音階を鳴らさずに音楽を作る悦び

──YouTubeで公開されているプロフィール動画によると、今、音楽の専門学校に通ってるんですよね？

ミュージシャン科のドラムコースに通ってます。

──だからyuriさんのキャリアって一見「音楽の専門学生がプロデビューした」っていうすごく普通の話のようなんだけど……。

あんまり普通じゃないですよね（笑）。

──はい（笑）。なぜLAGOONに参加してみようと？

これまでもいろいろバンドは組んでいたんですけど、学校に「こういうプロジェクトのオーディションがあるよ」っていう話が来ているのを知って「このバンドなら今までとは違う新しいことができるのかな」と思ったからですね。

──学校の同級生やお友達とは違う、言うなれば全然知らない人たちとバンドを組むのって勇気要りませんでした？

確かに最初は音を合わせるどころじゃないくらい、緊張してました（笑）。でもやっぱりデビューしたかったし、ドラムは叩いていたかったので。

──そのドラムを始めたのはいつ頃なんですか？

ドラムをやりたかったというよりも、中学生の頃、SCANDALさんのデビューアルバムを聴いて、世代が近いこともあって「私もこういうふうになりたいな」と思って3人組のバンドを組んだ感じですね。でも組んだばっかりの頃、1人の子がベースをやりたいって言っていて、もう1人の子はギターとボーカルをやりたいって言っていて……。

──あっ、担当楽器を積極的には選んでないっていう意味ではRINOさんと一緒だ（笑）。

あはははは（笑）。私もそういう感じでドラムを始めたんですけど、叩いているうちに「ドラムを極めたいな」って思うようになって。もともとピアノをやっていたんですけど、ドラムって音階のない楽器じゃないですか。だけどやっていることはピアノと同じ音楽なんですよね。初めてドラムを叩いたとき、そのピアノやギターやベースとは違う角度から音楽を作れていることがすごく面白くて、その気持ちのまま今に至ってます（笑）。

ドラムを極めるために必要な二足のわらじ

──そしてドラムを極めるべく専門学校にまで進学した、と。

はい。

──ということはLAGOONの話がある前からプロ志向はあった？

はい。入学する前は漠然と「ドラマーになれたらなあ」って感じだったんですけど、学校の授業でいろんなプロの方の演奏に触れていくうちにはっきりと「ドラマーになろう」って思うようになりました。

──となると、今のyuriさんは“二足のわらじ”のうちの片一方、学生というわらじは脱いでもいい気もするんですけど……。プロのドラマーになる夢は叶ったわけですし。

確かにデビューできたことはうれしいんですけど、自分がプロか？って言われるとその実感はなくて……。学校には私よりうまい子がたくさんいますし、先生はもちろん私よりはるかにうまいですし。いっつも「まだまだだな」って気持ちになってるので、バンドというわらじも、学生っていうわらじも脱ぐ気はないですね。どっちも私がドラムを極めるために必要なわらじですから。

──デビューが決まったときの学校の友達の反応っていかがでした？

私と同じようにプロを目指している人たちなので「『まじっく快斗』観たよー。聴いたよー」って言ってくれはするんですけど「いずれウチのバンドで対バンするからな」って言われたりもしました（笑）。

──そういう声がプレッシャーになったりは？

LAGOONに入ったばっかりの頃はまだ夢の中にいるような気持ちだったので「対バンするからな」って言われてビックリしたんですけど、今は「デビューするんだからがんばらなきゃ」って感じにはなれてますね。

──そうやってyuriさんを取り巻く状況と気持ちが折り合った今、やってみたいことってあります？ 資料には「目指すは夏フェス！！！」とありますけど。

これは私だけじゃなくて、メンバーみんなで話してることなんですけど、いろんなところでライブをしてみたいです。

──例えばどんなところで？

日本武道館とか。

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あはははは（笑）。ありがとうございますっ！

嫌いなことはしたくないから好きなことをがんばる

──キーボードを始めたきっかけは？

幼稚園の頃からピアノを習ってはいたんですけど、本格的にバンドを組もうと思ったのは中学生の頃ですね。「MUSIC STATION」を観ていて「バンドで楽器をやってる人ってカッコいいな」「高校に入ったら軽音部に入ろう」って思って。ただその頃はベースをやりたくて……。

──でもピアノ歴を買われて部ではキーボーディストに？

ちょっと違って、ウチの軽音部って入部するのにオーディションがあったんです。でもベースを弾いたことはなかったからキーボードでオーディションを受けたら「じゃあそれで」って。

──ある意味生存戦略だ（笑）。

そうですね（笑）。で、バンドでキーボードを弾いてみたら「私、ピアノ好きなんだな」「しかも私、これしかできないのかも」って気付いちゃって。最近ふと気付いたんですけど、私が子供の頃から20歳になる今までずっと続けてこられたことってピアノくらいしかないんで、それはなんでか？っていったら、好きなことしかできない性格からなんです。だから高校のテストなんかも毎回10点みたいな感じでしたし（笑）。

──お勉強はお嫌いでしたか（笑）。

はいっ！（笑） その代わり部活は大好きだったから、本当にがんばっていて。だから嫌いなことをしないためにも好きなことはがんばろうって考えた結果、バンドとカフェ店員を続けているって感じなんです。高校生の頃から、都内や地元の神奈川を1人で散歩して、その街のカフェで何かを食べながら音楽を聴くのがすごく好きだったし、あと、キッチンが見えるカフェって多いじゃないですか。あそこでミルクをスチームしたり、そのスチームする機械のノズルに溜まったミルクを抜くために蒸気をプシューってしたりしているスタッフさんを見て「カッコいいなあ」って思っちゃって（笑）。高校生のときに喫茶店でアルバイトを始めて、それからずっとカフェで働いてます。

MIORIを「みーちゃん」と呼ぶこと

──そう考えるとすごいキャリアですね。カフェとバンド、どっちも好きなことが仕事になっている。

あっ、実はLAGOONに入るときは悩みました。以前やっていたバンドでお世話になっていたライブハウスの方からオーディションの話をもらったんですけど、ちょうどその頃、バンドを脱退しようと思っていたので、音楽を続けるかどうか決めてないのに受けていいのかなあって。でも1人だけバンドを辞めたみたいになってるのは悔しかったっていうのが本当の志望動機ですね（笑）。

──ただ「バンドでデビュー」とはいえLAGOONって普通のバンドとは成り立ちがちょっと違いますよね。

その知らない人たちとバンドを組むことも悩んだ理由の1つなんですけど、オーディションのときにRINOとか、ゆりっぺと話をしたらすごく楽しくて。「この人たちと一緒なら大丈夫」「大きいところでライブをするっていう夢が叶うんじゃないか」って思えるようになって、それからは本当に楽しく活動させてもらってます。

──傍目には、年齢も違えば、面識があったわけでもない5人が短期間のうちに音を合わせるのって大変な気もするんですけど……。

しかも私が普通にテレビで観ていたMIORIもいるし（笑）。

──まさしく（笑）。でも楽しく活動できている、と。

顔合わせのときに「あだ名を決めよう」って話になって、みんなのことをRINO、ゆりっぺ、NANA.、みーちゃん（MIORI）って呼べるようになったら吹っ切れました。例えばみーちゃんのことを今でも「瀧本さん」って呼んでいたら、きっと緊張していたはずなんですけど「みーちゃん」って呼べるようになったら本当の意味で仲間になれた気がして。だからあだ名って大事なんだなって思ってます（笑）。