柏木由紀×渡辺淳之介|柏木由紀と渡辺淳之介が初タッグ!2人の馴れ初めや“WACK柏木”の展望、秋元康との緊張エピソードを吉田豪が聞く

柏木由紀(AKB48)が3月3日にWACK代表・渡辺淳之介プロデュースによるソロシングル「CAN YOU WALK WITH ME??」をリリースした。

柏木は2007年にAKB48メンバーとしてデビューして以来、約14年のキャリアを持つ国民的アイドル。ファンを大切にしながら“しぶとかわいい”アイドル人生を歩んでおり、今年7月には30歳を迎える。ソロCDを発表するのは、2013年発表の2ndシングル「Birthday wedding」以来約7年5カ月ぶりのことだ。一方の渡辺は、BiSH、BiS、豆柴の大群らのプロデュースを手がける人物で、AKB48グループのような“王道”に反して、“邪道”のフィールドでそのクリエイティビティを発揮してきた。2人は2020年5月のラジオ番組で初共演した際、番組を聴いていた秋元康からの鶴の一声によってタッグを組むことになった。

そんな新作のリリースを記念して、プロインタビュアー・吉田豪が柏木と渡辺にインタビュー。お互いについてのトークや、秋元との会食時のエピソード、柏木から見た秋元と渡辺のプロデューサーとしての印象などを語ってもらった。

取材・文 / 吉田豪 撮影 / 塚原孝顕

「好きなタイプは柏木由紀」

──10年ぐらい前、旧BiS時代に渡辺さんが「好きなタイプは柏木由紀」と言っていたって情報があるんですよ。

渡辺淳之介 あはははは(笑)。

柏木由紀

柏木由紀 絶対に嘘! 本当には思ってなかったはず(笑)。私だったら波風が立たないから、ちょうどいいと思って言ったんじゃないですか?

渡辺 これ、本当はダメなんですけど……好きですね(笑)。

柏木 全然感じられないんですけど、現状(笑)。

渡辺 いい意味で言えば、こういう形で出会いたくなかったっていう。

──できれば仕事抜きで会いたかった?(笑)

渡辺 はい。

柏木 あははは(笑)。そんなタイミングないでしょ。でも、うれしい。

──渡辺さんはそんな感情を抱えたうえで、昨年5月19日放送の「TOKYO SPEAKEASY」(TOKYO FM)で柏木さんを指名したんですか?

渡辺 そうなんですよ。秋元康さんがやられているラジオ番組だったんで。

──秋元さんに指名された人が、ゲストを指名していい番組で。

渡辺 そうそう。パッと浮かんだのが柏木さんだったんで言っちゃったんですけど、そのあと訂正したんですよ。ヤバいなと思って。実際に会ったら何しゃべっていいかわかんないし(笑)。

柏木 1時間もあるし(笑)。

渡辺 緊張するし。本当はそのあと「やっぱり変えてほしい。King Gnuの井口(理)にしてくれ」と言ったんですけど、「柏木さんのOKもらっちゃったから、もう無理」って(笑)。そこからは、もう緊張の日々ですよ。

──放送の時点でもわかりやすく緊張してましたよね?

柏木 あははは(笑)。

渡辺 そうですね。失礼があっちゃいけないと思ったので。僕が黙る可能性があると思ったんで、質問事項を1枚の紙にばーって書いて持っていきましたね。

柏木 えー! 知らなかったです。

──そのせいか、いつもの渡辺さんらしくなかったんですよね。ネットニュースになりそうな余計なこととか全然言わなくて。

柏木 まったく何もなかったです。

渡辺 まあ……ちゃんと社会人なんで(笑)。

柏木 あははは(笑)。

──柏木さん、初対面の渡辺さんの印象はどうだったんですか?

柏木 話しやすくっていい人って感じ。

──いい人!

渡辺 いい人ですよ、裏では。

柏木 でも、Twitterとかで「気を付けてください」みたいなリプライがめっちゃ来てて。なんでかわからないけど、とりあえず覚悟はして行って。でも、全然そんなことなかったな。

──昔のBiSとかでの諸々は御存知でした?

