音楽ナタリー Power Push - リミックスアルバム「加山雄三の新世界」発売記念特集

加山雄三×PUNPEE×コムアイ(水曜日のカンパネラ)

異才たちの歳の差トーク

今年4月に80歳を迎え、音楽活動だけでも57年目を迎える加山雄三は、日本の歌謡曲 / ポップスシーンの中でまさに“大御所”という言葉がふさわしい。そんな彼の代表曲8曲を、スチャダラパーやECD、RHYMESTER、サイプレス上野といったヒップホップアーティストが中心となって再構築したアルバムが「加山雄三の新世界」だ。

このアルバムが、いわゆるサウンドにのみ手を加えたシンプルなリミックスアルバムと一線を画しているのは、加山の声やサウンドを素材として“料理”するだけで終わっていないところだ。参加アーティストたちはリミックスに自身のラップや歌を乗せることで、オリジナル楽曲に込められた世界観やメッセージに対して、時に寄り添い、時に反発し、時には自分の世界を塗り込め、新たな彩りをそこに加えている。その意味でも今作は“新世界”を提示する、リミックスというよりは“リビルド”といった表現がふさわしいチャレンジングな作品になっている。そしてそのチャレンジは、過去に加山が楽曲の中にサイケやボサノバなど、当時においては新奇的なアプローチを展開してきたチャレンジ精神ともつながっているだろう。

今回の特集では加山に加えて、「お嫁においで2015 feat. PUNPEE」を制作したPUNPEE、「海 その愛」のリミックスを手がけた水曜日のカンパネラのコムアイを迎えて、3人にこのアルバムに対する思いを語ってもらった。

取材・文 / 高木“JET”晋一郎 撮影 / 小原泰広

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スチャダラパーとの出会いが俺を大きく変えたね

──今回の収録曲の中では、THE King ALL STARSのアルバム「ROCK FEST.」においてスチャダラパーが制作した「ブラック・サンド・ビーチ~エレキだんじり~」、そしてPUNPEEさんがリミックスした「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」が先行して発売されていました。そこでPUNPEEさんに「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」を制作した経緯から教えていただければと思います。

PUNPEE 長野の音楽フェス「りんご音楽祭」の後夜祭に出演したときに、「おまえのDJは全然イケてねえ! お前の適当なスタイルが気に食わねえ!」って言ってきた奴がいたんですけど、それが「加山雄三の新世界」の仕掛け人の1人になったカレー屋まーくんで。彼が加山さんの裏方チームとつながってて、加山さんサイドが新しいことをしたいと計画してるときに「リミックスしてラップを乗せたらどうか」という話になったみたいで、僕に話がきたんですよね。

──因縁をつけられたのがキッカケと(笑)。

左から加山雄三、コムアイ、PUNPEE。

PUNPEE カレー屋まーくんとも今は仲よくなりました(笑)。

──加山さんはできあがった「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」を聴いた感触はいかがでしたか?

加山雄三 いい曲だったよ。やっぱり原曲が素晴らしかったのかなあと(笑)。

PUNPEE (笑)。

加山 それは冗談だけど、あんなにうまいこと手を加えてくれてさ、全然新しくなっちゃうから、すごいもんだなと。

PUNPEE 感想のお電話も直接いただいたんです。かなり緊張しましたけど。

加山 よくあんなに舌が回るな、早口で歌えるなと思ってさ。ホントに俺は呂律がダメだからね。俺にラップをやれとは誰も言わねえけどさ(笑)。

──ラップを聴かれたことはありましたか?

加山 あるさ、そりゃあ。

──失礼しました。

加山 ラップが出てきた頃に黒人のラップを聴いて、ビートとラップのリズムがズレてたりするのに、それが悔しいぐらいカッコいいのはなんでだろうと思ったんだよね。1回、映画のサントラでラップをやらされたことがあったんだけど(映画「メッセンジャー」挿入歌「Messengers Rhyme」)、どうしてもお経になっちゃって。だからその映画は2度と観る気がしないし、ラップをする気もなくなって。その映像は封印してたんけど、マネージャーが見つけてきやがって「やっぱりやらないほうがいいですね」って(笑)。

PUNPEE 探して観なきゃ(笑)。

加山 絶対にできないことも世の中にはあるんだなと思ったよ(笑)。だけど「ブラック・サンド・ビーチ~エレキだんじり~」を聴いて、日本人でもこんなにカッコよくラップできるのか、これは進化だなって思ったんだよね。だから、スチャダラパーとの出会いが俺を大きく変えたね。音楽の幅を変えてくれた。そして「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」でさらに音楽の進化を確信したね。たくさんのラッパーが参加してくれたこのアルバムを聴いて改めて思ったけど、よくあんな長い歌詞をみんな覚えられるよな。俺の歌なんて3行か4行だから(笑)。しかもその内容を心地よく相手に伝えられるのは、うらやましいと思ったよ、我々の時代にはなかったアートフォームだからね。

県会議員の謝罪会見がヒップホップアレンジされてて笑い転げたよ

コムアイ 加山さんは「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」のミュージックビデオにも、PUNPEEさんの彼女のお父さん役で出られてましたね。

加山 観たんだ、あれ。

コムアイ 観ましたよー。もし彼女のお父さんが加山さんだったら、どういう服装で行ったらいいのか、どういう応対したらいいのか、優しいとか怖いとかそんなこと関係なく、正解がわからないですよね、たぶん(笑)。でも、MVの出演のオファーを聞いたときって……。

