柏木由紀×渡辺淳之介 |柏木由紀と渡辺淳之介が初タッグ!2人の馴れ初めや“WACK柏木”の展望、秋元康との緊張エピソードを吉田豪が聞く

AKB48とBiSに見る共通点は“過酷”

──思えば、ボクは旧BiSのことを「報われないAKB」みたいな言い方をしてたんですよ。

柏木 えー!

──しんどさは変わらないくらいなのに報われる分が少なくて。それが今、渡辺さんが柏木さんをプロデュースするまでになったのは感慨深いんですよね。

渡辺 そうですよね。柏木さんには「TOKYO SPEAKEASY」のときにもお話したんですけど、映画「少女たちは傷つきながら、夢を見る」(2012年に公開されたAKB48のドキュメンタリー映画「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」)が大ヒットしたのがBiSを始めたちょっとあとくらいだったんですよ。で、あのときになんかよくわかんないけど観始めた瞬間から涙が止まらなくて。本当に泣いたんですよ。当時、彼女とその映画を観に行ったんですけど、当時の彼女とかは俺が柏木さん好きなのも知ってたんで、「こいつなんか柏木を見て泣いてんぞ、キモい」みたいなそういう感じだったと思うんですよ。それも含めてですけど、過酷な文化というか、過酷が流行った時代だったと思うんですよね。だから秋元さんには影響を受けてるというか。

──そこだけ継承しちゃった感じというか(笑)。

渡辺 ホントに(笑)。突き詰めてしまったなって。

プロデュースプランは段階を踏んで……

──柏木さんとしては、こうやって外の人と音楽をやるのは新鮮なわけですよね。

柏木由紀

柏木 そうですね。もうグループでの活動がめちゃくちゃ長いので、なかなか新しい環境とか新しいチャレンジをするってことがほぼなくなっていて、すごく刺激は受けますね。なんだろう、大変なことはあんまりないかも、意外と。とりあえずなんでもやろうという気持ちはあるので。

──単純にいいニュースだと僕は本当に思ったんですよ。柏木さんがこのキャリア、この年齢で、渡辺さんのプロデュースでこういう曲を出すっていうのは、素直に推せるし面白いっていう。

柏木 わあ、うれしい。この活動が今後どう広がるかっていうのは気になります。ファンの方はもちろんうれしいと思うんですけど、もう1段階超えたリスナー層に何か感じてもらえるまで届けたいなって思いはありますね。

──渡辺さんは何か企んでいたりはするんですか?

渡辺 いろいろご提案はさせていただいております。なんですけど、記者会見をやらせていただいて、ネットの反響を見たときにこんなに盛り上がるんだなと。もっと批判的な意見がAKBファンの方たちからあるのかなと思ったんですけど。何よりすごいなと思ったのは、とにかく誰がプロデュースしようが関係なくて、柏木さんがシングルを出すことにみんなが素直に喜んでいたから。そこまで待たれていたのが、すごいなと思ったので。本当はもうちょっとぶっちゃけ変なことしてもいいかなって思ってたことは実際あったんですけど、ストレートに出して本当によかったなって。

柏木 ああ、よかった!

──もうちょっとふざけるプランもあったんですね(笑)。

渡辺 考えてはいたんですけど、やらなくて本当によかったなって思いました。やっぱり段階を踏まないと。本当に初めてじゃないですか。とりあえず、この情報に関して言えば全然批判されていない気がしているので。

柏木 確かに。

渡辺 何人かは「近付くな!」って人はいたんですけど。

柏木 誰でも言う人はいますから。

──渡辺さんが柏木ファンであることがバレたら、「近付くな」がさらに増える可能性もありますよね。

渡辺 ありますね。

柏木 もういないですよ、そんなこと言うファンは。でも、WACKのファンの方もめちゃくちゃ優しくて。Twitterで「柏木由紀とやるんだ、絶対聴こう」みたいな反応をいただいて、アイコンを見るとWACKアイドルの方の写真とかで。意外とお互い勝手に警戒してるだけなのかな。

