遊びながら作る
──そういう意味では、Kroiも遊び場としてのバンドじゃないですか。
内田 それはあると思います。大前提として、俺は新しいものを作りたいんですよ。そうなると、遊びで偶発的に出てきちゃったものを採用していかないと、全然新しいことはできない。そのニュアンスはずっと持っておきたいです。
森 俺も曲を作るときにそれは大事にしてますね。「作ろう」と決めてグッと入るよりかは、音楽を聴いてるときに「作りてー!」と思って出たもののほうがいい気がします。
チョモ 楽しいよね。遊びの中でハマったもののほうがうれしいし。
森 今作ってる曲も半端ないよね?
チョモ うん。
森 へへ。
内田 (笑)。どんぐりずは進化がすごいよね。
森 うん、止まんないんだよねえ。
内田 なんでそんなに止まんないの? 意外と真面目に制作してる?
チョモ いや……不真面目だね。
森 遊びたいんだよね。「4EP2」もふざけながら作ったし。
チョモ 本当にふざけてた。
森 「Woo」とか2時間半くらいで作りました。ずっと遊んでたら完成して。
益田 でも、「4EP2」は自分たちの中で4つのテーマを決めて作ったんでしょ? インプットしまくってるのかと思ってた(※2021年の2月に、「Dance」「Funk / Afrobeat / Dub」「Hip Hop」「Pop / R&B / Soul」という4つのテーマを掲げ、連作のEPをリリースしていくことをアナウンスしていた)。
チョモ ……それが頓挫しまして。
益田 (笑)。
チョモ そのコンセプトに俺らが縛られている気がしちゃって。今はそこからどう脱却するか、ということに立ち返っている。
森 だからジャンルがなくなると思う。
内田 でも、最終的にそのくらい自分の中で矛盾があったほうがオモロいんじゃない? 曲を作っていると、最初に自分が敷いた風呂敷にだんだん沿わなくなってきて、俺もそれで一時期クソ悩んでた。でも、これはもうこの矛盾を大事にしたほうがいいと思うようになりました。それで新たなものが生まれるというか。
気持ちを悪くしないと耐えられない
──先ほど内田さんから「新しいものを作りたい」というお話がありましたが、どんぐりずにもそういうモチベーションはありますか?
チョモ 最近はあんまりそこにスポットを当ててなかったです。今は90'sの音にめっちゃハマっているんですけど、曲作りは自分の趣味からの影響がデカいので、強いて言えばその要素を摘んで作るのが俺らにとっては新しいことなのかな。
森 どんぐりずにとっての新しいことだね。
──それこそ「Woo」は90'sっぽさがありますね。
チョモ 次はもっと90'sになっちゃうかもしれない。
内田 何聴いているの?
チョモ ここ最近なんだけど、90'sハウスに流れていったの。あとはトリップホップとか、ドラムンを聴いている。
森 基本的に2人ともUKが好きなんだよね。
──Massive Attackとか?
森 大好き。
チョモ 対極にA Tribe Called Questとかのヒップホップがいると思っていて、俺らはそっちも超好きなんだけど。UKはずっと地を這うようなことをやっているから。
森 渋いんだよね。
チョモ 自分たちもそういうのをずっとやってるから。そこに身を置くのが好きですね。
内田 どんぐりずはシンセの音とかにUKっぽさが出てるよ。UKってなんだかおしゃれだよね。よりオタッキーな感じもするし。
──Kroiは最近ハマっている音楽はありますか?
関 僕はジンジャー・ルートを最近聴いてますね。ふわっとしたバンドサウンドに惹かれています。
益田 俺は昔好きだったIce Cubeおじさんをめっちゃ聴いてます。
──立ち返ったのは何か理由があったんですか?
益田 今、刺青を進行中なんですけど。
チョモ (益田のタトゥーを見て)それヘビ?
益田 ウツボ(笑)。
森 ヤバいね!
関 肩には龍がいるんだよ(笑)。
益田 ジョニー・ウィンターのタトゥーも入ってます。
──Ice Cubeはタトゥーを入れるときに聴きたくなる?
