北園涼|アーティストとして新たなステージへ “船出のアルバム”で叫ぶ強い思い

スタンドマイクなんか使ったことないよ、俺

──「Ark」のミュージックビデオの撮影はいかがでしたか?

北園涼

初めて北園涼として撮ったMVだったんです。なので「どんなMVになるだろう」と、最初は不安な思いもありました。映像では俳優の自分と歌手の自分を「二面性」として表現していて、さまよっている1人の男が歌を歌っている男に出会うことで物語が展開するという作品になっているんですけど、さまよっている男の表現は完全にお芝居だから、普段やっていることに近いものがあってすんなりと入れたんです。問題は、歌っているほうの自分ですよね。もう「どうやって動けばいいんだろう?」みたいな。「スタンドマイクなんか使ったことないよ、俺」と思って(笑)。いろんなライブ映像やミュージックビデオを見て勉強しましたよ。「これカッコいいな、よしやろう!」って。あとは、ステージの上の自分みたいなものも想像しつつ、ですね。

──そうだったんですね。

これまでに出たMVにはすべて振り付けがあったんですけど、今回は完全にフリーだったので。楽しかったです。ライブ感があって。毎回違う動きになりますしね。

──でも、スタンドマイクの前での立ち姿にすごく迫力を感じました。

おお。なんと!

──とてもそんなふうに試行錯誤しているようには見えなかったです。

確かに、マイクの前に立ってからは迷いはなかったかもしれないです。「やるぞ!」という気持ちでした。

ライブに足を運んでほしいんです

──作品には全部で10曲が収録されますが、特に思い入れがある曲を挙げるなら?

やっぱり「Ark」は思い入れがありますね。アルバム制作をスタートさせて最初にレコーディングした曲でもあったので、「これから始まるんだ」という自分自身の気持ち的にリンクするところもあったりして。ほかはそうだな……「難しかったな」と思うのは「Lowlight」と「Be Bright」ですね。

──具体的にどんなところが?

「Lowlight」は、呼吸ができないんですよ(笑)。もうこれどうしたらいいの?って、ブレスにめちゃめちゃ苦労しましたね。「Be Bright」はキーがとても高くて。あと、この2曲あたりは自分がそのときに出演していた舞台の本番が終わった直後くらいに録ったので、ちょっと大変な時期でもあったんですけど……がんばって録りました!

──そうだったんですね。ちなみに、「Lowlight」は「シンガロングできる曲」と資料にも書いてあるのですが、アルバムを作っていくうえで、やっぱりライブのことは意識していた?

北園涼

いやあ、頭に入れてました。レコーディング中も「ここ、みんなで歌いたいですね」とかスタッフさんと話したりして。ライブが楽しいのが一番かなと思っていますからね。自分が音楽に惹かれたのがライブだったというのもあるし。音源を聴くだけじゃなくて、ライブに足を運んでほしいんです。実際アルバムリリースのあとにすぐライブを開くことも決まっていますから、そこで結果を出してお客さんを引っ張っていかないとな、とも思っています。「これから俺はこういう道を歩むんだぞ」という道しるべにもなるので、そういう思いからもアルバムの曲選びにはこだわりましたね。

──リード曲のあと、3曲目に収められた「Long way to Go」は2月に発表された、北園さんの歌手デビュー曲です。

そうですね。音楽活動を始める自分と一緒に、ファンの方も動き出してもらえたらと思って歌わせてもらいましたけど、この曲も“パワー”ですね。ライブで盛り上がるような曲がいいなと思っていたので、「Wow wow wow」や「Yeah!」みたいな、シンガロングできるような要素も入っています。

──歌手デビューしてこの曲を歌ったとき、それまでの自分の歌と違いを感じたようなことはありましたか?

そうですね、感覚がかなり違いました。役を背負っているときはクセを出さないようにしていますけど、この曲は本当に自分のやりたいように歌わせてもらったので。そこの差は少なからずありましたね。

──5曲目には、全編英語詞の「Hero」も収録されていますが、こちらはいかがでしたか?

英語詞に関しては、そんなに抵抗なく歌えたと思います。なんならこっちのほうが歌いやすい感覚もあったりして。

──そうなんですね。

日本語だと、言葉というか文字が1つひとつ粒立っちゃうような感覚が僕の中にあって。文字ではなくて言葉を意識しつつ、粒立ちを“ならす”作業ってなかなか難しいなと思うんですけど、英語の歌詞だとそれがわりとスムーズにできる感覚があるんですよ。音の流れ方というか。

──そして、ラストの「キミのそばで」は、アルバムの中で唯一のラブソングです。

そうですね。この曲は僕の中で、一番文章の流れを意識して歌えたなという印象があります。あと、またライブの話になっちゃうんですけど、ライブでもこういう曲で緩急を付けられたらいいなとイメージしています。「キミのそばで」、すごく好きな曲で。最近はこのアルバムの曲ばっかり聴いてるんですけど、「キミのそばで」は何度聴いてもジーンと来るんです(笑)。自分の経験ってわけじゃないけど情景が浮かんできますし、「素敵な曲だな」と思っています。