──遠い世界の存在として。

柏木 そうそう。ここが手を組んじゃえばズルいというか。私がここの外にいたら、そこは組まないでくれよと思うなって。でも、意外と手を組んだほうがまた新しいものが生まれて、これはもうちょっと面白いものにしていきたいなって思いました。

──渡辺さんのプランがこの先どっちの方向に行くのか。

渡辺淳之介

渡辺 シングルで3曲プロデュースさせていただいて、もっともっと曲を作らせてもらいたいなと正直に思いました。

柏木 うれしい。私もそう思います。

渡辺 歌が本当によかったので、違う面を引き出せるという部分で、シンガーとしてももっと可能性があると思いました。WACKの変なところではなくて、ちゃんと音楽を感じて、受け止めていただいている部分でがんばりたいなと思いつつ、せっかくなんで変なこともしたいなと。

──最初にちゃんとしたことをやるってことを学んだんですね。

渡辺 そうですね。よかったです。これでまた変なことさせてたら、吉田豪さんからDMが来る。

柏木 はははは(笑)。

──「今、これはまずいですよ、そういう時代じゃないですよ」って(笑)。

渡辺 だいたいヤバいときはDMをくれるんです。

柏木 ああ、そうなんだー。

──本当にヤバいとき、たまに渡辺さんからSOSというか、「これ大丈夫ですかね」みたいなのが来たりもしますね。

柏木 へえ、面白い。

渡辺 まあ客観的にいろんなものを見て判断してくれるところがあるので。でもDMすると表で書かれる可能性もあるので。

──「渡辺さんが最近こんなこと言ってるんですよ」って。

柏木 わあ。怖い。

──この組み合わせでこれが出たのであれば、バッチリだと思いますよ。

渡辺 そうですね。すごく温かかったので、うれしいなと思いますね。

──皆さんが警戒するとしたらこれからってことですね。

柏木 いや、ないですよ(笑)。

渡辺 何かあるかもしれないですね。

──はははは(笑)。過酷なMVとかね。

柏木 ああ確かに。まだこんなんじゃないとは思っているので。

渡辺 いや、でも「CAN YOU WALK WITH ME??」のMV撮影もけっこう過酷でしたよ。現場は寒かったですし。

柏木 まあまあ冬の外は寒かった。撮影では強風やら雨やらの演出もあって。

渡辺 僕たちはけっこうビビりながら「大丈夫かな……柏木さん帰っちゃわないかな?」みたいな。

柏木 イメージひどいんですけど! 私がわがまま言うみたいな(笑)。

渡辺 そうなって然るべきだとは思うので。MVの撮影現場では本当に感動して、終わったあとにスタッフと帰ったんですけど、その途中で「いやー応援しなきゃなー、やっぱり」って。

──柏木さんががんばってたから(笑)。

渡辺 「好きになっちゃったよねー」みたいな(笑)。帰りはその会話しかなかったです。

──渡辺さんのグループの子のほうが大変な目に遭ってがんばってますよ!

柏木 そりゃそうですよ、本当に。

渡辺 まあそうですね。でもあれは世間から注目してもらえないからがんばってるんです。

──柏木さんは最初から見てもらえる存在で、そんなにがんばらなくてもいいのにがんばってくれて。

渡辺 そうなんですよ。うれしかったです。

柏木 いやいやいや。私も本当にうれしかったです。

──この先も楽しみになってきました。

柏木 この先に何があるか……。

柏木由紀から見たBiSH

──ちなみに柏木さんはBiSHをどういうふうに見ていました?