益田 入れるときって痛いんですよ。自分の気持ちを悪くしないと耐えられないんですよね。
チョモ (笑)。
益田 それで悪いIce Cubeの音楽を聴いて耐えるんです。
関 俺も益田と同じ彫り師さんにお願いしてるんだけど、めちゃめちゃ痛い。
森 何入れてるの?
関 俺はウサギ。怜央はカエルを入れてる。
──みんな動物モチーフのタトゥーが入ってるんですね。
内田 動物好きだから、やっぱりテンション上がります。
お互いのリリックについて
──Kroiとどんぐりずで、お互いにリリックで通じ合うものはありますか?
森 怜央くんの書く、何を言っているかわからないんだけど、どこか一瞬だけスパッと聴き取れるところですかね。流れていくんだけどたまに入ってくる言葉というか。俺もそのノリがめっちゃ好きで、そこは同じマインドで作っていると思う。
内田 あと、パンチラインを置きがちな場所には置かないでしょ?
森 置かない置かない(笑)。
内田 だよね。絶対よくわからないところに置くから(笑)。
森 俺は作りながら声出してみて、自分でも何を言っているかわからなすぎると思ったら、かわいいやつを入れるようにしてる。「NO WAY」の「知らんぺったん」ってリリックとかはそうですね。
内田 あれはヤバかった。
森 「絶対にみんなが聴いちゃう響きを入れよう」というマインドはあるかも。
──「E-jan」の「なんだってやっちゃえばいいじゃん」というリリックは、どんぐりずの多くの楽曲に通底しているマインドなのかなと思いました。
森 そうですね。縛られない感じはあります。
内田 説得力あるしね。
森 嘘になっちゃうのが一番嫌だから。
──あと、読むとハートを感じるリリックが多いですよね。
森 それはうれしい。そこがね、俺のいいところなんですよ。
チョモ (笑)。
内田 中身は漢気タイプでしょ?
森 うん、漢気タイプ。
内田 ちゃんと今の時代の現代っ子感を持ちながら、漢気みたいなものが伝わってくるんだよね。
ラフな雰囲気が出そうなツアー初日
──濃いキャラクターを持ったアーティストがそろう対バンなので、ツアーの開催が楽しみです。
関 ライブハウスに来たからこその体験をして、音源を聴いているだけじゃ得られない何かを感じてほしいです。
内田 俺らは本当にいろんな対バンをやってきたんですよ。これまでもクラブイベントに出たり、ゴリゴリのハードコアバンドが集まるイベントに出たり、ライブをする感覚がDJ寄りなところがあって。イベントに合わせた身のこなしでライブをすることに慣れているので、対バンのアーティストさんによって、その日のライブのニュアンスが変わってくると思います。
──ツアー初日、どんなライブになると思いますか?
内田 この2組はいい感じにラフな雰囲気が出ると思います。
森 俺らが一番遊んでれば、お客さんも盛り上がりそうだよね。
関 気楽に楽しめると思います。ほかの会場のゲストは大先輩だったりするので、ラフに楽しめるのが福岡公演かもしれない。
森 最高。
──どんぐりずは先ほど話していた新曲はやる予定なんですか?
チョモ やっちゃうかもなあ。
森 やっちゃいてえ。
──そこも期待しています。
チョモ おす。
内田 (笑)。
- どんぐりず
- ラッパーの森、トラックメイカー / プロデューサーのチョモからなる2人組ユニット。音源から映像、アートワークに至るまで一貫してセルフプロデュースで制作している。2021年リリースの楽曲「NO WAY」が中南米諸国を中心に、各サブスクリプションサービスでヒットを記録。世界17カ国でSpotifyのバイラルチャートにランクインし、チリ、メキシコ、アルゼンチンでは1位を獲得した。同年9月には千葉・ZOZOマリンスタジアムで開催されたライブイベント「SUPERSONIC」に出演。ウィットにあふれるグルーヴとディープなサウンドで注目を浴びている。
2021年12月1日更新