できました!」と送られてきた曲の冒頭「まっさらになりたいよ 雨が降り恋が湿った」を聴いた瞬間に衝撃を受けて、「これを歌いたい!」と思いました。主人公が私の等身大にすごく近かったんです。2番に「もどかしい こんな日は ケーキでも買って帰ろう フィナンシェもついでにお願い」という歌詞があるんですけど、ケーキで機嫌がよくなることって確かにあるし、レジ横に置いてあるフィナンシェに気付くくらい、心の余裕が出てきた様子が伝わってきて。「川谷さん、よくここまで女心を書けるな」と感動しました。

──感情の繊細な変化がうまく表現されてますよね。

そうなんです。あと、後半の「パパパパパパパパーヤ」のあとの転調は、私から提案させてもらいました。ドラマティックな展開が欲しいなと思ったんですけど、そこはやっぱり歌謡曲の血なのかなと(笑)。「はしゃいでたって 切なくなって」は、レコーディング現場で急遽川谷さんに書いていただいたいんです。もともとは「Lovin’Lovin’ Do Yah」みたいなフレーズのコーラスだったんですけど、「言葉があったほうがいいな」と。川谷さんは別の現場にいらっしゃったのでLINEを送ったら、すぐに既読がついて、5分後くらいに歌詞が送られてきました。

──さすが川谷さん、仕事が速いですね。

ビックリしました。その場でメロディに合わせて歌って、ボイスレコーダーで送って、さらにやり取りして。歌詞を追加していただいたことで楽曲全体の雰囲気がガラッと変わったんですよ。もっと感情的になれたし、人の血が通ったというか。それは提供してもらったからこそ生まれた化学反応だなと思うし、すごくクリエイティブでしたね。ライブで歌うのもめちゃくちゃ楽しみです。

──ライブで歌うことで楽曲が完成する、という感覚もある?

そこは果てしないというか、なかなか完成形が見えてこないんですよ。アルバムに入ってるオリジナル曲もそうですけど、ライブでやるたびに少しずつ形が変わるんです。演奏してくださるミュージシャンによっても違うし、どんどん発展して。それが自分も楽しみだし、ぜひライブを観に来てほしいです。

──「雨と恋心」のMVについては?

基本的には監督にお任せしているんですが、全体的なイメージや衣装については、生意気ながら意見を言わせていただきました。「雨と恋心」からなぜかイギリスを感じたんです。雨が降っている中をトレンチコートを着て歩くイメージがあって、それが似合う街はロンドンだ!って(笑)。なので私の衣装も赤のチェックのスーツなんですよ。髪型はマッシュで、女版ビートルズみたいな感じで。

──これまでは黒を基調とした衣装でしたけど、黒と決めてるわけではないんですね。

はい。1stシングルのときは原点回帰というか、「ブラックのスーツが着たいです」と言ったんですけど、ライブではカラフルな衣装を着ていたりするので。黒縛りではないし、曲によって一番合うものを着たいなと。そうやって0から1を生み出して100にしていく作業はやっぱり楽しいですね。

Little Black Dress
Little Black Dress

グッと身近に感じてほしい

──ライブについても聞かせてください。実際にライブを観させてもらって、「細身のスーツで決めて、バシッとカッコいいステージを見せる人」というイメージがすごくありました。

「カッコいい」って言ってもらえるのはうれしいです。かわいいよりカッコいいと言われたいので。

──強い女性像を見せたいという気持ちもありますか?

それもありますね。ただ私自身は、強そうな人を見ると「もしかすると脆いところもあるのかも」と想像しちゃうんですよ。Little Black Dressのライブに来てくださる方も、「この人はもしかしたら……」と探ってもらえたら、願ったり叶ったりというか。どんどん探ってほしいです。

──二面性みたいなものが大事?

なんて言うのかな……「この人、実は弱いのかも」とか「私と同じような悩みを抱えてるのかも」と思った瞬間に、グッと身近に感じてくれるんじゃないかなって。そうやって寄り添いたいんですよね。ライブに来てくれる方に、「この人は私と同じかも」みたいな気持ちを持って帰ってもらいたいんです。

Little Black Dress

──ライブ中のMCでも自分自身のことを伝えたい?

