カミナリグモ セルフカバーアルバム「Another Treasure」発売記念座談会|現体制15周年で開かれる新たな扉 (3/3)

カミナリグモの2人が語るその他の収録曲

夜明けのスケルトン feat. 海北大輔(LOST IN TIME)

上野啓示 LOST IN TIMEは活動休止中なんですけど、海北さんは「やるよ」と言ってくれて。ありがたかったし、感動しましたね。海北さんとレーベルの方々に感謝してます。

ghoma レコーディングは、まず思い出話から始まって(笑)。

上野 近況報告とかね(笑)。今回のレコーディングは、そこから始まることが多かった気がします。海北さんの歌は素晴らしくて。本人も「歌に対する情熱は衰えてない」と言ってました。

ghoma レコーディングでも、「こういう歌い方はどう?」「こういうキャラクターは?」と提案してくれて。

上野 海北さん自身は「ベースを弾くのが一番好き」と言ってるんですけど、結局は歌が本当に好きなんだなろうなと。歌うために生まれてきたような人だと思います。

こわくない feat. 竹澤汀(Cinématographe、ex. Goose house.)

上野 竹澤さんに参加してもらったのは、ghomaちゃんがCinématographeのレコーディングやライブを手伝ったのがきっかけですね。

ghoma セピア色のトーンだったり、世界観にこだわっているバンドで。配信ライブの技術的なサポートをしたことがあるんですけど、そのときに使われていた古い宝箱や旅行鞄、ランプといった飾り付けの小物がことごとくカミナリグモっぽくて。感覚が合いそうだなと思って、カミナリグモを聴いてもらったら気に入ってくれたのがきっかけで、今回参加してくれることになりました。

上野 「こわくない」は自分たちの代表曲なので、絶対に収録したくて。マーチっぽくてかわいらしいサウンドにしたいと思っていたので、女性に歌ってほしかったんですよね。竹澤さんの歌はまさにイメージ通り。繊細なんだけど、意志を感じる声が「こわくない」の歌詞にすごく合ってました。竹澤さんにはオリジナルアルバム「Another Trip」にも参加してもらってます。

TOY BOX STORY feat. kainatsu

上野 なっちゃん(kainatsu)とはインディーズのレーベルが同じで、デビューの時期も近いんです。お互いにK-mix(静岡のFM局)で番組を持ってるし、当時は静岡で何回か一緒にライブもしていて。

ghoma なっちゃんと出会った当時のカミナリグモはトリオ編成で、僕はキーボードとシンセベースを弾いていたんです。なっちゃんがそのスタイルを気に入ってくれて、ライブをサポートさせてもらったこともありました。

上野 デビューの頃から、胸が引き裂かれるようなラブソングの表現に長けた印象があって、「hello」という別れの曲も素晴らしいんですよ。「TOY BOX STORY」も別れの曲なんですが、彼女らしい、胸に迫るボーカルがレコーディングできました。

白い雨 feat. 成山剛(sleepy.ab)

ghoma 信州大学を卒業してからそのまま松本市にいたときに、松本からデビューしたASIAN2というミクスチャーバンドを手伝っていて。その頃にたまたま札幌のイベントで一緒になったのがsleepy.abだったんです。すごくいいなと思って、啓示くんにも教えて。

上野 「archive」というアルバムに収録されている「ねむろ」を聴いて、すぐに好きになりました。sleepy.abは札幌を拠点に活動してるんですけど、ライブで東京に来ていたときにレコーディングしてもらって。成山さんの歌詞は抽象的というか、自分たちよりも大人っぽい雰囲気があるので、「白い雨」の「あたらしい僕になるんだ 決めたんだ」という少年っぽい歌詞が合うかなと思っていたんだけど、しっかり自分のモノにしてくれました。

ghoma 成山さんのほうから「自分らしさが出すぎたから、もうちょっと抜いて歌っていい?」と提案してくれて。曲に合ったいいテイクになりました。

SCRAP SHORT SUMMER feat. yoko(noodles)

