北園涼が1stアルバム「Ark」をリリースした。
ミュージカル「刀剣乱舞」の小狐丸役など、舞台を中心とした俳優活動で活躍する北園。2月にシングル「Long way to Go」でアーティストデビューを果たした彼が初めて発表するアルバムには、「ファンと共に新しいステージへ」という彼の意思のもと、前向きなエネルギーに満ちた10曲が収められた。
アルバムのリリースを記念して、音楽ナタリーでは初となる北園へのインタビューを実施。彼が歌手活動をすることに決めた動機や1stアルバムに込めた自身の思い、見据えるこの先のビジョンなどについて、じっくりと話を聞いた。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 須田卓馬
役を通さずに、北園涼としてお客さんを沸かせたい
──北園さんは2月にシングル「Long way to Go」で歌手デビューされましたが、歌手活動をしたいという思いはずっと持っていたんですか?
役者を始めた当初は、芝居一本でやっていこうと思っていました。なんですが、ミュージカル「刀剣乱舞」(以下刀ミュ)という作品で歌を歌うようになって、「刀ミュ」では年末に「真剣乱舞祭」という大きな会場でのライブがあって。そこでお客さんの盛り上がり、音楽の力というのを肌で感じて「音楽ってすごいな」と。それが音楽活動に興味を持ったきっかけでした。
──そうだったんですね。
最初の「真剣乱舞祭 2016」を、両国国技館と大阪城ホールの2カ所でやらせてもらったんです。とても大きなホールでやらせてもらえて……圧倒されたんですよ、お客さんのパワーに。そこで、「パフォーマンスで(観客のパワーに)負けないようにしよう」と思うようになりました。そこから毎年「刀ミュ」で日本武道館やさいたまスーパーアリーナといった会場の舞台にも立たせてもらえるようになって、次第に自分の力がちゃんと出せている実感を持てるようになって。これまでは役を通してだったけど……役を通さずに、北園涼としてお客さんを沸かせたいなと思うようになっていきました。
──お芝居で歌を披露するようになるまでは、歌に対してはどういう感情を持っていましたか?
好きだったけれど、得意という感覚はなかったですね。ただ昔から音域は広いほうで、ハモリの高いパートなどを任されることも多かったんです。そういうところは強みとして持っていたかな、と思います。ミュージカルの経験を重ねる中で、歌での表現を学ぶことができました。もちろん、まだまだですけどね。
──ちなみに、歌手活動を始めることにした決定的なきっかけみたいなものはあったんですか?
「刀ミュ」のライブもそうなんですが……プライベートで、ONE OK ROCKさんのライブに行ったんです。それがものすごくカッコよくて、「自分もやりたい!」と思ったんですね。自分の背中を押してくれたというか、(歌手デビューを)決意させてくれた出来事でした。もう、衝撃だったんですよ。1人で観に行ったんですけど、どっぷりとハマってしまって。歌の力はもちろんなんですが、MCでの言葉の力もすごく強くて「あ、ここでも自分を表現できるんだ」と思った。芝居の場ではやはり役があるから自分の思いを消していますし、自分自身が伝えたいことは熱量みたいな部分での表現になってくる。北園涼個人のイベントを開いたりもしますけど、「足りていないな」という思いがあって。SNSとかもあるけれどそうじゃなくて……面と向かって伝えたほうが、自分の熱量って伝わると思うんです。なので、ワンオクさんのライブを観たときに、「これだ!」と。バチっとハマったんでしょうね。
力強いロックで夢に向かって進んでいる人たちを応援したい
──アルバムを聴かせてもらったのですが、作品を通して「北園さんには理想としている姿が明確にあるんだろうな」というようなことを感じたというか。
よかった。そうやって伝わってくれるとうれしいです。今はまだ作詞も作曲もできないですけど、その中でも自分の表現したいことはプロデューサーの方には伝えました。できるだけ力強いロックで夢に向かって進んでいる人たちを応援したいというか。自分もまだ夢を叶えてない、道の途中だから、そういった思いを歌にしたいなと思って。
──ゴリゴリのロックアルバムですよね。北園さんの思いはちゃんと形になっているんですね。
そうですね。もちろんキーも自分に合わせて作ってくれているので、歌いやすさの面でも、普段舞台で歌う曲とはまた違った感覚がありました。
──アルバムを制作するうえで、北園さんが特に強くこだわりを持ったことは?
曲選びですね。これは完全に僕の主観で選ばせてもらいました。歌詞も、何パターンかあるものから選ばせてもらった曲もあるので、かなり思いが反映されたアルバムになっているなと思います。
──アルバムタイトルはなぜ「Ark」になったのでしょう。
これは「方舟」という意味の言葉なんですが、「ファンの皆さんを新しいステージへ連れて行く」とか「夢に向かってみんなで一緒に進んでいこう」という思いを込めて、この言葉に決めました。
歌でぶちまける!
──表題曲の「Ark」は先ほどおっしゃっていたように、前進していこうという力強いメッセージが込められた曲です。
僕は鹿児島が地元なんですが、夢を志した当初、なかなか東京に出て来れなかったんです。20歳になってやっと動き出して今に至るという感じなんですけど、僕のほかにもそうやってもがいている人たちはたくさんいるだろうなと思ったんですよ。地元での問題があったりだとか、今やっていることとは別に、本当にやりたいことがあるって人もいるだろうし。みんながみんなやりたいことをできているわけじゃないと思っていて、僕はそういう人たちを勇気付けられるような表現をしたいんです。始めのうちはそれを役者の活動の中でやろうと思っていたんですけど、音楽を通しても強く伝えられたらと思って。この曲には特に、そんなメッセージが込められていると思います。僕自身も励まされる感じがあって。
──北園さんが表現活動をするうえで抱えている思いを叫んでいるわけですね。
歌でぶちまける!っていう。あはははは(笑)。ホントに“叫んでる”って感じです。自分の思いはまっすぐに乗せられていると思います。
──レコーディングで意識したことはありますか?
パワーですね。技術をすごく持っているわけじゃないので、ひたすら「気持ちとパワーで伝えられたら」と思ってレコーディングしました。あとはこの先のライブのことを考えながら歌っていましたね。
──では、歌詞の中で「自分と重なるな」と共感するような部分はありましたか?
たくさんありますよ! 「Ark」はほとんどそうかな。「叶えたい願いを その胸に灯したままで 舞い上がれ 僕らで掴む世界はこの先だよ」という部分なんかは特に、そのまんま僕の思いだなと思います。「Ark」に限らず、このアルバムには全曲に僕自身と重なる思いがあるなと思います。
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スタンドマイクなんか使ったことないよ、俺