柏木 知ってはいますけど、それイコール渡辺さんが変な人かはわからないじゃないですか。ちょっと話してみて、紳士って感じでした。

──紳士!

渡辺 いやいや、紳士ですよ(笑)。

──なかなか渡辺さんを形容する言葉で出てこないんですよ、紳士とかいい人って。

柏木 えー。あの初対面の1時間、紳士な人でした。

──そこでイメージよくしたのが正解で、今回のシングルにつながったんですかね?

渡辺 正解かどうかはわかんないんですけど(笑)。僕も初めて会う人たちからはすごく緊張して来られることもあって。それこそビジネスパートナーとか、お仕事させていただく方から、「最初から噛み付かれると思った」とか「ものすごい怒鳴られると思った」って話はよく聞きますけど、そんなわけないじゃないですか(笑)。

──自分が手がけているグループのメンバーとか、関係性ができてる相手にならそういうことをすることもあるけど。

渡辺 いや、メンバーたちにも噛み付いたりしないですよ!

──事務所のスタッフとか?

渡辺 ああ、そうですね。……僕も反省していることが多いです。

柏木 あっはっはっは(笑)。

左から柏木由紀、渡辺淳之介。

秋元康から突然連絡が

──そうやって紳士モードでラジオに出たら、秋元さんから放送中にメッセージが来たわけですよね。

柏木 そうですね。放送後に確認したら私にも直接連絡が来てました。「渡辺さんに曲を作ってもらおう」みたいな。私に言われてもっていう(笑)。「私に何ができるんですか?」って思ったんですけど。

──柏木さんがゴーサインを出せるわけでもないですもんね。

柏木 そうなんです。「できるならぜひ」って感じでしたけど、「柏木からも言ってみて」と。

渡辺 まずびっくりしたのが放送中に番組のプロデューサーの方とかに連絡があったみたいで、生放送だったんで「あ、番組を聴いてるんだ!」と。マジでびっくりしましたね。

──ボクが元NMB48の木下百花さんと「TOKYO SPEAKEASY」に出たとき、百花さんが秋元さんの悪口をさんざん言ってたら「秋元さんが聴いてます」ってメッセージが来てて。

渡辺 わはははは(笑)。

柏木 ちゃんと聴いてるんですね(笑)。

渡辺 秋元先生はなんでも受け入れられるというか、トップオブトップなので細かいことは気にならないんだろうな。だから「好きにやればいいじゃん」っていう感じなのも、そうなんだろうなと思って。

──面白そうなこと思い付いたら即やっちゃえってタイプの人ですよね。ただ、渡辺さんって「ラストアイドル」で審査員をやったときも正直、秋元さんに刺さってなかったじゃないですか?

左から吉田豪、渡辺淳之介。

渡辺 だって、しゃべってないですもん。

──オンエアでは全部カットされてましたよね。

渡辺 はい。本当に思うんですけど、僕は“出る役”じゃないのでそこに期待されると困るというか。僕はバンドとかも過去にやっててプロデビューを夢見たことはあるんですけど。すごいと思ったのは、柏木さんとかワンマンライブで1時間とか1時間半とかステージやるわけじゃないですか。僕、絶対覚えられないんで。歌詞も踊りも絶対できないんで、本当にすごいなって思うんですよね。それは僕の会社の所属メンバーたちにも言えるんですけど。インタビューとかでも集中できないんで、30分後くらいには今日のお昼ごはんの話とか浮かんじゃう。だから尊敬してます。

