KAHOH|17歳だから歌えること

リアルなティーンの感性

──時間をかけて作詞したということですが、初めて作詞をしてみて苦労したところはありましたか?

何を書きたいかは自分の中ではっきりしていたので、曲のテーマはすぐに決まったんですよ。ただ、その内容をみんなに聴いてもらえるようなキャッチーな言葉に変えることがすごく難しかったです。

KAHOH

──リスナーにちゃんと伝わるような歌詞にしたかったと。

はい。ただ、みんなに共感してもらえるようなキャッチーな曲にしたいという思いはありつつ、それを重視しすぎて中身のない曲にはしたくなかったんですよ。自分の気持ちが入っていないスッカスカな曲は嫌いなので、そういうのだけにはしたくないと思っていました。でも、自分の言葉をぶつけるだけじゃ、みんなは聴いてくれない。私はカチコチ人間なので、最初に凝り固まった歌詞を書いてしまったんです。それを軽くなりすぎないようなニュアンスで崩していくのが大変でした。

──キャッチーな言葉に変えるために、具体的にはどういう作業をしていったんでしょうか?

ひたすら歌詞を書いて、友達にLINEで送りました! 3、4パターンくらい書いて、「どれがいいと思う?」と聞きましたね。

──友達は17歳の子ですか?

はい、同じクラスの友達5人に送りました。メロディは教えてないんですけど、言葉だけ送って、どの歌詞がいいか返事を見て「ありがとう!」って参考にして。毎日夜遅くにLINEをバーって送っていたから、友達は超迷惑だったと思います(笑)。

──じゃあこの歌詞には、リアルなティーンの感性が反映されているということですよね。

その子たちの生活の話を聞いて歌詞にしたわけじゃなくて、私が書いた言葉をどう思うかを見てもらっただけなんですけどね。でも、特に若い子に聴いてほしいと思って書いた曲なので、10代の子がどう思うのかを聞いて、より受け入れてもらえるような歌詞にできたのはよかったと思います。

この曲は“私の中身”

──言葉選びには苦労されたようですが、書きたい内容自体はすんなりと決まったんですね。

そうですね。メロディを聴いてなるべくポジティブな歌にしたいなと思って、自然とイメージが湧いてきました。「ONLY SEVENTEEN」って“まだ17歳”という意味だけど、個人的には“もう17歳”という感覚もあったんです。最初は両方の意味を持たせた歌詞にしようかなとも考えていたんですけど、最終的には前向きな方向で“まだ17歳”をテーマにしました。

──曲調が歌詞のテーマに反映されている部分もあると。

はい。Mattさんが私の好みを聞いて作ってくれたUSっぽいノリのトラックなので、歌詞も書きやすかったです。若い子が好きなトラックだなと思ったし、キャッチーな曲にできるなと感じましたね。最初に聴いたとき、これは絶対いい曲になるなという確信があったし、この曲を絶対にヒットさせたいと思いました。

──前回のインタビューでは「歌は私そのものだからそのままじゃないといけない」「作詞をするなら自分の心と歌が連動したものになる」とおっしゃっていましたが、「ONLY SEVENTEEN」はまさに17歳のKAHOHさんのありのままの姿を描いたような曲になりました。

この曲は“私の中身”という感じ(笑)。

──初めて作詞するにあたっておそらくいろんな題材がある中で、今の自分の生き方、ありのままの姿を楽曲にしたのはなぜですか?

私はやっぱり自分が作詞をすることになったら、自分のことしか書けないので。そもそもMattさんに見せた単語も、全部日々自分が思ったこと、感じたこと、見つけたことだった。今自分が思っていることや自分の生き方を曲にしたのは自然なことだったし、そもそもそれ以外の選択肢はなかったんです。

私だからこそ言えるフレーズ

──「まだ夢見てるの? でもおまえに言われたくないよ」「夢見すぎだって何度も笑われた けど私の方がイケてるって思ってた」と強いフレーズが多く、初作詞ながらすでに“KAHOH節”が成立しているなと思いました。

ははは(笑)。実はレコーディングまで「でもおまえに言われたくないよ」という歌詞は入っていなかったんですよ。「まだ夢見てるの?」のあとには違う歌詞が入っていたんです。今回スケジュールの都合で2回に分けてレコーディングをやったんですけど、2回目のレコーディングで「もうちょっと強い、私だからこそ言えるようなフレーズを入れたいな」と思って、「でもおまえに言われたくないよ」という言葉に変えました。

──初めて作詞した曲でこう言い切れるのは、自分に芯を持って生きてきたKAHOHさんならではですよね。

最初は「“おまえ”はキツい言葉だから、せめて“あんた”に変えたほうがいいんじゃないか?」という意見もあったんですよ。でも最終的には「KAHOHの世代が使う言葉がいいね」という話になって、“おまえ”が採用されました(笑)。

──自分のありのままの姿をストレートに強い表現で書くことに、ためらいはなかったですか?

それはなかったです。ただ、自分の思いを書き出して、人に見せることが恥ずかしいという気持ちはありましたよ。自分が何を思っているのか、全部見せなきゃいけなかったから。最終的にはまあいいかなという気持ちになって、毎日LINEで友達に送っていましたが(笑)。

KAHOH

夢を持っている人へ

──こういった大人への反抗心が見えるような歌詞は、中学生のときから歌手になりたいという夢を追いかけて多くのオーディションを受けてきたKAHOHさんの経験から生まれているものですよね。過去に審査員から「歌をいちからやり直したほうがいい」と言われて悔しい思いをしたり……。

まさにそうですね。自分が夢を追っている中で経験したことや、そこで培った価値観が詰まっていると思います。

──ただ、「私の方がイケてるって思ってた」という強い表現は出てきますが、KAHOHさんがその言葉の通り、100%自信がある人かというと……。

そうではないですね(笑)。「私の方がイケてる」という自信と、自分のことを信じられなくなっちゃいそうな不安が常にどっちもあります。みんなの前では「イケてるっしょ」という感じを出すけど、1人になったら全然そうじゃない。

──だから「ONLY SEVENTEEN」の歌詞は、KAHOHさんが自分に言い聞かせているようにも思えました。「人と比べて自分見失うのなんて もうやめにしようよ 信じていこう」「良い子でいる自分なんていらないでしょ」と。

確かに自分にも言ってるかもしれない(笑)。うん、それはありますね。

──“歌は自分そのもの”という信念の通り、歌とKAHOHさんの距離感の近さが歌詞から伺えました。

これを聴いてもらえたら、KAHOHがどういう人間なのか、みんなわかってくれると思います。ただ、自分のことを書いたけど、17歳に限らず夢を持っている人はみんなこの歌詞のような気持ちを持っているんじゃないかな。夢を叶えたいからがんばるけど、そこで挫折したりいろんな経験をして、大人に反抗したくなることもあると思う。夢を追いかけている人は「まだやれるし」って、常に思っているだろうから。大人に何か嫌なことを言われたときに、ぜひ「おまえに言われたくないよ」ってこの曲を歌って、這い上がってほしいです。