単に赤とか青とかじゃなくて、何色にもなれるのが感覚ピエロ

──「振り切ったアイドルソング」だと言う「LOVE GENERAL」は、作詞の西尾さん主導でできた曲ですか？

横山　もちろん。彼の総合プロデュースです（笑）。

西尾　ハーフ尺くらいで録り溜めてた音素材の中にあったやつなんですけど、J-POP好きな僕のアンテナにずっと引っかかってて、「バンドで形にしてみようや、歌詞も俺が書くわ」って。アイドルソングっぽさもありつつ、結果的に真剣なラブソングになりましたね。

秋月　どこがや！（笑）

西尾　サウンド的には感覚ピエロのロックにキラキラした要素を加えて、いい化学変化が起きたらええなと。

横山　よどみないディレクションだったもんね。僕が1テイク目を歌ったら「そうじゃないねん。もっとなり切って！」って（笑）。

──「LOVE GENERAL」「A BANANA」と、西尾さんのカラーも今作でより見えてきた感じがします。

秋月　そうですね。ちょっとずつ僕らも進化してるのかな。

西尾　もう4人共ね、色が濃いから（笑）。

滝口　それぞれ個性の塊やもんな。お互いアウトプットし合って、感覚ピエロのサウンドにできてきたと思う。

秋月　今回たまたま滝口が歌詞を書いた曲はないけど、滝口のは濃いよなあ。

──滝口さんはどういう濃さなんですか？

横山　メンヘラでしょ。

滝口　俺、メンヘラなん!?

秋月　色で言ったら、ド紫やな。

西尾　琢登の歌詞はね、透明。

横山　あ、そうやな！

滝口　メッセージ性が強いよね。

秋月　逆に、横山のは真っ黒やな。

横山　俺も自分でそう思う（笑）。感情の赴くまま。で、西尾氏は黄色かな。

秋月　うん、オレンジ寄りって言うか、暖色系。それぞれの色がわかってきてるよな。1つのチームだけど、メンバー4人の色が合わさってバンドになってる。感覚ピエロを色で表わすなら、単に赤とか青とかじゃなくて「何色にもなれる」だと思う。結成してここまでやってきて、ようやく自分らを理解してきました。俺らのいいところって振り切れることで、本気でフザけて、本気でマジメにやって、本気でカッコよくなれるんです。

違法ダウンロードする人だって、音楽好きだと思うんですよ

──「触れてみればいいんじゃない？」は横山さん作ですが、無料ダウンロードの試みがあったうえでこうやって「CDを買う気ないんだろ？」って歌う曲が入ってるのが絶妙なシニカルさだなと。

横山　ま、今回の場合はちゃんとチケットを買っていただいてるんで、そことは別の観点ですけどね（笑）。「このタイトルで曲書いてや」って言われたの、けっこう前だよね？

秋月　そうそう。「触れてみればいいんじゃない？」ってタイトルで音源を配布しようとしたんかな。これ、感覚ピエロらしい言葉じゃないですか。ちょっとエロティックでもあるし。で、「みんなが言いたいこと言えへん中だけど、俺らは言いたい」って気持ちがかなりあるんでね。「音源をCDにする意味ってなんやろ？」って話は当時からよくしてたので、そんなモヤモヤをさらけ出しつつ、単純に批判したいだけじゃなくて、僕らなりにキャッチーに仕上げてみたのがこの曲です。違法ダウンロードする人だって、結局は音楽好きだと思うんですよ。だから「音源はいっそタダであげるから、その前に俺らにもっと触れてみれば？」的なメッセージを込めました。

横山　さっきのプレイリストの話じゃないけど、時代を反映した曲ですよね。2010年代を切り取ってるって言うか。YouTubeやMP3って単語自体、10年後には古くなるだろうと思うんですよ。でも、それでいい。こんな時代もあったなって思えたり、この曲を踏まえて10年後の今をつづった曲ができたりすれば。

──「give me」とか「A BANANA」とか、「いいんじゃない？」って歌う曲が多いですよね。そういうのって、寛容さが足りない世の中にピッタリだなと思いました。

秋月　うん。僕ら発信する側は縛られちゃダメやし、こんなことを歌う音楽があることでちょっとでも誰かの救いになったらいいですよね。何かを解決したりなんかはできないけど、聴く人の行動のヒントやきっかけにつながればうれしいかな。

滝口　その「縛られちゃダメ」っていう信念とかスタンスはアルバムでも一貫してるよね。だから「CHALLENGER」で打ち込みをガンガンやっても俺ららしくなるんじゃないの？

秋月　そうやな。「こんなに打ち込みに頼った曲をやっちゃっていいのかな」という迷いも最初こそあったけど、俺らは挑戦せんと何も始まらん。結局やってみたら「小っちゃいことで悩んでたんやな」と思いました。

横山　「CHALLENGER」は、裏テーマが「スポーツ」なんですよ。

──スポーツ？

横山　ライブのSEを自分たちで作ってるんですけど、これはその中の1つで。もともとフル尺にする予定がなかったけど「カッコいいから曲にしてみようぜ」って話になったんです。そこでキーワードとして言ってたんだよね。「スポーツ」とか「応援」とか「アディダスが似合いそう」みたいな。

秋月　1個だけ具体的やん（笑）。SEやったんで歓声のイメージが僕の中で漠然とあって、なおかつスポーツをするシチュエーションに合いそうだなと思ったんです。

──声の話で言うと、アルバムを通して横山さんの声色が本当に多彩だなと感じました。

横山　そんな何種類もないですけどね（笑）。

秋月　いや、めっちゃすごいよ、お前は！

滝口　レコーディングで聴いててもさ、ねえ？

西尾　うん、いろんな人が出てくるなあって思う。

横山　例えば「LOVE GENERAL」とか「さよなら人色」とか、レコーディングのときに「こういう主人公がいてこういう気持ちだから、こういうふうに歌ってや」って言うやん？ だからみんな、それぞれのキャラの声に聞こえてるのかな。「LOVE GENERAL」の主人公が「さよなら人色」を歌ってたらおかしいしさ。「声色は同じだけど別人みたいに感じる」というのは、がんばった甲斐がありました。

秋月　やっぱり振り切れてるんよ。「誰やねん！」ってくらい別人やもん。中途半端はダサいもんな。

西尾　うん、最大限にさらけ出すべき。