今年デビュー32年目を迎えた米米CLUBが3枚組ベストアルバム「LAST BEST ~豊作参舞~」をリリースし、9月から約4年半ぶりの全国ツアーを開催する。これを受けて音楽ナタリーではカールスモーキー石井(Vo)とBON(B)にインタビューを実施。活動再開の狙いに加え、過去の解散および再結成時の思いについても話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也 インタビュー撮影 / moco.(kilioffice)
ポップス路線との決別
──米米CLUBは2013年の全国ツアー以降表立った活動がなく、今回が約4年半ぶりの活動再開になります。まずはこれほど長く活動期間が空いた理由について聞かせてください。
カールスモーキー石井(Vo) 僕らは2006年に再結成したんですけど、やってるうちになんだか解散前の米米CLUBの延長みたいになってしまったんですよね。前回のツアー以降はそれについて考えていて、気付いたら4年経っていたという感じです。
──解散前の米米CLUBの延長というのはどういうことですか?
石井 「周りの期待に応えよう」とか「音楽的にちゃんとやらなきゃ」みたいな意識が強くなって、どこか“やらされてる感”が出てきてしまったと言うか。
──バンドとして本来やりたかったことからズレてしまった?
石井 うん、自分としては、もっと初期の頃みたいなトゲのある米米CLUBをやりたいなってずっと思ってたんです。で、今回それをメンバーに話したら「あ、俺も俺も」って感じになって、それでまた動き出すことができたっていう。だから今度のツアーでは最初の頃のちょっとアーティスティックでトガった米米CLUBに戻そうと思ってます。お客さんは関係なくて、とにかく自分たちの美学みたいなものを表現する。それが初期の米米CLUBのスタイルだったので、それをまたやりたいっていうのが今回のコンサートの一番大きな狙いですね。
BON(B) もともと解散も再結成も、声かけるのは全部テッペイちゃん(石井)なんですよ。「もうやめない?」とか「そろそろやんない?」とか。そこにメンバーがいい意味で振り回されてるっていう。それで今回はテッペイちゃんからそういうアイデアが出てきたので、トガったこと、バカなことがまたできるんじゃないかと思って、それができるならやりたいなって思ったんですよね。
石井 やっぱり「愛はふしぎさ」とかを歌ってる米米CLUBより「ポイのポイのポイ」を歌ってる米米CLUBのほうが面白いからね(笑)。どこか人を食った部分っていうのが米米にはやっぱりすごく大切で、そういうのをもう1回やりたい。すごく大きくなった米米CLUBしか知らないファンの人たちに「米米CLUBって実はこうなんだよ」っていうのを知らしめたい。
──今回のツアーは「あの頃の米米をもう一度!」というキャッチフレーズが付いていますが、「あの頃」というのはヒット曲を連発していた絶頂期のことではなく?
BON そう、違うんです(笑)。
石井 だからいわゆるポップス路線というか、みんなが喜んでくれる米米CLUBみたいなやつは1回やめようってことですよ。別にそれで「お客さん来なくてもいいっす」「途中で帰ってもいいっす」って思ってますから。
──じゃあライブのセットリストは?
石井 みんなが知らない、ヒット曲じゃない曲が多くなるかも?
──でも普通のお客さんはヒット曲が聴けるのを期待してライブに来ますよね。
石井 期待して来てくれるのが一番いいよね。「はいはい、おいでおいで」って言ってボッコボコにするみたいな(笑)。
──あの頃のキラキラした米米CLUBを求めて来るファンがたくさんいると思うんですが。
石井 うん、そうでしょうね。みんな着飾ってね。バカですよね(笑)。
──大好きな曲を一緒に踊ろうと思って楽しみにしてる人もいますよね。
石井 一生懸命練習してきたりしてね、無駄な汗ですよ。
──ものすごくタチ悪いですね(笑)。
石井 ちょっとそれ他人に言われると頭に来るね。
BON わはは(笑)。自分たちで言ってるのはいいけど?
石井 うん、人に言われると頭に来る(笑)。でも自分たちが楽しんでるかどうかっていうのが俺たちにとっては何よりも大事なことなんで、今回のツアーはそれを主眼に置いてやりたいなって思ってます。やっぱり俺たちライブバンドだから、ライブでどういう事件が起こるかが楽しみなんですよね。
「君がいるだけで」のヒットがもたらしたもの
──今思い返すと初期の米米CLUBのライブは、確かにアーティスティックでアングラな雰囲気が強かったですよね。
石井 まあ、あの頃ロックバンドのライブとか観に行っても「なんだこれ」とかしか思わなかったしね。革ジャン着たボーカルがシャウトしてお客さんが拳を上げるみたいな決まりごとの中でやってるみたいで「つまんねえな」って。だから自分たちはもっと違うことをやろうと思って米米CLUBを作ったんです。
BON 自分自身ロックも好きだしいろんな音楽が好きだったけど、そういう趣味を米米CLUBに持ってこようとは全然思ってなくて、もっと隙間産業的な、米米CLUBにしかできないことをやりたかったから。「どういうことをやってんの?」って聞かれても「音楽じゃないし、なんて言ったらいいのかな……」っていうことをやりたかった。テッペイちゃんとは最初からずっとそんな話をしてましたね。
石井 その説明できない部分が米米の真骨頂だと思ってたんで。
──でも90年代に入ってからの米米CLUBは、わかりやすいポップな楽曲を次々にリリースして、J-POPシーンのど真ん中に身を置くことになります。あの当時、初期のアーティスティックな路線のままでやり続けるという選択肢はなかったんでしょうか?