上野 yokoさんは、さわおさんにプロデュースしていただいたつながりで知り合いました。一緒に弾き語りツアーをやらせてもらったり、仲よくさせてもらってるんですけど、すごく人間力があって、ナチュラルで。会ったらみんなが好きになっちゃう素敵な方なんですよ。歌声はまさに唯一無二ですね。yokoさんが歌えばyokoさんの歌になるというか。

ghoma トラックはnoodlesを意識して制作しました。原曲はもっとテンポが速くてポップなので、だいぶ雰囲気が違いますね。

上野 ボーカルのレコ—ディングもすごく自然で、いい意味でザックリしていて(笑)。「好きなテイクを選んでいいよ」という感じでした。

MY DROWSY COCKPIT feat. 岩崎慧(セカイイチ)

上野 セカイイチとは、バンドとしてはそこまで絡みがなかったんですけど、ghomaちゃんがCMの仕事で岩崎くんと頻繁にやり取りしていて。

ghoma 月に1回くらいのペースで作曲を依頼してるかも(笑)。作風がすごく幅広いんですよ。

上野 ボーカリストとしても器用なんですよね。「自分はこれしかできない」というタイプではなくて、いろんな表現の方法を持っていて、うまくスイッチできるというか。どんな曲でも曲に寄り添った形にしてくれるんですよ。「MY DROWSY COCKPIT」はthe pillowsの「さよならユニバース」にインスパイアされて作った曲なんですけど、この孤独感とか終わっていく情景を絶妙に表現してくれて。そりゃあCMの仕事が来るわけだと思いましたね(笑)。

カミナリグモ

カミナリグモ

「Another Trip 」レビュー

文 / 浅野保志(ぴあ)

2022年に現体制での活動15周年を迎えたカミナリグモ。僕が2人に出会ったのは2009年。上野啓示さんの紡ぐ、映画のような小説のような繊細な「キミ」と「僕」の物語や、ナレーションの実績もあるくらい一聴してわかる独特な歌声、ghomaさんのアタックの強いピアノや音色作りが見事なキーボード、手足を駆使してあらゆる楽器を奏でるライブパフォーマンスに魅せられて、出会ってからずっとCDもライブも欠かさず噛み締めてきた。「Another Trip」に収められている10曲は、出会ったときに魅了された世界観の純度が高まり、これまで以上に洗練されている。中でもghomaさんが作編曲を手がけた「native town」のシンプルなピアノと啓示さんの枯れたボーカルが胸に響いた。そして啓示さんの描く「僕ら」の関係性は秀逸だ。10年以上前に発表された「王様のミサイル」が、ロシアによるウクライナ侵攻が行われている今改めて聴き手の心を震わせるように、この10曲も「僕ら」に、そっとずっと寄り添ってくれる予感がする。

公演情報

カミナリグモ 15th Anniversary Tour "Another Trip Another Treasure"

  • 2022年7月10日(日)東京都 下北沢440
    <出演者>
    カミナリグモ / 竹澤汀(Cinématographe) / 上野優華
  • 2022年8月6日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
    <出演者>
    カミナリグモ / kainatsu / 岩崎慧(セカイイチ)
  • 2022年8月20日(土)福岡県 LIV LABO
    <出演者>
    カミナリグモ / 秋野温(鶴)
  • 2022年8月21日(日)広島県 音楽喫茶 ヲルガン座
    <出演者>
    カミナリグモ / 秋野温(鶴)
  • 2022年8月27日(土)長野県 上土劇場
    <出演者>
    カミナリグモ / 山中さわお(the pillows)
  • 2022年9月10日(土)大阪府 knave
    <出演者>
    カミナリグモ / D.W.ニコルズ
  • 2022年9月11日(日)愛知県 ell.SIZE
    <出演者>
    カミナリグモ / D.W.ニコルズ
  • 2022年9月24日(土)東京都 下北沢 CLUB Que
    <出演者>
    カミナリグモ + 真鍋吉明 / yoko(noodles)
  • 2022年10月1日(土)北海道 musica hall cafe
    <出演者>
    カミナリグモ / 成山剛(sleepy.ab)

カミナリグモ「Another Trip / Another Treasure」発売記念インストアイベント

  • 2022年8月8日(月)東京都 タワーレコード池袋店 店内イベントスペース

カミナリグモ15th Anniversary Live "Another Trip to Another Somewhere"

