ナタリー PowerPush - かせきさいだぁ

アニソンはアニメファンだけのものじゃない!

「かんなぎ」に感じた引用のセンス

──「motto☆派手にね!」もテレビで観て知ったんですか?

そうです。「かんなぎ」は、アニメ自体がここ数年で観た中ではトップクラスの面白さでしたね。僕はあのアニメ、カラオケに行く回が大好きで。オープニングもヌルヌル動くし、このアニメはすごいなと。曲も、中山美穂の「派手!!!」のオマージュみたいになってて、しかもオープニングの映像がミポリンのドラマのオープニングのオマージュになってるんですよね。そのまんま。それがすごく面白いと思ったんです。僕は音楽でそういうことをやっているんだけど、アニメでも完全に同じになってきたんだなって。単純に曲もいいし、これはやらないわけにはいかないなって思いましたね。

かせきさいだぁ

──先ほどおっしゃったヒップホップ、何かの引用を重ねていく感覚を込みで面白いと思ったわけですね。

たとえば庵野秀明監督とかは、意識的に「自分にはオリジナルな部分なんかない」って、いろいろなものを組み合わせて自分らしさを作っていく感じがあるんですけど、ほかの人はそこまで考えなくてもよくなってるんですよね。若い人は特に、ミポリンのオマージュだとか言われてもわかんないですよね。「それでも別にいいじゃん。わかれば面白いだろうけど、わからなくても面白いんだから」っていう感じ。「かんなぎ」のオープニングは、そこがとてもよく出ている。

──おっしゃる通りで、今はそういう時代になってますよね。昔の、それこそ庵野さんなんかは「わかるかな?」って含みもあったんだけれども、今はわからなくてもいい。

そうですね。庵野さんのはかなりオタクじゃないとわかんないような部分も多かったですけど、これは普通の人が観てもわかる。だから、若い人に向けて作ってあるのに、僕らのようなオッサンが観ても「これは! ミポリンじゃん!」って思えるんですよね。そういう作り方は面白いなと思います。

──ではその「かんなぎ」の曲をカバーするにあたっては、どう考えましたか?

これねえ、あんまり言いたくないんですけど、ビートたけしの「抱いた腰がCHA CHA CHA」っていう曲の感じにしてあるんですよ。

──あの曲ですか! さっきまで「ここはTHE STYLE COUNCILを入れよう」と言っていた部分に、今度はビートたけしが入ってくるわけですね……。

なんでそうしたのか自分でもわかんないんですけど、でもアニソンがいいなと思うのと同時進行で、「ビートたけしってカッコいい曲が多いな」と昔から思ってて、YouTubeとかでずっと調べてたんですよ。「なるほど、これはたけし軍団か」みたいな感じで。で、何も関係ないんですけど、ミポリンのあれをやってるんだったら、俺、たけし軍団になってみようって急に思ったんですねえ。

「星間飛行」は当事者による渋谷系パロディ!?

──アルバム最後の曲「星間飛行」も近年のアニソンでは非常に流行った曲ですよね。これは?

かせきさいだぁ

それもスカパー!で「マクロスF」をやってたからなんですよ。で、何回目かの回で急に「星間飛行」が流れて、パッと聴いて「あ、これ松本隆先生の歌詞じゃないか」とすぐ気付いて。

──気付くんですか? それはすごい。

弟子なんで、気付くんです。すぐネットで歌詞を調べたら、やっぱりそうで、しかもこれはすべてを注ぎ込んで本気で書いてる歌詞だわっていうのがすぐわかりました。

──どこでわかるんですか? 雰囲気みたいなものですか?