石井 「FUNK FUJIYAMA」(1989年リリース)とか、あのへんの路線のまま行ければよかったのかもしれないけどね。当時もミュージックビデオで賞を取ったりして評価はされてたと思うし。
──転機になったのはなんだったんでしょうか?
石井 例えば月9のドラマ主題歌とかね、そういう仕事が入ってくるとやっぱりそれは受けざるを得ないっていうか、やったほうがいいってことになる。CHAGE and ASKAや小田和正さんが何百万枚も売れてる時代ですよ。それで米米CLUBも「君がいるだけで」(1992年リリース)を出したらドカーンってきちゃったもんだから。複雑でしたけどね。
──「君がいるだけで」のヒットはバンドにとってやはり大きな出来事だったんですね。
石井 まあいわゆるドラマの主題歌なんですけど。
──でも「この曲を月9のドラマ主題歌として出したら売れてしまう」「バンドを取り巻く状況が変わってしまう」ということはリリースする前からわかっていたのでは?
石井 いや、当時はそこまで考えて作ってないです。あの曲はホントにいろんな仕事が重なってる中、5分で作った曲なんで。それがたまたまヒットしてしまっただけ。「これは売れるぞ」とか考えてたわけじゃなくて、だから自分たちもなんだかキョトンとしてましたよね。
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解散の理由
- 米米CLUB「LAST BEST ~豊作参舞~」
- 2017年8月8日発売 / Sony Music Labels
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初回限定盤 [4CD+Blu-ray Disc]
9504円 / SRCL-30046 -
通常盤 [3CD]
5400円 / SRCL-30051
- DISC 1
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- I・CAN・BE
- Shake Hip!
- 加油(GAYU)
- PARADISE
- sûre danse
- 嫁津波
- KOME KOME WAR
- TIME STOP
- FUNK FUJIYAMA
- 浪漫飛行
- ひとすじになれない
- DISC 2
-
- 君がいるだけで
- 愛してる
- ORION
- ときの旅路
- 愛はふしぎさ
- ア・ブラ・カダ・ブラ
- 俺色にそまれ
- 手紙
- ワンダブルSUNでぃ
- JUST MY FRIEND
- すべてはホントでウソかもね
- STYLISH WOMAN
- Special Love
- DISC 3
-
- WELL COME 2
- E-ヨ
- 君を離さない
- MATA(C)TANA
- 御利益
- WE ARE MUSIC!
- つ・よ・が・り
- 080808
- ふりむかないで
- 恋のギャンブル
- TAKARABUNE
- どんまい
- コドモ ナ オトナ
- Uplight
- DISC 4(初回限定盤のみ)
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- 愛 Know マジック(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- 愛はふしぎさ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- 君がいるだけで(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- Special Love(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- I・CAN・BE(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- KOME KOME WAR(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- ア・ブラ・カダ・ブラ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- STYLISH WOMAN(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- sûre danse(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- Shake Hip!(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- WELL COME 2(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- TAKARABUNE(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- E-ヨ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- FUNK FUJIYAMA(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- ワンダブルSUNでぃ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- ひとすじになれない(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- すべてはホントでウソかもね(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- TIME STOP(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- 手紙(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- 愛してる(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- 俺色にそまれ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- 恋のギャンブル(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- ORION(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- PARADISE(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- 浪漫飛行(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- KOME KOME TV ONODASAN
- かっちょいい!
- SHAKE HIP!
- 渚のジル
- Paradise
- JAL OKINAWA '90 CM ~浪漫飛行
- 浪漫飛行
- Peeping Tom
- 愛はふしぎさ
- ア・ブラ・カダ・ブラ
- STYLISH WOMAN
- WELL COME 2 ~Video Clip~
- E-ヨ~Video Clip~
- MATA(C)TANA ~Video Clip~
- WE ARE MUSIC!~Video Clip~
- つ・よ・が・り VIDEO CLIP
- TAKARABUNE (MUSIC VIDEO)
- TAKARABUNE (MUSIC VIDEO)
- a K2C ENTERTAINMENT TOUR 2017 ~おせきはん~
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- 2017年9月9日(土)埼玉県 三郷市文化会館 大ホール
- 2017年9月16日(土)東京都 江戸川区総合文化センター 大ホール
- 2017年9月20日(水)大阪府 大阪国際会議場 グランキューブ大阪 メインホール
- 2017年9月23日(土・祝)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2017年9月30日(土)千葉県 千葉県文化会館
- 2017年10月7日(土)神奈川県 川崎市スポーツ・文化総合センター
- 2017年10月8日(日)神奈川県 川崎市スポーツ・文化総合センター
- 2017年10月20日(金)福岡県 福岡サンパレス
- 2017年10月21日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2017年10月28日(土)徳島県 鳴門市文化会館
- 2017年11月3日(金・祝)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2017年11月5日(日)静岡県 富士市文化会館ロゼシアター
- 2017年11月10日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 米米CLUB(コメコメクラブ)
- 1982年結成。1985年にメジャーデビュー。ダンサーやホーンセクションなどを含む大所帯でのパフォーマンスとエンタテインメント性の高いライブ演出、卓越したアートワークなどで注目を集める。1992年にリリースしたシングル「君がいるだけで」が大ヒットを記録し国民的グループの仲間入りを果たすも、1997年の東京ドーム公演を最後に解散。2006年の再結成以降はマイペースで活動を続け、2枚のオリジナルアルバムを発表。2017年8月に3枚組ベストアルバム「LAST BEST ~豊作参舞~」をリリースした。現在のメンバーはカールスモーキー石井(Vo)、ジェームス小野田(Vo)、BON(B)、フラッシュ金子(Sax, Key)、ジョプリン得能(G, Key)、Be(G)、RYO-J(Dr)、MARI(Dance, Per)、MINAKO(Dance)の9名。