米米CLUB|エンタテインメントへの愛を表現した2020年とニューシングルを語る

2020年に結成35周年を迎えた米米CLUBが、映画「大コメ騒動」の主題歌でもあるニューシングル「愛を米て」を1月6日にリリースした。

昨年は「氣志團万博2020 ~家でYEAH!!~」に出演し、初の無観客配信ライブ「OMUSUBI」も開催するなど、新しい試みを続けた米米CLUB。2013年以来の新曲のリリースに加え、2月には生配信コンサートを東名阪のライブハウスで鑑賞する「米米CLUBの生配信コンサートをライブハウスで! 〜自由の扉〜」の開催が決まり、2020年から延期になったツアーの開催もすでにアナウンスされている。今回のインタビューでは2020年の米米CLUB、そして待望のニューシングルについてカールスモーキー石井(Vo)とBON(B)に語ってもらった。

取材・文 / 佐野郷子 撮影 / 山口真由子

バカやってるからこそ感動できる場面もあるのが米米

──2020年の米米CLUBの活動は、3月にデビュー35周年記念ツアー「a K2C ENTERTAINMENT TOUR 2020 ~OMUSUBI~」の開催がアナウンスされたところから始まりました。

カールスモーキー石井(Vo) そうでしたね。ただ、3月にツアーが発表された時点で、すでにコロナ禍が始まっていたので、この先どうなるんだろうとは思っていましたよね。

BON(B) ツアーが10月からだったから、まだその頃はどうなっていくかわからなかったんですよね。

──ツアーに向けての準備はしていたんですか?

BON(B)

石井 2017年に「おせきはん」、2019年に「おかわり」と、ここ最近のツアーはベタな日本語のタイトルが付いていたので、ブルーを基調にした「OMUSUBI」にしようというくらいは決まっていたのかな。ここでまた「おむすび」では“にんげんだもの”みたいな感じになっちゃうので。

BON いっそ“にんげんだもの”路線でもよかったのかもしれないですけどね(笑)。

石井 でも、何か今までとは色を変えたかったというか、そろそろファンキーでカッコいい新曲も出したいね、なんて話はしていたと思う。

──ツアーの全公演を2021年に延期することを発表したのは7月31日でしたが、その決断をした理由は?

石井 米米CLUBはやっぱり、お祭り騒ぎのバンドじゃないですか? お客さんと一緒に踊ったり、騒いだりすることができないのなら、これは延期するしかないということになりましたね。

BON こればっかりはしょうがないですよね。制作スタッフも含めて苦渋の決断ではありましたけど。

──客席の人数を減らして、感染対策をしたうえでツアーをする選択肢もあったかと思いますが。

石井 いや、米米のコンサートで騒ぐどころか声も出せないのなら、止めたほうがいいというのは早い段階で決めていました。楽しさを売り物にしてきたバンドで思いきり楽しめないのは、違うだろうと。

BON そうだね。ライブを楽しめるムードにならないと本領が発揮できないバンドなので。

石井 バカやってるからこそ感動できる場面もあるのが米米だから。そんなステージができる日が来るまでは……コロナって匂いでもあればいいのにね。「あっ、臭い」って気が付くようなさ。

BON ガスじゃないんだから(笑)。テッペイちゃん、そんなバカなことばっかり言ってるんですよ。

石井 いや、だってさ、さすがにこの1年のコロナ疲れはみんなあると思うよ。

BON 確かに。

──ちなみに、お二人は自粛期間はどう過ごされていましたか?

カールスモーキー石井(Vo)

石井 俺はもともとがステイホーム型の人間だから、普段と大して変わらない生活ではあったんですよ。

BON 自分も家でおとなしくしていました。テッペイちゃんは昔から外で遊ぶより家で映画観たり、絵を描いたりしているタイプだもんね。

石井 そう。根っからの自粛タイプ(笑)。で、ふっと気が付いたら猫のSKYちゃんと話しているんですよ。

BON それ、ヤバイじゃん(笑)。

──Zoomでの打ち合わせとかはしませんでしたか?

BON 米米ではZoomは使わなかったですね。ミーティングもすっと集まって、さっと帰る。できるだけ短時間に集中して行うようにしていました。

石井 Zoomのやり方、俺、知らないから(笑)。取材やコメント撮りでは使いましたけど、あんまり好きじゃない。このコロナ禍で感じたのは、エンタメに限らず、どんな仕事でも人ありき、人が動かないとどうにもならないということでしたね。

──家で配信ライブを観たりはしましたか?

BON 少しは観ました。ただ視聴者として感じたのは、最初の20分くらいはいいんですけど、集中力が続かないというか、そこにどっぷり入っていけない自分がいて。

石井 俺はやり方がよくわかんないから、配信ライブを視聴している人のところに行って観せてもらってました(笑)。

BON やっぱり。そうだろうと思った(笑)。

氣志團にはエンタテインメント系のバンドとして共感する

──ツアーの延期の発表後に、昨年は配信で開催された「氣志團万博2020 ~家でYEAH!!~」への出演が決まりましたね。

石井 米米の配信ライブは「氣志團万博」が最初でしたね。氣志團は米米をリスペクトしてくれているし、出演は快諾したんです。ただ、やっぱり観客がいない寂しさというか違和感はありましたね。

BON 配信の現場では氣志團のメンバーが唯一の観客として盛り上げてくれて、いい感じだったんですけどね。

石井 「氣志團万博」は、翔やん(綾小路翔)たちメンバーの情熱がひしひしと感じられるフェスだからこっちも協力したくなっちゃうんですよ。彼らの観客と出演者に対する気の配り方はグッとくるし、同じエンタテインメント系のバンドとして共感するところはあるしね。2017年には米米がトリを務めさせてもらったし。

BON(B)

BON あのときは恐れ多くも山下達郎さんのあとだったんですけど、とんでもない豪雨で楽器は壊れるし、土砂降りの中で決死のステージだった。

石井 そうそう。あれは米米史上で最も過酷な環境だった。それとはまた違って、今年の配信での「氣志團万博」はこっちも初めての経験だったから、どういうふうに見せるのがいいのか計りかねていたところはあったんですよ。

──米米のもう1つの顔である“ソーリー・ミュージック”の極北のような初期の迷曲「アバンギャルド」を最後に披露したのは驚きました。

石井 あれは、最後に視聴者をチクッと刺したかったんでしょうね(笑)。

BON ヒドイ歌詞ですよねー。「どうせ 君らにゃ分からない」とか(笑)。

──「君がいるだけで」のような大ヒット曲でしか米米を知らない視聴者には、アカペラ演歌調の「アバンギャルド」は衝撃だったでしょうね。

BON 意味わかんないですよね(笑)。

石井 酔っ払ってワケわかんないこと口走ってるおっちゃんとかいるじゃないですか? あれですよ。

BON でも、どんどん実体に近付いていってるのが怖いですよ(笑)。

石井 いよいよ本物感が出てきたっていうかね(笑)。ライブ配信自体は率直に言うとテレビ番組とそんなに違わないから、これは違うことをやらないと差別化が難しいとは思ったんですよ。