久保あおい、16歳。“ありのままの自分”さらけ出して歌を届けることを決めた理由

久保あおいが3月25日に新曲「独り言」を配信リリースした。

15歳のときにビジュアルを伏せて音楽活動をスタートさせ、YouTubeにアップした「反面教師為貴方覇本日怒上昇中乃巻」のミュージックビデオが90万再生を突破するなど、Z世代のネット発アーティストとして注目されていた久保。16歳になった彼女は「これからは自分自身のことを歌にしていく」という思いのもと、「独り言」で初めて作曲に挑戦し、このタイミングでビジュアルを公表することも決めた。

自分の等身大の姿をありのままに歌う「独り言」に彼女が込めた思い、そして、彼女が見つめる未来とは? 音楽ナタリーでは久保にインタビュー。その思いを聞いた。

取材・文 / 坂本ゆかり撮影 / 須田卓馬

自分がわからないものの答えを探すために書いている

──新曲「独り言」を機にこれまで隠してきたビジュアルを公表しましたが、そもそも、なぜ顔を隠して活動することにしたのでしょうか?

今までは曲を純粋に楽しんでほしかったので顔を隠していたのですが、これからは自分自身のことを歌にしていくので、どんな人なのかがわかったほうがいいかなと思って公表することにしました。公表を決めた今は、緊張というか……「大丈夫かな?」という気持ち。恥ずかしいです(笑)。

──「独り言」は久保さんが初めて作詞作曲した楽曲ですが、今後は完全に自作にシフトしていくのでしょうか。

これからは自分で作詞作曲もしつつ、今まで通り詠人不知さんとも楽曲制作をする予定です。ほかのアーティストさんに私の書いた文章をお渡しして、楽曲提供していただくことにもチャレンジしてみたいと考えています。

──「書いた文章をお渡しして」というお話がありましたが、今日の取材前に「独り言」の楽曲とは別に「non-fiction」という小説のような文章を資料としていただきまして。いつも曲を作るときには、このような文章から構想を膨らませるんですか?

そうですね。自分の思ったことをノートに書き留めていて、歌詞はこのノートの内容をもとに作っています。思い付いたときに気が済むまで書いて、気付くと3、4ページ書いていることもあります(笑)。小説のように長文で書くこともあるし、箇条書きで書くこともあるし……思い付くままなので、最初にテーマがあるというより、書いているとテーマが見えてくる感じです。

──久保さんが“書きたくなる”ときのトリガーって、どんなものなんでしょう?

例えば「独り言」のサビの歌詞には「生きる意味を知りたくて」とあるのですが、自分がわからないものの答えを探すために書いている気がします。中学2年生のときから少しずつ書いていますが、途中で「書くことは正しいのか?」と疑問に思って、やめていた時期もあるんです。音楽活動を始めてから、未来の自分へ向けた手紙のような感覚で、また書くようになりました。フラストレーションとして吐き出すというよりは「この気持ちを書いたらどんな言葉になるんだろう?」という興味のほうが大きいです。思っていることがたくさんありすぎて(笑)。ただ、文字を書くのは好きだけれど、文を組み立てるのは苦手なので、小説家になれるとは思っていなくて、やっぱり歌で届けるアーティストというお仕事がやりたいことだなと思っています。

久保あおい

つらかった過去の思いを正直に書くということ

──「独り言」から自分で作詞作曲をするようになったのは、音楽を作る理由が自分の中で変わったということなのでしょうか?

私自身、共感できる曲に心を動かされてきたから、今度はそれを届ける側になりたくて。そのためにも、自分の過去や自分のことを曲にしようと思って、作詞作曲を始めたんです。曲を作るなんて初めてだったし、正解がないことなのですごく不安でした。今まで1コーラスだけのデモ曲は何曲か作っていたんですけど、そこで最初に作ったのが、この「独り言」だったんです。初めて作った曲を初めて1曲フルで仕上げて、リリースすることができました。

──記念すべき曲なんですね。改めて、「独り言」がどのようにできあがったのか、その過程を教えてもらえますか?

歌詞は私の日常の1日を切り取ったもので、雨の日に「今日は誰とも会いたくないな」とか、頭の中で考えていたことを歌詞にしました。メロディを作るときには、独り言をボソッと言ってる感じ……ちょっと切ない感じを意識して。いろいろなところにちりばめている「ラララ」という部分は、ピアノを弾いているときにたまたまできたメロディで、スタッフさんに「それいいね」と言われたものなんです。曲を作るときはスタッフさんに簡単なコードを弾いてもらって、そこにメロディを自分で乗せていきます。難しいことは抜きで、ただ思い付いたメロディを出していくという感じで。誰かと一緒に作るのはすごいプレッシャーを感じますね(笑)。でも、自分の思うように作れたなと思っています。

──アーティストとしての、自分なりのポリシーは?

自分が悩んでいた時期の思いや、ちょっとつらかった過去の思いを正直に書くことですね。自分のことを一番引き出せるのは、やっぱり自分だと思うから。言葉をまとめるのは苦手だけれど、少しでも皆さんのもとに届けば……。それに、先ほども言ったように、私は自分が共感した曲に救われてきた。だから、私の過去を歌詞にすることで、今悩んでいる人や不安な人に届いてくれたらと思っています。私が歌を聴いて「孤独じゃない」と思えたように、私の歌を聴く人にもそう感じてもらえたらいいなと思っています。

──では、アーティストとしての将来の理想像は?

今が苦しい人、いろいろな事情を抱えた人たちに、「1人じゃないよ」ということを伝えたいというか……歌で救うというよりは、寄り添えるアーティストになりたいです。

──3月18日には大沢伸一(MONDO GROSSO)さんによる「嘘だらけ」のリミックスがリリースされましたが、久保さんの歌がダンスミュージックに乗るのは斬新な印象でした。完成作を聴いてどんな印象を受けましたか?

原曲の「嘘だらけ」とは違った世界観の曲ができあがってきて、「スゴっ!」ってなりました。同じボーカルなのに全然違う印象の曲になって、「音楽の世界って、なんか広いな」と思いました。新しい扉を開けちゃいました(笑)。