  • 2022年11月20日(日)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE

プロフィール

カミナリグモ

2002年、上野啓示(G, Vo)を中心に活動開始。2007年にはサポートとして参加していたghomaこと成瀬篤志(key)が正式メンバーとして加入した。かねてよりthe pillowsを敬愛していた上野が、ライブ会場で山中さわお(the pillows)に手渡した音源が高く評価され、2010年7月に山中プロデュースによるマキシシングル「ローカル線」でメジャーデビュー。2022年7月に現体制での活動15周年を記念したセルフカバーアルバム「Another Treasure」とオリジナルアルバム「Another Trip」を2枚同時リリースした。

秋野温(アキノアツシ)

2003年に埼玉県鶴ヶ島西中学出身の神田雄一朗(B)、笠井快樹(Dr)とともに3ピースバンド・鶴を結成。「ウキウキ&切なさの伝道師」をキャッチコピーとして掲げ、精力的にライブ活動を行う。2004年には1stアルバム「素敵CD」をリリースし、2008年にシングル「恋のゴング」でメジャーデビューを果たす。2022年4月に“4周目”となる全県ツアーを開催。同年4月に、4曲入りEPを4カ月ごとに4作発表する連続リリースの第1弾として「4-1」を配信した。

上野優華(ウエノユウカ)

1998年生まれ、2013年デビューのシンガー。近年は失恋・片思いソングを中心に歌い、奥華子提供の代表曲「好きな人」はYouTubeで480万回再生、wacci・橋口洋平提供の「あなたの彼女じゃないんだね」は270万回再生を突破。1500件におよぶ共感コメントが殺到するなど、“いま、泣ける声”と称され注目されている。2022年3月に最新曲「ジャスミン」を配信リリース。同年7月24日には神奈川・CLUB CITTA'にて「tvk開局50周年×上野優華デビュー9周年『角打ちゆうかFES』」を開催し、川崎鷹也とTani Yuukiをゲストとして招く。

カナタタケヒロ

2006年に結成されたロックバンド・LEGO BIG MORLのフロントマン。バンド結成後、地元大阪を拠点に全国各地でライブを行いながら、2008年6月に初のミニアルバム「Tuesday and Thursday」をリリースする。2009年1月に1stアルバム「Quartette Parade」でメジャーデビュー。2021年3月にバンド結成15周年を迎え、アニバーサリーツアーツアー「15th Anniversary Tour『十五輪』」を実施した。2022年に日本クラウンより再メジャーデビューが決定。3月にメジャー復帰作となるアルバム「kolu_kokolu」をリリースした。

わたなべだいすけ

2005年に音楽ユニット・D.W.ニコルズを結成。2008年に初の全国流通盤としてミニアルバム「愛に。」を発表した。2009年9月にシングル「マイライフストーリー」をavexのロック専門レーベル・binyl recordsからリリースし、メジャーデビューを果たす。2021年9月をもって16年間におよぶバンド体制での活動を終了し、わたなべ1人で活動を継続。翌2022年4月に鈴木健太が正式メンバーに復帰。現在は2人体制で、弾き語りからサポートメンバーを加えたバンド編成までさまざまな形態で、自由かつ精力的に活動している。現在公式オンラインショップでは最新作「Beautiful Days」と、初のエッセイ+弾き語りCD「生まれたままのうた」などを販売中。

渡會将士(ワタライマサシ)

2001年にFoZZtoneを結成し、2007年にミニアルバム「景色の都市」でメジャーデビュー。2015年3月の活動休止までの間、インディーズ時代からほぼすべての楽曲の作詞作曲、アルバムジャケットデザイン、イラストを手がけた。2012年に初のソロ作品「夕立ベッドイン」を発表後、1stソロアルバム「I'm in Mars」や「謹んであらたま」など、数々の作品を発表し続ける。2022年4月に埼玉・西武ライオンズ「LIONS CHANNEL」「ライオンズアワープロ野球中継」エンディングテーマとなる「Blue Lion」を配信リリース。同年5月より全国6カ所を回る「TOUR "New School"」を開催するなど精力的に活動を行っており、現在は菊地英昭がプロデュースするプロジェクト・brainchild'sのメンバーとしても活動している。

真鍋吉明(マナベヨシアキ)

1989年に結成されたロックバンド・the pillowsのギタリスト。1991年にシングル「雨にうたえば」でデビューを果たし、2022年までに37枚のシングルと22枚のオリジナルアルバムをリリースした。バンドと並行して、ソロプロジェクト・NINE MILESとしても活動しており、3枚のアルバムをリリース。また2012年には自身の名義での初のアルバム「Rutile」を発表した。