加山雄三

加山 もう二つ返事で「OK!」だったよ。新鮮な気持ちでなんでもやろうって思ってるし、若い子から求められるのがうれしいからさ。

コムアイ それがすごいなー。そんなふうに考えられるなんて。

加山 俺は同世代と話しても話が全然通じない人間だから、若い奴と話してるほうが楽しいんだよ。それに、音楽ってのは時間を超える、時代を超える、国籍を超えるんだ。「ボーダー」を超えるのが、音楽の一番の役割だと思ってるんだけど、こういう孫みたいな世代の人たちが、俺の曲を通してそれを形にしてくれて、しかも様になって、YouTubeのアクセス数もいいんなら(笑)、本当にうれしいよ。

──YouTubeのアクセスも気になりますか。

加山 もちろんYouTubeも観てるよ。前に泣きながら謝罪会見した県会議員がいたじゃない。あの会見の動画が次の日に編集されて、ヒップホップアレンジみたいになってYouTubeに上がってるのを見て、笑い転げたよ。

──YouTubeに上がってるMAD動画もご覧になるんですか!

加山 笑ったもん! 面白えなーって。それに、今はこういう可能性も広がってるんだなって感心したよ。

V.A.「加山雄三の新世界」 2017年3月8日発売 / 2500円 / ドリーミュージック / MUCD-1380
「加山雄三の新世界」
収録曲
  1. お嫁においで 2015 feat. PUNPEE
  2. 蒼い星くず feat. ももいろクローバーZ×サイプレス上野とロベルト吉野×Dorian
  3. 夜空の星 feat. KAKATO×川辺ヒロシ
  4. ブラック・サンド・ビーチ~エレキだんじり~ feat. スチャダラパー
  5. 旅人よ feat. RHYMESTER
  6. 夕陽は赤く(yah-man version)feat. RITTO×ALTZ
  7. 海 その愛 feat. 水曜日のカンパネラ
  8. 君といつまでも(Together Forever Mix)feat. ECD×DJ Mitsu The Beats
加山雄三(カヤマユウゾウ)
加山雄三

1937年、神奈川県横浜市生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、1960年に東宝と専属契約を結び芸能界入りする。1961年7月に主演映画「若大将」シリーズがスタートし、挿入歌「夜の太陽」で歌手デビュー。1966年にシングル「君といつまでも」が大ヒットを記録し、その後も多数のヒット曲を発表する。弾厚作名義で作曲家としても活躍し、自身の楽曲のほか、日本テレビ系「24時間テレビ『愛は地球を救う』」のテーマソング「サライ」などの作曲を担当。2013年に宮城で開催された野外フェス「ARABAKI ROCK ROCK FEST.2013」への出演をきっかけに翌2014年に、キヨサク(MONGOL800)、佐藤タイジ(シアターブルック)、名越由貴夫(Co/SS/gZ)、古市コータロー(THE COLLECTORS)、ウエノコウジ(the HIATUS)、武藤昭平(勝手にしやがれ)、タブゾンビ(SOIL & "PIMP" SESSIONS)、高野勲、山本健太、スチャダラパーと共にロックバンド・THE King ALL STARSを結成。同年に加山自身の最後の全国ツアーとして「若大将EXPO ~夢に向かって いま~」を47都道府県で行った。4月21日には生誕80年を記念して東京・東京国際フォーラム ホールAで一夜限りのスペシャルライブを開催する。

PUNPEE(パンピー)
PUNPEE

東京都板橋区在住のラッパー / トラックメーカー。2006年に「ULTIMATE MC BATTLE 2006」東京大会で優勝し、翌2007年に弟の5lack、同級生のGAPPERと共にPSGを結成する。2009年10月にPSGとしてデビューアルバム「David」を発表し各方面で話題に。2014年にはPUNPEE単独で清涼飲料水「レッドブル」のCMソングやTBS系「水曜日のダウンタウン」の音楽を手がけ、お茶の間にもその存在感を示すようになる。2015年7月に発売されたRHYMESTERのアルバム「Bitter, Sweet & Beautiful」ではプロデューサーとして5曲、フィーチャリングゲストとして2曲に参加。2017年1月には宇多田ヒカルの「光」をPUNPEEがリミックスした楽曲「光(Ray Of Hope MIX)」が配信リリースされ、iTunes Storeの全米チャートで日本人アーティスト最高位となる2位を記録した。

水曜日のカンパネラ(スイヨウビノカンパネラ)
水曜日のカンパネラ

水曜日のカンパネラ 主演・歌唱担当のコムアイと、作曲・編曲担当のケンモチヒデフミ、それ以外担当のDir.Fからなる音楽ユニット。2012年夏にデモ音源「オズ」と「空海」をYouTubeにて公開し、2013年3月に東京・下北沢ERAにて初ライブを実施した。ライブではコムアイのみがステージに立ち、彼女の趣味の1つである“鹿の解体”を行うなどの個性的なパフォーマンスで注目される。2015年には「ヤフオク!」のテレビCMにコムアイが出演。同年11月にはCMでオンエアされた楽曲「ツイッギー」を含むアルバム「ジパング」をリリースし、音楽誌の年間ベストアルバムに選出されるなど大きな話題を呼ぶ。2016年3月、アメリカ・テキサス州オースティンにて開催された「SXSW 2016」でライブを行い、ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル・Atlantic Japanからメジャーデビューすることを発表。同年6月にEP「UMA」、2017年2月にフルアルバム「SUPERMAN」をリリースした。2017年3月8日には初の東京・日本武道館公演「八角宇宙」を開催。