俺たちのも立派な「サージェント・ペパーズ」だよな
──これまでやられてきた要素が詰まっていてコンセプトアルバムのように感じました。小林さんご自身はこのアルバムのことを「サージェント・ペパー」と呼ばれているそうですね。
The Beatlesの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」はポール・マッカートニーのアイデアで、架空のバンドのショー仕立てで最初にテーマ曲があって、1曲目のタイトル曲と次の「With a Little Help from My Friends」まではコンセプトに沿ってるんだけど、3曲目の「Lucy in the Sky with Diamonds」以降は自分勝手にやってる曲ばかりなんです。最後に「再び、我々はサージェント・ペパーでした、皆さんどうでしたか」って挨拶して締める。それでトータルアルバムみたいにしているじゃない? あれがトータルアルバムの最高峰かって言ったら違って、僕はThe Whoの「Tommy」とかPink Floydの「The Wall」のほうがよくできていると思うんだけど。そういう意味でいくと、俺たちのも立派な「サージェント・ペパーズ」だよなって勝手に言ってるだけなんです(笑)。だからお寺で2人のじいさんの会話から始まって、終わりはああいう感じにして。
──The Beatles関連だと今回のアルバムには「STRAWBERRY FIELDS」という曲もありますね。
あれも最初はホームレスの人の曲だったんです。「真っ赤な真っ赤な血が流れ」っていうのは、自分の血を売って最後は自分のブルーハウスへ帰って行くっていう悲しい歌だったんですけど、あまりにも悲しいからジョン・レノンへ捧げた歌に直しちゃったんです。ちょっとジョンに悪いなあと思いながら。
──ぜひとも「ベストヒットUSA」などで小林克也さんが紹介してこられた洋楽のエッセンスを感じながら聴いてほしいですね。
そうだね。週に1回集まって作っていたから、音楽が頭の中にずっとあるんです。クインシー・ジョーンズふうに言えば「曲と一緒に暮らす」っていう感じだったんだよ。僕はクインシー・ジョーンズのインタビューを3、4回やってるんだけど、彼は自分が作った曲をカセットに入れて車の中でもどこでもずっと聴いているって言うんです。それで新しいアイデアが生まれるんだって。僕も同じように輝夫ちゃんが作った曲と暮らしていたわけです。歌詞、なんとかなんないかなあって(笑)。
──個人的に「夢」では、石井聰亙がメガホンを取った初主演映画「逆噴射家族」での小林さんの姿がオーバーラップして、胸が熱くなりました。
ああ、それはすごく好意的に聴いていただいてますね。
──資料によると「おそらくこれが最後のアルバムになると思う」と述べられていたそうですが、最後なんておっしゃらず、これからもアイデアの湧く限りナンバーワン・バンドを続けていただきたいです。
あはは!(笑) 全然最後のつもりはなくて。爪痕を残す意味で「最後の晩餐」っていうのをぜひ付けてくれませんかって僕が言っただけで、特に深い意味はないんです。そもそもレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」も英語だと「The Last Supper」。サパーって響き、軽いでしょ?(笑) 石坂敬一さんが東芝EMIのディレクター時代に名付けたPink Floydの「原子心母」なんて最たるものだよね。原題は「Atom Heart Mother」なんだよ。でも、日本人は漢字に弱いから、これは何かあるんだろうと思って売れちゃったわけで。Uriah Heepの「対自核」もそう。ジャケットが銀紙で鏡になっていて、原題は「Look At Yourself(自分を見ろ)」。英語だと本当は軽いタイトルなんだ。だから「最後の晩餐」って付けた意味もそういうふうに捉えてもらえたら。昔、銀座にいつ行っても閉店セールをやってる靴屋さんがあったけど、そういう感じ。ポール・マッカートニーはこれで最後かと言われつつ、あと何回日本に来るんだろうみたいなさ(笑)。本人はライブ大好きだから。あと、タイトルが「最後の晩餐」だとそういう面白い話ができるけど、「鯛」だとできないじゃない?
──安心しました。これから始まるツアーも小林さん、佐藤さんを筆頭に、斎藤誠さん(G)、深町栄さん(Key)、成田昭彦さん(Dr)、琢磨仁さん(B)という顔ぶれで非常に楽しみです。次回作も期待しておりますので。
はい!
ツアー情報
小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド 鯛!最後の晩餐ライブ!!
2018年3月31日(土)東京都 Billboard Live TOKYO
[1stステージ]OPEN 15:30 / START 16:30
[2ndステージ]OPEN 18:30 / START 19:30
2018年4月8日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
2018年4月9日(月)広島県 広島県民文化センターふくやま
2018年4月10日(火)愛知県 名古屋ReNY limited ※オープニングアクトあり
- 小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド
「鯛 ~最後の晩餐~」 - 2018年3月21日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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完全生産限定盤 [CD2枚組]
5940円 / VIZL-1355 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64984
- DISC 1 収録曲
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- ナムアミダブツ IN 九品仏
- The Noh Men
- LET'S MAKE LOVE ~REGGAE ONDO~
- あるパティシエの愛
- SHOWA WOMAN
- ふるえる君に ~Tears For Fears~
- FUKUYAMA
- FOOL FOR YOU ~コンチキショウ~
- 豊満な満月 ~フムフム・ヌクヌク~
- FUNKY KISS
- STRAWBERRY FIELDS
- 夢
- お茶物語
- ナミマニ
- 完全生産限定盤 DISC 2 収録曲
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小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド
Live in Nagoya 1983.10.20- ナンバーワンバンドのテーマ(Live in Nagoya 1983.10.20)
- うわさのカム・トゥ・ハワイ(Live in Nagoya 1983.10.20)
- ダイアナ(Live in Nagoya 1983.10.20)
- ジャック&ダイアン(Live in Nagoya 1983.10.20)
- 港の女(Live in Nagoya 1983.10.20)
- キャント・ゲット・イナッフ(Live in Nagoya 1983.10.20)
- 六本木のベンちゃん(Live in Nagoya 1983.10.20)
- 野球小僧(Live in Nagoya 1983.10.20)
- ダウン・アンダー(Live in Nagoya 1983.10.20)
- ジョニーの青春(Live in Nagoya 1983.10.20)
- ケンタッキーの東(Live in Nagoya 1983.10.20)
- マイ・ペギー・スー(Live in Nagoya 1983.10.20)
鯛 ~Special Bonus Tracks~
- コンニチワ・エブリバディ
- CRYING
- まもる
- DO YOU REMEMBER
- 小林克也(コバヤシカツヤ)
- 1941年3月生まれ、広島県出身。29歳でラジオのDJとしてデビューし、低く渋い声と流暢な英語で人気を博す。ラジオ番組「スネークマンショー」の構成を手がけたことをきっかけに、1976年に伊武雅人らと同名ユニットを結成。1982年には小林克也&ザ・ナンバーワン・バンドを結成し、アルバム「もも」を発表した。以降もコンスタントにリリースを重ねていたが、1993年にリリースした「ます」以降は活動休止状態に。2018年3月に25年ぶりとなるオリジナルアルバム「鯛 ~最後の晩餐~」を発表した。音楽番組「ベストヒット USA」で長年VJを務めている。