感覚ピエロが10月24日に3000枚限定でニューシングル「ありあまるフィクション」をリリースする。表題曲はライブ感のある歌と演奏を堪能できるエモーショナルでアグレッシブなロックチューン。そのほか今年配信でリリースされた「一瞬も一生もすべて私なんだ」「夜のスピード」が収められ、さらに7月に行われた大阪・なんばHatch公演のライブDVDが付属する。
2度の47都道府県ツアーを成功させ、ライブバンドとして急速に実力を付けている感覚ピエロ。その一方で彼らは、メンバー自ら社長となってレーベル&マネジメント会社を運営することで、過去に例がないようなさまざまな企画をフットワーク軽く行い、ときにトリッキーにも見えるバンド活動を展開している。
今回のインタビューでは「ありあまるフィクション」について聞くのと共に、ここ最近の彼らの活動をおさらい。2019年秋の千葉・幕張イベントホール単独公演の開催が決まったこのタイミングに、感覚ピエロとはどんなバンドなのか、メンバーはどこに向かっているのかを改めて探る。
取材・文 / 阿刀“DA”大志 撮影 / 新元気
会社員としてのメンバーそれぞれの役割
──作品の話の前に、秋月さんが代表を務めるレーベル・JIJI INC.についてお聞きしたいと思います。会社の調子はいかがですか?
秋月琢登(G) 今は2年目で、会社としてはまだまだですけど、なんとか回り出してる感じです。
──感覚ピエロのギタリストでもあり、会社の社長でもあるプレイングマネージャーという立場はかなり大変だと思います。最近は関わる人も増えているでしょうし。
秋月 そうですね、けっこうしんどいですよ(笑)。新しいバンドのCDリリースも決まったばかりですし(参照:感覚ピエロ主宰レーベル所属のFEEDWIT、12月のイベントでミニアルバム発売)、いろいろと動いてますね。
──秋月さんのほかに社員はいるんですか?
秋月 一応、感覚ピエロのメンバーも全員社員で、あとはローディと経理が1人ずついます。でも外回りをしたり、いろいろと動き回るのは基本的に僕だけですね。
──ほかのメンバーはJIJI INC.においてどういう仕事を担当しているんですか?
西尾健太(Dr) ドラムです。
滝口大樹(B) ベースです。
──ということは……?
横山直弘(Vo, G) ボーカルです(笑)。
──(笑)。つまり、感覚ピエロのメンバーとして“仕事をしている”ということなんですね。
秋月 そうですね。メンバーにはバンドに集中してもらってます。
──秋月さんが社長としていろいろと動いている様子をほかのメンバーはどう見ているんですか?
横山 「ヤベーな」って。このバンドを組んだばかりの頃、「バンドマンとして自主レーベル立ち上げようぜ!」って言ってたのが、今はもう、どこからどう見ても立派な社長ですから。社長としていろんな人と関わったり、そんなの真似しようとしてできることじゃないですから。ヤバいっすよ、マジで。
──今の話を隣で頷きながら聞いてた西尾さんはいかがですか?
西尾 その通りやなって。今、ヨダレ出たもん(笑)。
秋月 なんでヨダレやねん!(笑)
──会社の仕事ですごく忙しそうな秋月さんに、バンドメンバーとしても相談しなければならない案件があるときは気を使いませんか?
横山 さっき秋月さんも言ってましたけど、僕らは「感覚ピエロのメンバーとしての仕事だけをやっといてよ」って言われているので、「次、こういうセットリストがいい」とか「こういう曲がやりたい」みたいなアイデアを思いついたらすぐに言うことも僕らの仕事の1つなんですよ。なので、経営に関する部分について口出しすることは一切ないですけど、感覚ピエロについては遠慮なく言わないといけないと思ってます。
秋月 感覚ピエロに関しては4人の立場は全員横並びで、僕もただのギタリストなので、そこはフラットに接してもらえたほうがいいですね。
──どこでバンドマンと社長のスイッチを切り替えるんですか?
秋月 なんとなくパンパンパン……と。たまに気分が落ちるときはありますけど、そんなに意識せずに切り替えられてます。でも、いざ打ち合わせというときに、会議室の扉を開ける前に「フン!」って気合いを入れることはありますね(笑)。
理に適っているならば飲食店とかスポーツジムをやってもいい
──理想のレーベル像はありますか?
秋月 僕、レーベルをやりたいわけではないんですよ。レーベルって言葉も古いと思ってるぐらいで。なので、クリエイターが集まった組織、みたいに捉えてます。正直、何をやってもいいと言うか。音楽に特化する必要はないし、理に適っているならば飲食店とかスポーツジムをやってもいいと思うんですよ。
──やりたいと思ったことは何でもやりたいという気持ちが最初からあったんですね。
秋月 そうですね。僕はよくも悪くも飽き性なので、音楽だけに集中してると飽きちゃうんですよ。だから、たまにデザインをしたりいろんな人と話をしているぐらいがちょうどいいと言うか。会社としても、自由で幅広いことを実現できる器を用意しておきたいんです。いざ何かをやりたいって思ったときにそれができないとすごくストレスになるので。
──感覚ピエロとしての作品のリリース方法など、ほかのメンバーは秋月さんに一任しているんですか?
横山 一任してますね。
滝口 最終的なジャッジは4人でするんですけど、だいたいは「OK」って。
──これまでも感覚ピエロはかなり大胆なリリースの仕方をしています。例えば、バンド初のCD作品を小売店で販売するのではなく、TSUTAYA独占で3タイトル同時にレンタル開始したり。しかも、一見ぶっ飛んだアイデアに見えて、TSUTAYAにとってもしっかりメリットがあるという。企画に説得力があるんですよね。そんなアーティスト、ほかにいないんじゃないかと思います。
秋月 最初にTSUTAYAさんにご提案したときは驚かれましたね。
──さらに、今年7月には過去曲を全て収録した69曲入りのベストアルバム「1826」をサブスク限定でリリースしました。通常、過去のCDタイトルを一斉解禁するというのがサブスクを始める際のセオリーだと思うんですが、69曲を1つの作品にすることで“独占レンタル”だったTSUTAYAに対しても義理を立てています。作品としても面白いし、人としても筋を通している点が素晴らしいなと。
秋月 もともと、TSUTAYAさん限定でやらせていただいてた作品なので、それをあとから出すということはしたくなかったんです。サブスクって曲数は関係ないから、メンバーに「69曲ひとまとめで出そっか」と提案して実現しました。
──従来のレコード会社のやり方とは違う、次世代のバンドの動き方をしていると思います。そういうクレバーな動きを見せながらも、バンドとしては泥臭い活動を行っていて。7月に2回目となる47都道府県ツアーを終えましたが、いかがでしたか?
西尾 1回目に比べると、お客さんも含めて“みんなで作ってるツアー”という感覚があったので、僕らが背負うものの大きさも違いましたね。「もっとしっかりやらなあかんな」って。でも、いいツアーだったよな?
秋月 そうね。1回目は「47都道府県を回る」っていうことが先に頭にあったから、ただがむしゃらだったな。当時は今よりも無名やったし。だけど、今回はいろんな出会いやきっかけがあったことで僕らの名前が少しずつ広がっていたので、そのおかげもあって前回よりも待ってくれてるお客さんが多かったです。正直、ツアー自体はめちゃめちゃキツかったですけど、回る意味はあったと思います。
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CDがないと音楽ができないというわけではないんで