──多動っぽい部分があるから。

渡辺 そうなんです。大学の授業が90分とかあったら、だいたい耐えられなくて60分くらいで出ちゃってたので。

柏木 へえ。私、けっこう周りに多いんですよ、そういう人。

──柏木さんはいつでも落ち着いてますよね。

柏木 私、何もないです。超フラットなので。

生きた心地のしなかった食事会

──秋元さんに刺さってなかったはずの渡辺さんが、こうして柏木さんのプロデューサーに抜擢されて。

柏木 秋元さんは渡辺さんのこといつも褒めてます。一緒にごはん行ったときも。

──行ったんですね、食事会。

渡辺 行きました……。味はちょっとよくわかんなかったですけど(笑)。

柏木 私も正直、生きた心地がしなかった(笑)。私は秋元さんにごはんに誘われることがほとんどないです。記憶にないぐらい、いつぶりかなあって感じで。でも、秋元さんが「ごはん行こう」って言うくらいだったんで、「あ、これ本気で考えてるな」って思ったんです。普段ごはんに行くことがないから。行ったら「やりますか?」って話じゃなくて、もうやる前提でしたよね?

渡辺 けっこう“たられば”の話をしたんですよ。「もし、僕がやるみたいなことになったとしたらこんな感じでやりたいですね」みたいな話をしてたら、一番ヤバいなと思ったのが、秋元さんからのお言葉は「“もし”とか“たられば”の話をしてるけど、もうやる前提だから」みたいな。これカットかもしれないんですけど。

柏木 いやいや大丈夫ですよ。

渡辺 「もうお願いしてるから」って(笑)。「もうしてるじゃん。やるんだよ」みたいな。彼氏彼女じゃないですけど、「好き」って言われないとわかんないみたいな状態(笑)。

柏木 あはははは(笑)。ちゃんと確認しないと。

渡辺 それまで「やるからね」とは言われてないので、そこで僕も覚悟を決めなきゃいけないんだとは思いました。どっちかというと見定められる、値踏みされるとかそういう食事会で、そこで「やっぱりなし」もあるのかなと思ってたんで。

──食事の席の態度が悪いとかで?

渡辺 そうですね。食べ方とか(笑)。

柏木 あははは(笑)。面白い。

渡辺 僕、いろいろ勉強していきましたもん。テーブルマナーとか(笑)。でもまあ食事もフレンチとかじゃなくて、自由に食べていい感じだったんでよかったです。

プロデューサーってエッチなイメージあるから

──会食で話した内容はちゃんと覚えてたんですね。

渡辺 まあ生きた心地はしなかったです(笑)。そこではどんなふうにしたいかを聞かれたのと、あとはほとんど雑談でした。

柏木由紀

柏木 あ、でも秋元さんが「歌詞を書かない」ってそのときに言ってましたね。それを聞いてびっくりしました。

渡辺 秋元さんが「歌詞を任せるよ」って。秋元さんっていつも作詞はするから、曲を任せて作詞は秋元さんなのかと思ってたんです。

柏木 そしたら、もう「全部任せるよ」って感じでしたよね。

渡辺 「君が全部書けばいいんだよ」と。え?って思いました。

柏木 大変だと思いますよね。

渡辺 あ、自分が書くんだって。秋元さんはいろんなことをよく調べていただいていて、それこそ僕のやっているグループのミュージックビデオの話も出ましたし、「よく会議とかでも話に出すんだよ」って。

柏木 あ、言ってましたね。「AKB48もこんなふうにできないのか」って会議で話題に上げると言ってました。

渡辺 ちょっと……現実がよくわからない(笑)。前から柏木さんを好きと言っていたことも含めて、僕のことを昔からよく知る友人とかからは「なんかお前、夢を叶えてるな」みたいな。

柏木 あはははは(笑)。

渡辺 業界じゃない人たちは、僕が柏木由紀のことを好きだと知っているので(笑)。しかも、嫌な話ですけどプロデューサーってそういう変なイメージあるじゃないですか。エッチなイメージとか。

柏木 ないですよ! ……え、あります?(笑)

渡辺 業界にいるとアレですけど、外から見てると……。

柏木 絶対的な権限があって……ってこと?

渡辺 そうです。コンビニマンガであるようなことを指して「なんかあった?」なんて聞かれますけど、「いや、なんもないよ」と。

柏木 そうなの? 面白い(笑)。

──こういう人だからファンの人たちも心配してたんだと思いますよ(笑)。

柏木 なるほど。でも、全然まったくそんなところない。すごく優しいです。