いやもう、普通の人はこんなの書き方しないよっていう言葉遣いなんですよ。「水面が揺らぐ」「風の輪が拡がる」なんて、ほかに誰も歌詞にしない。「触れ合った指先の青い電流」のところでわかりましたね。「青い電流」で。曲も、菅野よう子さんらしくて、めちゃくちゃよかったですね。だからカバーできたらいいなと、いつも思っていたんです。そこで昔の「マクロス」でも「天使の絵の具」という主題歌でない曲をやったので、「マクロスF」も同じことをやってみたつもりなんです。

──しかし、菅野さんらしい複雑な展開もある曲ですよね。カバーにあたってはどういう方針だったのでしょうか。

これはね、もう、渋谷系のパロディにしようと思ったんですよ。なんでそんなこと思ったか、さっぱりわかんないですけど、思いついて。だからこれは「あれ? この曲って90年代にあったんじゃないの?」っていうような作りにしてるんです。

──言われてみればイントロが、Corneliusの「太陽は僕の敵」をズバリやっている感じですね。

そうなんです。サビは、カジヒデキくんがコーラスでハモって歌ってますし、全編のコーラスは真城めぐみさんがやってくれてるんです。

──それはもう、渋谷系のパロディとしてはバッチリな布陣ですね。

この顔ぶれだからこそできるパロディにしたいって思いました。今の若い人が渋谷系っぽい音楽をやってみるんじゃなくて、本当にやってた人たちが、本気でパロディを真剣に作る。オリジナル曲でやったら「うわ、まだあの人たち、ああいう曲やりたいんだ」みたいに思われちゃうかもしれないじゃないですか。だからやりにくいんですけど、今回はアニソンを好きにアレンジして遊ぶっていうコンセプトなんで楽しめるかなと思って。

ニューアルバム「かせきさいだぁのアニソング!!バケイション!」/ 2013年8月7日発売 / 2500円 / AWDR/LR2 / DDCB-12057
収録曲
  1. 10%の雨予報(H2O)
  2. 恋のB級アクション(伊藤さやか)
  3. 天使の絵の具(飯島真理)
  4. ルージュの伝言(荒井由実)
  5. ときめきトゥナイト(加茂晴美)
  6. フェアリー・ナイト(ソニア・ローザ)
  7. UNLUCKY GIRL!!(Sweety)
  8. motto☆派手にね!(戸松遥)
  9. 恋の呪文はスキトキメキトキス(伊藤さやか)
  10. 残酷な天使のテーゼ(高橋洋子)
  11. 星間飛行(中島愛)

※カッコ内はオリジナルアーティスト

加賀温泉郷野外フェス 2013

2013年9月7日(土)・8日(日)石川県 加賀市片山津温泉 柴山潟湖畔公園
※かせきさいだぁは7日に出演

SECOND ROYAL

2013年9月20日(金)京都府 京都METRO

<出演者>
LIVE: かせきさいだぁ&ハグトーンズ / カジヒデキ / Homecomings
DJ: HALFBY / Handsomeboy Technique / kikuchi(HOTEL MEXICO) / 小野真 / 小山内信介 / and more

BREADISTA!!-10th anniversary special vol.03-

2013年9月21日(土)広島県 福山Cable

<出演者>
LIVE: カジヒデキ / かせきさいだぁ & ハグトーンズ / NOEL & GALLAGHER
DJ TEAM BREADISTA!!

アニソンはじめました。~かせきさいだぁのアニソング !! バケイション ! リリース記念ライブ~

2013年9月27日(金)東京都 原宿アストロホール

<出演者>
かせきさいだぁ&ハグトーンズ(ゲストあり)

かせきさいだぁ

1994年に始動したヒップホップのソロユニット。1995年にインディーズから、翌年にメジャーからそれぞれ1stアルバム「かせきさいだぁ≡」を発表し、はっぴいえんどからの影響を感じさせる叙情的な歌詞やトラックで一躍注目を集めた。2000年代に入るとワタナベイビー(ホフディラン)とのバンド・Baby & CIDER≡、木暮晋也(HICKSVILLE)と結成したトーテムロックでの活動も開始し、さらにいとうせいこう&POMERANIANS≡にも参加。自費出版4コママンガ「ハグトン」でイラストレーターとしての才能も発揮し、年に3回のペースで個展も開催している。2009年からハグトーンズをバックバンドに迎えてかせきさいだぁ名義での音楽活動を再開。13年ぶりのソロアルバム「SOUND BURGER PLANET」を2011年に発表し、2012年にはシティポップをテーマにしたアルバム「ミスターシティポップ」、2013年8月にアニメソングカバー集「かせきさいだぁのアニソング!! バケイション!」をリリース。