ナタリー PowerPush - チュール

2ndシングル「思想電車」が描く故郷・北海道と東京への思い

「思想電車」を東京に置き換えるなら井の頭線

──1曲の中で、サウンドが徐々に軽快でアップテンポになっていく変化が面白いですし、それに伴って歌詞の主人公の気持ちもだんだん上がっていく感じですよね。

酒井 これは電車の中から見た風景ですが、その道程は人生に置き替えられるというか、今の自分とすごく似てるなって思ってて。

──電車の旅とも言えるし、人生の旅とも言える?

酒井 そうです。例えば北海道でこの曲を作っていたときは、まさか東京に行くなんて思ってもなかった時期で。でもこうして東京に来たからこそ、家族や地元の友人への感謝というか、昔の思い出を忘れたくないって気持ちを表現したいというのはありましたね。

──ちなみに、この曲で描かれている電車を東京の電車に置き換えるとしたら、どの路線になりますかね?

酒井 うーん、地下鉄ではないから井の頭線あたりですかね。平和な感じがするので、すごく好きなんです。

重松 でも理想はボックス席だよね。窓が開けられるやつ。

酒井 うん! 私、最初に東京へ来たとき、どうしてボックス席がないんだろう?って思いましたもん。横1列のシートは北海道の地下鉄のイメージなので、こっちの横1列の車両はすべて地下鉄だと思って乗ってました(笑)。

バンド形態は大事だけど、一番大事にするべきはやっぱり曲

──レコーディングでは改めて録り直したんですよね?

酒井 はい。北海道にいたときに一度レコーディングをしていて、その後、東京に来てもう一度録って。今回のシングル用に録り直したのが3回目になるんですが、だんだん楽曲を客観的に見れたり、細かいところにまで気がいくようになりました。白根賢一さん(GREAT3)がドラムを叩いてくださったんですが、ライブを何度か一緒にやったあとのレコーディングだったので、ライブ感が出てるというか、仲の良い感じが伝わっているかなって思います。

──1回目、2回目とはだいぶ違う印象になったんですか?

重松 そうだと思います。やっぱりドラムが変わるのは最初こそ少し不安だったんですけど、レコーディングでは白根さんがすごくいい提案をしてくれたり、より良い方向に持っていってくれて。

酒井 以前は「ドラムがいないってバンドとしてどうなんだろう?」と思ったこともあったんですが、それってすごく小さいことだったんだって最近感じたんです。いろいろなドラマーの方と合わせることで「この曲がこんな感じにもなるんだ!」って気付けたりすることが本当に多いので。チュールにとってバンド形態は大事だけど、一番大事にするべきはやっぱり曲なんだなって思いましたね。

──ちなみに「思想電車」は、人気アニメ「おおきく振りかぶって~夏の大会編~」のエンディング主題歌になっていますが。

酒井 はい。いろんな方に聴いてもらえる機会が増えるのは本当にうれしいです。なんか、子供にドレスを着せてステージに立たせてあげた感じなんですよ。

──大型タイアップのことを、そう表現するんですね(笑)。でもそれ、すごく的を射てて面白いです。

酒井 アニメで流れてるところを見て、感動しちゃいましたもん。

重松 2人して「おおーっ!」って感じだったよね(笑)。

2ndシングル「思想電車」 / 2010年6月9日発売 / 1223円(税込) / Ki/oon Records / KSCL-1579

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CD収録曲
  1. 思想電車
  2. それが大人ってもんなのか
  3. ママのうた
チュール

酒井由里絵(Vo,B)、重松謙太(G)による2ピースバンド。2003年、高校生同士の2人を中心に北海道で結成。柔らかくも力強い意志を感じさせる歌詞と、酒井の透明感あふれるボーカル、おおらかなサウンドで徐々に注目を集める。ライブ会場限定で発売した3曲入りシングル「Train」は500枚以上を売り上げ、昨年4月に札幌cube gardenで行われたワンマンライブも大成功のうちに終了。その後活動拠点を東京に移し、2010年2月、シングル「見てみてよ」でメジャーデビュー。