柏木由紀

柏木 もちろん存在は知っていますし、音楽番組以外でいっぱい見るようになりましたよね。

──わかりやすく売れてきた。しかもいわゆる大手じゃない事務所で。

柏木 そうですね。やっぱりAKB48とは曲も衣装もコンセプトも全然違うから、すごいなと思うのと、そういうアイドルがいっぱい出てくることはAKBにとってもいいことだと思います。王道ばかりを行かれると困るけど、そうじゃないアイドルが人気になったり、注目されたりすることで、結局アイドルという文化そのものが広がるじゃないですか。BiSHに関しては一般層を引っ張ってきているグループという印象でした。羨ましいなっていうところもありつつ、こういうグループがいるのはアイドル界としてはすごくいいことだなあと思ってました。

渡辺 僕はまぐれ当たりでしかなかったんで。不思議な偶然がいろいろ重なって、躍り出たというか。そういう人たちがいなかったんで、隙間にスポッと入ったみたいなのがあったのかなって。

──ああいう曲調が当時あまりなかったというのと、あれくらい追い込んだり、話題作りをするところもあまりなかったりで。

渡辺 そうですね。そういう意味でいうと、僕たちがラッキーだったのは、例えばテレビとかで扱ってもらえるようなトピックを昔から積み重ねてやってきたというか。ちょっとずつ上がっていけば、扱ってもらいやすいことを。

柏木 うんうん。

渡辺 別にそこまで考えてやってきたわけではないんですけど、準備はできてたんだなって。テレビとかに出させていただく中での爆発点があったのかなとは思っています。本来、そういうトピックみたいなものは必要ないので。這い上がってきたインディーズ代表として、界隈に夢を与えられたかなと思っています。もちろんまだまだですけど。

柏木 今後はそっちを目指す人が増えるんだろうなって思います。王道じゃ難しいというか、限界があるってなんとなくわかってきて。だからこそ、どうにか「私はアイドルを続けたい」ということもあるんです。現状に抗いたいというか。そうしたいという中で、こういうアクセントも必要なので、やっぱり今回はすごくいい機会だと思います。

王道アイドルから新たなステージへ

──柏木さん自身はそんなに王道にこだわらなくなってきた部分もありますよね?

柏木 ありますね、確かに。やっぱり若い子、新しいものがどんどん出てきて、ずっとそこと戦うのは難しいと思うので。逆に今じゃないとできないこととか、もうファンの顔色を伺わなくていいこととか(笑)、そういう面でやりたいことをチャレンジしたいなって。

──やれることは充分やってきたので、そろそろ冒険も許してください、と。

柏木 そうですね。発信側に回りたいというか。需要に対応してたものを、そろそろこっちが発信するものをいいと思ってくれる人が応援してくれる形になったらいいなと思います。

──AKB48で、そういう自我は出さずにいたんですね。

柏木 けっこうそうですね。AKBではとにかくファンが喜ぶこと、どうやったらファンが付くか、そういう感じでしたね。やりたいことと求められることのどっちを優先するかだったら、とにかく求められることを優先してきてたので、徐々にやりたいことを優先していきたいなあって。

──黒髪じゃなくてもいいだろうみたいなところから始まり。

柏木 はい(笑)。年齢もそうだし、別に言われたことに対応したくなければ対応しなくてもいいと思うし(笑)。無理なくストレスなくアイドル活動を続けたいですね。

──渡辺さんに出会うべくして出会うタイミングだったんでしょうね。

柏木 はい。

渡辺 偶然って重なるもんで、なんかそういうことだといいですね、本当に。

柏木 そうですね。

渡辺 もう怖くて、いろんな人の反応が(笑)。

一同 ははははは(笑)。

──この記事はそんなに怒られないと思いますよ。

渡辺 何しても怒られてきたので。

──怒られがちな人ではありますからね。

柏木 あーそうなんだ。

──目立つところに出ると怒られてたっていう。

渡辺 目立っちゃいけないんですよ。

柏木 ははは(笑)。

──以上です。

渡辺 本当に自信作ですよ。

柏木 めちゃくちゃいい曲。

左から吉田豪、柏木由紀、渡辺淳之介。