テレビ朝日系オーディション番組「ラストアイドル」から生まれたアイドルプロジェクト・ラストアイドルの2ndシングル「君のAchoo!」が4月18日にリリースされた。

これまで波乱に満ちたドラマの数々を生み出してきた「ラストアイドル」。デビューできるメンバーの座を個々で争ったファーストシーズンに続き、セカンドシーズンではシングル表題曲の歌唱権利を賭けて5グループが激突した。薄氷を踏むような接戦の末、最後に笑ったのが松本ももな、小澤愛実、長月翠からなる3人組ユニット・シュークリームロケッツだ。

秋元康が総合プロデュースを手がけるシュークリームロケッツは、クールでスタイリッシュなグループが多いラストアイドルファミリーの中でも“かわいい”に特化したユニット。今回、音楽ナタリーでは彼女たちにシングルへの意気込み、番組の舞台裏、そして知られざるメンバーの素顔などを聞いた。

取材・文 / 小野田衛　撮影 / 上山陽介

「本当にシューロケでいいのかな？」

──「ラストアイドル」セカンドシーズンの優勝、おめでとうございます。最終回は実力者・Good Tearsに完全勝利を収めましたね（参照：ラストアイドル2ndシングル表題曲はシュークリームロケッツが獲得）。

小澤愛実　準決勝でLove Cocchiと当たったときは、勝つには勝ったけど、審査員4人のうち3人がLove Cocchiに投票していたんです。本当にギリギリだったし、運もあったと思うんですね。

松本ももな　でも、表題曲を獲ることは夢でしたから。どんな形でも勝つことができて、本当にうれしかったです！

──オンエア上では優勝が決まった瞬間、呆然としているようにも見えたのですが。

小澤　私はかなり泣きましたけどね。みーたん（長月翠）はあまり泣いてなかったかな。「ポツリ、ポツリ……」みたいな感じで。

長月翠　気持ちが追いつかなかったんだよ。決勝のときに限らず、「ラストアイドル」という番組はすべてが急展開で進んでいくんです。「はい、じゃあ今日は準決勝です！」っていきなり言われて、勝ったらすぐに決勝戦がやって来る感じ。常に慌ただしいし、何がなんだかわからなくなってくるんですよ。 

松本　その感覚は確かにあるよね。何が起こっているのか、その場では理解できないと言うか……頭の中がゴチャゴチャのまま、戸惑いながらも戦っていました。

小澤　決勝で勝ったときも、スタジオを出てからずっと3人で話したんです。「本当にシューロケでいいのかな？」って。自分たちでも半信半疑だったんですよ。

長月　それも仕方ない部分があるんです。と言うのは、シュークリームロケッツは自分たちのことを最下位のグループだと思っていたんですね。最初の頃はバトルに負けまくったし、審査員の皆さんから「パフォーマンスが全然ダメ」とか散々言われましたし。

小澤　ほかのグループのレベルが想像よりもずっと高くて、驚いちゃったんです。みんなファーストシーズンとは比べものにならないくらいカッコよくなっていたから、「えっ!?」って焦りました。

長月　ファーストシーズンまでは違ったんですけどね。シュークリームロケッツはずっと周囲から「かわいい」と言われて甘やかされていた部分があると思うんですよ。最初にお披露目したときも、実はパフォーマンスの出来は相当ひどかったんです。立ち位置は覚えてないし、ダンスも歌も全部ボロボロ。なのに、そこで「下手くそ！」じゃなくて「かわいい！」っていっぱい言われたことで、私たち自身が勘違いしちゃった（笑）。最悪ですよね。「パフォーマンス的にもこれならOK」とか思っていましたから。

松本　でも最初の対決相手がLove Cocchiで、そのパフォーマンスがとにかくすごすぎて……。「レベルが違う」って圧倒されました。「このままじゃ1回も勝てずに終わっちゃうんじゃないか」とも感じましたし。

長月　あのときのショックは本当に大きかった。「私たち、雰囲気だけでパフォーマンスが追いついてないじゃん」って思いました。でも冷静に考えてみたら、ラストアイドルファミリー全員、雰囲気やビジュアルがいいのは当たり前なんですよ。だって、そもそもアイドルのオーディション番組に出ているんですから。

シュークリームロケッツの強み

──じゃあ、「シュークリームロケッツならではの強みって何？」という話になりますよね。

長月　そうそう。シュークリームロケッツの場合、衣装の雰囲気も含めてコンセプトが「かわいい」なんです。そこが、カッコよさもあるほかのグループと違うところ。でも、そのかわいさは一度捨てるしかないなと考えたんです。だから「君のAchoo!」のキーワードになっている“くしゃみ”にしても、アイドルらしい恥じらいを捨ててアピールする方向に変えて。

小澤　もうかわいく取り繕って勝てるほど甘い世界じゃないんだって思い知らされました（笑）。くしゃみについては、3人で相当話し合ったんですよ。ブリブリにすると棒読みになってしまうし、ハードにやりすぎるとオジサンっぽくなっちゃう。声の大きさを含めて、ちょうどいい具合をずっと試しながら調整していました。

──5グループがしのぎを削ったセカンドシーズンでは、ラストアイドル（現LaLuce）に小室哲哉さん、Good Tearsに織田哲郎さん、シュークリームロケッツに秋元康さん、Someday Somewhereに指原莉乃さん、そしてLove Cocchiにつんく♂さんと、各グループにシーンを代表するプロデューサーが就任しました。シュークリームロケッツのプロデューサーである秋元さんからは、何かアドバイスがあったりしたんですか？

長月　実は、対面できる時間がほとんどなかったんですよ。とにかくお忙しい方ですから。

小澤　私たち3人が秋元先生に会いにいく様子がオンエアされていましたけど、実際、あれがほぼすべてでした。3人で事前の作戦会議はやったんです。ホワイトボードに相談したい内容をたくさん書き出して。

松本　「まず挨拶をする」「聞きたいことの中でも特に優先して聞くのはこれ」とかね。だけど、そんな作戦は時間が少なすぎて全然通用しなかったです。2回目にお会いしたときは「私たちも変化をつけたいです」ってアピールしたんですよ。ほかのグループは、途中から振付とかアレンジに変化を加えていたから。「私たちも何か変えないと選んでもらえないんじゃないか」という焦りがありましたし。

小澤　そうしたら秋元先生は「そのままでいい」とおっしゃって。「今のパフォーマンスをもっとレベルアップさせるほうがいい」というのが秋元先生の考えで、「そうか。変えることがすべてじゃないもんな」って、私たちも考え方を改めました。