音楽ナタリー Power Push - 「KNOTFEST JAPAN 2016」
「KNOTFEST USA 2016」SiM密着レポート&MAN WITH A MISSION、Slipknotライブレポート
11月5、6日に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールにてSlipknot主催のフェス「KNOTFEST JAPAN 2016」が開催される。音楽ナタリーではこのイベントを盛り上げるため3回にわたる特集を展開中。
最終回は9月にアメリカ・カリフォルニアにて行われた「KNOTFEST USA 2016」の、大抜卓人氏(FM802)によるレポートを掲載する。レポートでは、SiMメンバーに密着し、ライブの模様はもちろん、アメリカ入りした日にはしゃぐメンバーの様子や、前日のリハーサルの様子などをつづってもらった。また同じく日本人アーティストとして出演したMAN WITH A MISSIONと、主役であるSlipknotのライブの様子もお伝えする。
取材・文 / 大抜卓人 撮影 / 半田安政[Showcase](P.1)
MAH、ヤクザに間違えられる
SiMメンバーは長旅の疲れと初めての北米へ挑む不安、期待が入り混じり緊張した面持ちでロサンゼルス空港に到着。まずは腹ごしらえとばかりに2年前の「KNOTFEST USA」でもマキシマム ザ ホルモンのメンバーが直行したハンバーガーショップ「In-N-Out Burger」へ向かう。カリフォルニアで大人気の店だけあって店内は大混雑。人種の坩堝とも言える店内の光景にメンバーも圧倒されていたが、アメリカの黒人ティーンエイジャーもMAH(Vo)のタトゥーに釘付けだったようで、MAHは「あなたは……ダンサー? だってそんなにタトゥーを入れている人は普通じゃないわ」と話しかけられていた。ちなみにMAHは空港で入国審査官に「君はジャパニーズヤクザじゃないよな?」と聞かれたそう(笑)。ハンバーガーを食した一行はようやくリラックスした表情に。ホテルへ向かう道中「HOLLYWOOD」の文字を見つけて歓喜の声を上げる姿もあった。完全に観光客と化した状態でホテルへ到着すると、その日の夜はホテルから一歩も出ず翌日のリハーサルに備えた。
リハーサルはGuns N' Rosesも練習に使っていたという、ウェストハリウッドにある赤レンガ倉庫のような建物にて。SiMがリハーサルを行った建物の奥にある一番大きなスタジオはCLUB QUATTROサイズで、ステージのみならず客席エリアまで完備されている。MAHがスタッフに手渡したセットリストには、普段フェスでは演奏されることの珍しい曲名も記され、日本のフェスならアンセムとなる「Blah Blah Blah」や「Amy」が入っていない。これについてMAHは「SNSでの海外のファンからの反応を反映しているんですよ」と説明してくれた。そこから彼らは電圧の違いや乾いた空気による振動の違いなどアメリカの特性を確認しながら、2時間におよぶリハーサルを行った。
熱狂の「KNOTFEST USA」本番
「KNOTFEST USA 2016」当日。SiMメンバーを乗せた車は片側6車線という広大なアメリカのハイウェイをひたすら走る。砂漠エリアの先に雄大な山々が見える、そんなアメリカ大陸のスケールを感じながら2時間ほどすると目的地のライブ会場へ到着。前日に同会場で「Ozzfest」が開催されていたこともあり宿泊組も多く、駐車場にはキャンピングカーが並び、その奥にはテントエリアが広がる。まるで1つの街のようだ。入場ゲートからさらに車で10分ほど進むと、SiMが出演する「NUCLEAR BLAST STAGE」のバックステージに到着。バンド1組ずつに白いキャンピングカーの楽屋が与えられ、中にはトイレもエアコンも用意されていた。さらに会場内にはステージのほか、簡易のメリーゴーラウンドやジェットコースター、パフォーマーのステージとなるテント、さらにモンスタートラックのレース会場などが見受けられ、ライブ以外のエンタテインメント性も満載だった。
そしていよいよ本番。「誰も俺たちのことなんて知らないと思うし、新人バンドだと思って挑みます」と意気込んでいた彼らは、「Get Up, Get Up」でライブをスタートさせる。最前列を厳しい目で見張っていた強面のセキュリティスタッフが体を揺らし、フロアにも続々と人が集まってきた。
