音楽ナタリー Power Push - 杏子「イカサマ美男子 feat. リンダ / Magenta Butterfly」特集 杏子×リンダ対談
「女の友情」描く2人のバンド愛
いまみちともたか&杏子の“おもてなし”
──8月10日に東京・下北沢GARDENで開催されたイベント「いまみち杏子のお・も・て・な・し~夏のヒ・ト・サ・ラ・イ~(仮)」では「イカサマ美男子 feat. リンダ」が披露されました。いまみちさん、オカモトコウキさん(OKAMOTO'S)のほか、BARBEE BOYSのメンバーだったエンリケさん、コイソ(小沼俊明)さんも参加しましたが、手応えはどうでした?
杏子 「イカサマ美男子 feat. リンダ」は女性2人がバトルする曲なんだけど、ライブはまずお客さんに向かっていって、その中で私たちが戦っているっていう感じにしたかったんです。まさしくそういう雰囲気になったので、そこはよかったなって思います。リンダが歌っているところを後ろから見てるときも「カッコいいな」って思いました。
リンダ ちょっとでも「杏子さんを立てよう」なんて思ったら、負けますからね(笑)。「イカサマ美男子 feat. リンダ」はあくまでもツインボーカルの曲だし、しっかり自分を持って歌っていないと、杏子さんにいつ食われてもおかしくないので。女と女がぶつかってる感じはライブでも出したかったし、負けん気でいかんとやられるなって。
──すごい気合ですね!
杏子 しかもリンダは、凛としていて美しいですからね。あと、エンリケが前に出てくるタイミングとかも抜群なんですよ。イマサもアグレッシブなプレイでリンダを盛り上げていたし、そうやって自然に動けるのも、それぞれに存在感があるからだと思うんですよ。エンリケ、イマサ、リンダ、私がステージの前のほうで並んだときなんて、感動しちゃいました。
リンダ イマサさんがギターソロを弾きはじめると、自然と真ん中が空きましたからね(笑)。そういうことがなんの打ち合わせもなくできるのもいいなって。楽曲の世界観がそうさせているんだろうなって思います。しかもBARBEE BOYSの「マイティウーマン」「チャンス到来」も一緒に歌ったんです。「チャンス到来」なんて私以外全員BARBEE BOYSのメンバーでしたからね。信じられなかったし、ライブ中に「あれ? なんで私はここにいるんだろう?」ってなって、歌う箇所が飛んじゃったり。ただただ幸せだったし、まさにタイトル通りの“おもてなし”を受けました(笑)。
BARBEE BOYSの曲が歌えない
──今の杏子さんにとって、BARBEE BOYSの楽曲はどんな位置付けにあるんですか?
杏子 今は自然に歌えてますけど、解散したばっかりのときはさすがに歌えなかったです。やっぱりショックだったんですよ、バンドが解散したことが。だから、ソロになってからもしばらくはBARBEE BOYSの曲が歌えなくて。
リンダ そうだったんですか?
杏子 うん。いろんな局面でBARBEE BOYSのことを言われますけど、時間が経つというのはすごく強くて。時間の経過というのはいろいろなことをよくも悪くも変えますから。ソロのアルバムの1枚目、2枚目の頃は迷うことも多かったけど、4枚目の「TOKYO DEEP LONDON HIGH」で「やっぱりロックだな」と感じた頃からBARBEE BOYSの曲も歌い始めたんですよ。
──時間の経過、ソロアーテイストとしての確立が必要だったと。
杏子 そうですね。ソロになったばっかりのときは、一緒に活動してくれるミュージシャンにバンドの幻影を求めていたところもあったんです。ずっと一緒にやってほしいんだけど、当然ほかのスケジュールもあるから無理じゃないですか。そういう経験を重ねるうちに自分も強くなれたと思うし、BARBEE BOYSに対する認識も変わってきたのかなって。
やっぱり私はバンドがやりたい
──「イカサマ美男子 feat. リンダ」の制作、ライブを通して、お互いに発見はありました?
リンダ まだまだ未知数ですね(笑)。今は「杏子さん、ただただ最高やな」って思ってます。レコーディングのときも「ホンマに最高やな」って何度も感じたので。
杏子 リンダはギターも歌もドラムもできるけど、1つひとつに対してこだわりを持っているんです。今回のレコーディングでも、気になるところがあればイマサにちゃんと確認してたんですよ。私はもっと適当というか「んー、わかんないけど、とりあえずやってみる」っていう感じなんだけど、リンダはそうじゃなくて。きっとビジョンがしっかりしているんだろうなって思いました。
リンダ 「イカサマ美男子」は私が書いた曲ではなくて、歌わせてもらっている立場なので。「この表現で合ってるかな?」って気になったら、イマサさんに聞いたほうがいいかなって。杏子さんとイマサさんは阿吽の呼吸だと思うけど、私は違いますからね。
── N'夙川BOYSは活動休止中ですが、リンダさんの今後の音楽活動はどうなりそうですか?
リンダ バンドをやろうと思って、今準備してます。私、バンドが好きなんですよ。だって、バンドが一番よくないですか?
杏子 わかる! 私もバンドが好きだし、プライベートでいろんなバンドをやったりしてるから。この前「シング・ストリート 未来へのうた」っていう映画を観たんですけど、少年たちがバンドを組む話なんですよ。そのときも「こういうのって、やっぱりいいなあ」って思ったし。
リンダ 私も観ました! いいですよね。
──気が合ってますね。バンドの楽しさって、どのあたりに感じてますか?
リンダ 人間関係ですかね。「バンドって大変じゃない?」とか「ソロのほうが楽でいいよ」って言われることもあるんですけど、やっぱり私はバンドがやりたいなって。本当にやりたいことって、そんなにないですからね。だからこそ「イカサマ美男子」で杏子さんと歌えたことは、本当にいい経験になりました。N'夙川BOYSが動いているときだったらできなかったかもしれないし、いいタイミングだったなって。
杏子 そうだよね。いつかお互いのバンドで対バンしたいね。
リンダ いいですね! ロックンロールやりましょう!
- 杏子 ニューシングル「イカサマ美男子 feat. リンダ / Magenta Butterfly」
- 2016年9月28日発売 / 1500円 / アリオラジャパン / オーガスタレコード / AUCL-206
収録曲
- イカサマ美男子 feat. リンダ
- Magenta Butterfly
- Illumina
- あなたにアディクション with いまみちともたか&OKAMOTO'S
- イカサマ美男子 feat. リンダ(Backing Track)
- Magenta Butterfly(Backing Track)
左 / 杏子(キョウコ)
1983年にロックバンド・BARBEE BOYSのメンバーとして音楽活動を開始。1992年のバンド解散後も個人で活動を継続し、同年11月にはソロ名義初のオリジナルアルバム「Naked Eyes」を発表した。現在、ラジオ番組のパーソナリティ(JFN「杏子のSpice of Life」、Radio NEO「ラジカルNEOナイト」)をはじめ、映画、舞台等、幅広いジャンルで活躍中。
右 / リンダ
2007年にマーヤLOVE、シンノスケboysとともにロックバンド・N'夙川BOYSを結成。同バンド以外に再結成後のPLASTICSのボーカルを担当しているほか、モデル活動も行っている。N'夙川BOYS は2016年2月に行われた東京・恵比寿ガーデンホール公演をもって活動を休止した。現在は新たなバンド活動に向けてロックンロールの修行中。