音楽ナタリー Power Push - LGYankees
お茶の間に愛される存在になるのは決して迎合じゃない
LGYankeesが通算7枚目のオリジナルアルバム「GIN GIN LGYankees!!!!!!!」をリリースした。
演歌歌手の大江裕などバラエティに富んだアーティストを迎えたフィーチャリング曲がメインの今作は、王道のラブソング、トレンド感のあるEDM、泣きのバラードなど、さまざまなジャンルの音楽が詰まった1枚。ゲスト陣の個性的な歌声とHIROの切れ味鋭いラップが冴えわたっている。ここではアルバムの全貌を紐解きつつ、彼が思うフィーチャリングの流儀や今後の音楽的展望を聞いた。
取材・文 / 川倉由起子 撮影 / 小原泰広
演歌歌手との異色コラボ
──約4年ぶりのオリジナルアルバムはどんなコンセプトで作り始めたんですか?
この10年、わりとメロディアスな楽曲が多かった気がして。1度原点に戻ってといいますか、僕のラップを中心にしたアルバムを作ってみようということで制作を始めました。
──これまでも幅広いアーティストとのコラボに挑戦されていますが、今回も全11曲中9曲にフィーチャリングゲストを迎えていますよね。人選はどのように?
よく一緒にステージに立ってる後輩たちに加えて、今回はより多ジャンルの人とご一緒したいという気持ちがありまして。「恩返し」という曲でコラボした演歌歌手の大江裕さんは同じレコード会社という縁もあってオファーをさせていただいたんですけど、これはかなり異色なコラボなんじゃないかと思います。
──かなり驚きました。
ですよね。この曲は実は大江さんにお願いする前から作っていたんです。僕もいい歳になってきたけど、こうしてまだ音楽を続けられているのはいろんなところで出会った人たちや支えてくれた人たちのおかげだなって。同世代のミュージシャン仲間もだんだん音楽を辞めたり別の道に行ってしまう人たちが多くなる中で、そういう感謝の思いを込めた曲を作りたいと思って「恩返し」ができたんです。で、これを誰とやるかってなったときに、「演歌の方はどうだろう?」と。「感謝」や「恩返し」って演歌でも歌われていそうなテーマだし、そこまで抵抗なくオファーを受け入れてもらえるんじゃないかということで、あくまで失礼のない形で、演歌の方と一緒にこの曲の人間味あるメッセージを届けたいなと思ったんです。
──大江さんにオファーしたのはなぜだったんですか?
以前、大江さんがある映画イベントで僕らと同じようなファッションをしてるのを見たんです。いわゆるヒップホップスタイルといいますか。今まではスーツ姿の大江さんしか見たことなかったんですけど、その日の服装がやたら似合っていて「なんか、いいかも?」と。僕も大江さんも体が大きいんで、「デカい男2人で並んで歌ったら絵面的にもちょっといいんじゃない?」というところでピンときたんですよね。後日談で、その日はスタイリストさんが用意した衣装がたまたま僕ら寄りだっただけで、普段そういう格好は全然しないそうなんですけど(笑)。
──じゃあ、HIROさんの勘違いもありつつ(笑)。
そうなんです。普段からああいう服も着るんだと思っちゃって。でも、ナイスな勘違いでしたね(笑)。
制作風景が盛り込まれたMV
──実は大江さん自身もその映画イベントで「(師匠の)北島三郎さんがOKならラップに挑戦したい」と発言していたとか。
そうなんですよ。当日のファッションに合わせておっしゃったみたいなんですけど、僕もその記事を見て「これはバッチリなタイミングじゃないか!」と。もちろん歌も本当にお上手ですし。
──オファーの返事は即答だったんですか?
最初は「前向きに検討します」ってことだったんですけど、すぐに「やりましょうか」ってOKをいただいて。演歌の方っていろんなことを重んじながら活動されているイメージがあるのでダメかなと思ったんですけど、早い段階でご快諾いただけてありがたかったです。
──しかも大江さん、レコーディング前はかなりラップの練習して臨んでくださったとか。
はい。演歌とは物理的に1音1音に詰まってる言葉数が違いますし、音域の幅も異なるということで。本番は演歌のよさをそのまま出してもらったところもあれば、こっちの歌い方に寄せてもらった部分もあったんですけど、大江さんはどんなリクエストにも一発で応えてくださって。やっぱりプロだな、さすがだなと。僕が逆に演歌を歌ったら、そんなふうに注文受けても歌える自信ないです(笑)。
──ミュージックビデオもドキュメンタリータッチの素敵な仕上がりですね。
衣装選びやレコーディング風景などが盛り込まれていて、2人で制作してる様子がいろんな角度から伝わればなと。
──楽曲とMVが完成して2人で話したことはありましたか?
お互い「いい作品になりましたね」って。あと大江さんのファン層は50~70代くらいがメインらしいんですよ。僕はわりと若い世代に支持してもらっているんで「2人合わせたらけっこうファン層が広がりますね」みたいな。一緒に笑い合ってました。
──あと今回、大江さんの名前表記が「Oh Yeah Yankee(a.k.a 大江裕)」なんですよね。
これは僕の「LGYankees」を文字ってといいますか。うまいことハマる単語もあったので、2人で「これでいいんじゃん?」みたいな。
──あはははは(笑)。それにしても大江さんはこのコラボ、とても新鮮で楽しかったんじゃないですかね。a.k.a(=also known as / 別名の意)なんてヒップホップ用語、普段絶対使わないでしょうし。
ですね。もしかしたら今もまだ意味をご認知されてないかもしれませんが(笑)。
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- ニューアルバム「GIN GIN LGYankees!!!!!!!」 / 2017年2月15日発売 / 日本クラウン
- Type-A [CD+DVD] / 3500円 / CRCP-40492
- Type-B [CD] / 3000円 / CRCP-40493
CD収録曲
- Dui☆Dui feat. 大山愛未
- 7days diary feat. Noa
- 恩返し feat. Oh Yeah Yankee(a.k.a 大江裕)
- かけがえのない場所 feat. 0TU1
- SAY GOOD-BYE...未来へ
- 最後のワガママ feat. 8utterfly
- Colorful Travel
- Because Of You feat. 84
- Don't Be Shy feat. 谷のばら
- ココニイナイ feat. AIRI (from Rouge)
- let go feat. Noa
Type-A DVD収録内容
- 恩返し feat. Oh Yeah Yankee(a.k.a 大江裕) [Music Clip]
- let go feat. Noa [Music Clip]
- UP GIRL with 0TU1 [Music Clip]
- Drink it, my SAKE NINJAS with TAE WAN A.K.A C-LUV [Music Clip]
- 六本木交差点 with TOMORO [Music Clip]
LGYankees(エルジーヤンキース)
2000年に2MCのウェッサイ風ヒップホップユニット・LGYとして結成。2007年にLGYankeesに改名し、ラッパーのHIROが音楽事務所・NO DOUBT TRACKSを設立する。2008年4月にDJ No.2が正式加入し、同年5月にシングル「Dear Mama feat. 小田和正 / Eternal」でメジャーデビュー。2008年9月発売の2ndアルバム「NO DOUBT!!! -NO LIMIT-」がロングセラーとなる。2009年12月にラッパーのRYOが脱退し、ユニットは1MC体制に。2011年2月発売のアルバム「BARI BARI LGYankees」は収録曲にフィーチャリングゲストとして大友康平や渡辺美里が参加して話題になった。2014年10月にDJ No.2が脱退してからはHIROのソロユニットとして活動。2017年2月に通算7枚目のオリジナルアルバム「GIN GIN LGYankees!!!!!!!」を発表した。