それがですねえ、MCが苦手なんですよ(笑)。いつもグダグダになっちゃう。

──(笑)。インタビュー中はしゃべり方がちょっと柔らかいですよね。

そうですね。ラジオのときはもうちょっとテンションを上げて、パキッとしゃべるようにしてるんですけど、なぜかMCはうまくいかなくて。「歌にぜんぶ込めるから、早く歌わせて」みたいな感じになっちゃいます。最近、どんどんMCの時間が短くなってるんですよ(笑)。

──あくまでも歌を通して表現したいということですね。SNSもあまり得意じゃなかったりします?

苦手ですね。たぶん生まれてくる時代を間違えたんじゃないかな(笑)。そうは言ってもSNSは欠かせないし、スタッフの皆さんの力を借りながらがんばってやりたいなと思ってます。

「昭和路線やめたんですか?」

──最後に今後の活動のビジョンを聞かせてください。1stシングル「夏だらけのグライダー」、2ndシングル「雨と恋心」と作品をリリースするたびに音楽性の幅が広がっていますが、シンプルに「いろんなことをやりたい」というところもありますか?

はい! それはすごくあります。10年後くらいにいきなりダンスし始めるかもしれないし、ちあきなおみさんのように舞台で演技するかもしれないし。いろんな表現があるし、どんどん挑戦していきたいなと。

──“歌謡ロック”の枠にも捉われず?

もちろんです。“歌謡ロック”というフレーズも、オリジナル曲を聴いてくれた皆さんに「懐かしい感じがあるね」と言われたのがきっかけなんです。私はロックも好きだし、“歌謡ロック”と謳えばわかりやすいかなって。メジャーデビューして、「昭和路線やめたんですか?」と言われることがあるんですけど、そういうことではないんですよね。オリジナル曲も1つひとつ性格が違いますから。ギターの弾き語りから始まって、メイクしたり、洋服を着せるような感覚でアレンジして。これからも1曲1曲しっかり印象に乗るように作っていきたいです。

──具体的にはどんなことをやりたいですか?

いっぱいありますよ! まず、提供していただいた曲だけでアルバムを作ってみたいです。松本隆さんをはじめ、70年代、80年代の歌謡曲を作り上げてきた方々にお願いしたくて。最近、当時の音楽のことをかなり勉強してるんですよ。ラジオ番組を持たせてもらって発信する立場になったので、正確な情報をお伝えしたくて。家に音楽関連の本がいっぱいあります。

──素晴らしい。名曲に出会うきっかけにもなりそうですね。

そうなんですよ。カバーしたい曲もたくさんあって。「FNS歌謡祭」でカバー曲を歌ったり、コラボレートさせてもらうのも目標ですね。

Little Black Dress

ライブ情報

Little Black Dress CITY POP NIGHT @ Blue Note Tokyo
  • 2021年10月5日(火) 東京都 ブルーノート東京 [1st]OPEN 16:00 / START 17:00
    [2nd]OPEN 18:45 / START 19:30
Little Black Dress(リトルブラックドレス)
Little Black Dress
1998年11月3日生まれ、岡山県出身のシンガーソングライター。幼少期に家族が聴いていた歌謡曲に強く影響を受け、高校1年の春に叔父からギターを譲り受けたことをきっかけに弾き語りを始める。2016年9月に奈良・春日大社で行われたライブイベント「Misia Candle Night」のオープニングアクトに抜擢。同公演で出会ったアートディレクター・信藤三雄に「Little Black Dress」と命名され、ソロプロジェクトをスタートさせた。2019年5月にシングル「双六 / 優しさが刺となる前に」でデビュー。2021年7月には川谷絵音提供曲「夏だらけのグライダー」でメジャーデビューを果たす。同年9月に2ndシングル「雨と恋心」を配信リリース。