日本でも人気の「MAKE ME DEAD!」の中盤では、気が付けば100人以上の観衆が彼らの音楽に拳を上げ、曲が終わると発音のいい「SiM!!」という歓声が飛び交っていた。MAHはマイクを握りしめオーディエンス1人ひとりに語りかけるように流暢な英語で語り始める。「アメリカでライブするまで12年もかかっちまったよ。でも長年の夢だったこのステージも、今まさにお前らの目の前で、俺の足跡となり、そしてただの記憶に変わるんだ。そして俺たちは次の目標へ向かう! 覚えておけよ、俺たちが日本から来た、SiMだ!」その言葉にアメリカのオーディエンスはじっと耳を傾けていた。
その後「WHO'S NEXT」「KiLLiNG ME」と怒涛のアンセムが続く。最後の「f.a.i.t.h」では日本のライブと同様、MAHの呼びかけによりウォールオブデスが発生。しかしながら「That's not perfect!」と相変わらずのドSなMAHのMCで仕切り直しに。ステージもフロアも一体となり、さらに場内は熱狂した。ライブ後のインタビューではメンバー全員が「自分たちの原点を思い出した」と口にした。自分たちの歩みが間違っていなかったことを再認識できたこのステージ、彼らの歴史において重要なライブとなったことだろう。
- CONTENTS INDEX
- クラウン(Slipknot)× ROTTENGRAFFTY 座談会
- クラウン(Slipknot)× Crossfaith 座談会
- 「KNOTFEST USA 2016」SiM密着レポート&MAN WITH A MISSION、Slipknotライブレポート
KNOTFEST JAPAN 2016
- 2016年11月5日(土)
千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール - <出演者>
Slipknot / Deftones / Disturbed / A Day To Remember / Hoobastank / Issues / SiM / RIZE / ROTTENGRAFFTY / OLDCODEX / coldrain / Crystal Lake
オープニングアクト:a crowd of rebellion / Survive Said The Prophet / jealkb / THE SIXTH LIE - 2016年11月6日(日)
千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール - <出演者>
Slipknot / Marilyn Manson / Lamb of God / In Flames / Anthrax / Butcher Babies / MAN WITH A MISSION / the GazettE / Crossfaith / MUCC / HER NAME IN BLOOD / CRAZY N' SANE
オープニングアクト:THE冠 / 魔法少女になり隊 / 彼女 in the display / SALTY DOG
SiM(シム)
GODRi(Dr)、SIN(B)、MAH(Vo)、SHOW-HATE(G)の4人からなる、神奈川出身のバンド。2004年11月に結成され、数度のメンバーチェンジを経て2009年に現編成となる。パンク、ハードコア、スクリーモをベースとする轟音サウンドにスカやレゲエのエッセンスを取り込んだ「レゲエパンク」サウンドで頭角を現す。ライブハウスシーンを中心に活動し、「PUNKSPRING」「ARABAKI ROCK FEST.」「京都大作戦」「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」「MONSTER baSH」「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER」「FUJI ROCK FESTIVAL」「SUMMER SONIC」などの大型フェスにも出演。さらに311、Enter Shikari、Sum41、Skindredといった海外勢の来日ツアーへの参加経験も有する。2013年4月にメジャー移籍第1弾シングル「EViLS」をリリース。同年10月にニューアルバム「PANDORA」を発表し、好セールスを記録した。2014年9月にミニアルバム「i AGAINST i」、2015年6月にアニメ「神撃のバハムート GENESIS」の主題歌「EXiSTENCE」を含むシングル「ANGELS and DEViLS」をリリース。2015年11月には東京・日本武道館にて単独ライブ「SiM THE TOUR 2015 FiNAL -ONE MAN SHOW at BUDOKAN-」を開催した。翌2016年4月に4thフルアルバム「THE BEAUTiFUL PEOPLE」を発売し、レコ発ツアーの最終公演として同年10月に神奈川・横浜アリーナにてワンマンライブを行った。