ナタリー PowerPush - チュール
2ndシングル「思想電車」が描く故郷・北海道と東京への思い
今年2月にシングル「見てみてよ」でメジャーデビューを果たしたチュール。酒井由里絵(Vo,B)の紡ぎ出す独創的な歌詞と、その世界観を具現化する重松謙太(G)の鮮やかな音──その両者が溶け合った"やさしいうた"が、チュールの持ち味として注目を集めている。
ナタリー2回目の登場となる今回は、6月9日リリースの2ndシングル「思想電車」の制作秘話とともに、約1年が経過した東京生活についても語ってもらった。北海道から東京に移り住んだ彼らの思いや、そこから生まれた楽曲は、純粋で素朴で、忘れていた何かに気付かせてくれることだろう。
取材・文/川倉由起子
最近やっと「東京人になれた」って思ってます
──メジャーデビュー以降、お2人の音楽活動や東京での生活に変化はありましたか?
酒井由里絵 東京に住んでちょうど1年になるんですが、最近になってやっと「東京人になれた」って感じがしてます(笑)。最初は慣れなくて生活のペースもつかめなかったんですが、その中でも自分らしさを取り戻せてきたというか、気持ちがラクになってきましたね。
──当初は戸惑いも大きかったんですか?
酒井 そうですね。最初は自分がよそ者なんだって気がして、いつでも札幌に帰りたいと思ってたんです。でも、だんだん東京の生活も慣れてきて、今はすごく楽しいですね。
重松謙太 僕は最初の頃と印象はさほど変わってなくて。なんとなく来たときから「こういう感じが続くんだろうな」っていう気がしてたんですよね。ただ、これからどんどん暑くなっていくので、北海道みたいに涼しくなればいいのにって(笑)。
酒井 あははは、それはなんないよ(笑)。
──酒井さんの軽妙なツッコミも前回同様ですね(笑)。
自然と「電車の曲にしたいね」って話になった
──今回のシングルに収録の3曲は、北海道から東京に移り住んだお2人ならではの心の風景が描かれていると思ったんですよ。
酒井 そうですね。
──まず「思想電車」は、どんなところから生まれた曲なんですか?
酒井 これは北海道時代に、楽曲のイントロになっているギターのリフをまず謙太が持ってきて。で、当時いたもう1人のメンバーと3人で聴いて、自然と「電車の曲にしたいね」って話になったんです。「ここは窓を開けて叫んでいる感じ」とかいろいろな場面を想像していって、その上にメロディーと歌詞を付けていきましたね。
──でも、なぜ電車というキーワードが浮かんだんでしょう?
酒井 最初に持ってきたときから謙太が「これ、電車っぽくない?」って言ってて。私自身も電車に乗る時間がすごく好きだったので、そのイメージは共感できると思ったし、そこはすんなりと決定した感じでしたね。
──確かにイントロのリフ、いい感じでウトウトしちゃいそうですよね(笑)。
酒井 そうなんです。私もあれを聴いたとき、なんだか無人駅に1人で立ってる様子を想像してしまって。イメージもすぐに膨らんだので、歌詞も書きやすかったんです。
チュール
酒井由里絵(Vo,B)、重松謙太(G)による2ピースバンド。2003年、高校生同士の2人を中心に北海道で結成。柔らかくも力強い意志を感じさせる歌詞と、酒井の透明感あふれるボーカル、おおらかなサウンドで徐々に注目を集める。ライブ会場限定で発売した3曲入りシングル「Train」は500枚以上を売り上げ、昨年4月に札幌cube gardenで行われたワンマンライブも大成功のうちに終了。その後活動拠点を東京に移し、2010年2月、シングル「見てみてよ」でメジャーデビュー。