K|“詞先アルバム”で開く新たな扉

34歳の僕が歌って意味のある言葉

──制作で苦労した部分を教えてください。

「Story」のレコーディングは僕にとってチャレンジでした。普段はヘッドボイスという歌唱法で歌っていて、なるべくふくよかな歌声になるよう意識してる。だけど、この曲は自分のエネルギーを外にぶつけるような雰囲気だったので、喉を壊すくらいの勢いで歌ってみました。レコーディングにも時間がかかりました。

──「Story」はパワフルなEDMですよね。

はい。この曲はかなり初期に生まれた曲なんですけど、作り直して。最初は全然違うタイプの曲でしたが、例えば「Louder」を作ってるときに音源を聴き直してみたら、いろんなところを変えたくなっちゃったんです。アレンジをこういう人にお願いしたい、サビを変えたい、みたいな。そしたら呼人さんが僕のアイデアを全部受け止めてくれて。

K

──そもそもなぜ「Louder」を作り直したいと思ったんですか?

今回のアルバムはほとんどの曲を僕が作曲とアレンジをしているから、雰囲気を変えたくて「Louder」のレコーディングでは参加ミュージシャンの方に自由に演奏してもらったんです。そしたらソウルでアーバンな曲になって、すごく面白かった。僕、エド・シーランが大好きなんですよ。ロックやフォークの曲もあれば、ソウルやEDMの曲もあるけど、彼が歌うことでエド・シーランの作品として成立する。僕も今回のアルバムはそういう感じにしたくて。「Louder」が意外な形に仕上がったから、「Story」もいろいろいじってみようと思ったんです。

──制作期間が長かったからこそ、「Story」はこういう形になったんですね。

そうですね。「Story」はずっと、どっち付かずな状態だったんです。爆発力のある曲になりそうだけど、落としどころが見つからないと言うか。でも、そうやって答えのない作業をずっとしてるのが、音楽家としてとても楽しかったんです。締め切りを気にしないで音楽を作るのが初めてだったので、クオリティを突き詰める作業は本当にすてきな時間でした。

──アルバムとして歌詞にコンセプトはあったんですか?

呼人さんが歌詞を書いてくれる前に、どういう内容にするか必ず打ち合わせをしていたんですけど、そのときの2人の共通認識は「今のKが歌ってリアリティのある歌詞」ということでした。たぶん今の僕が「君のことが好きだよ」と歌ってもあんまりリアリティがない気がするんです。だったら、34歳の僕が歌って意味のある言葉や内容がいいな、と。

子供が生まれて創作意欲がすごく増した

──1つお伺いしたいんですが、Kさんには今の日本がどう見えますか?

身近な人を守る力と言うか、“今を生きる力”にあふれていると思います。生きることがしんどいと感じている人も多いと思うんです。でも、僕は物事の明るい側面を見る人間なので。

──そうなんですね。生きることに疲れている人にオススメしたい曲があれば教えてもらえますか?

僕は「俺に付いてこい!」みたいなタイプではないんですよ(笑)。みんなを元気付けるようなメッセージは出せないけど、今回のアルバムの中なら「残像」を聴いてもらいたいですね。

K

──その「残像」はどのように生まれたんですか?

この曲の歌詞は、僕が「残像」という言葉に惹かれたことをきっかけに呼人さんが書いてくれたんです。「残像」という言葉を聞いて、“自分の行動や人生が次につながっていく”ということを想像して。僕らが今何百年前の星空を観ているのと同じように、もしも今すごくつらくて、しんどい思いをしている人がいるなら、そのつらさすら自分の明るい未来に続く残像になっていると思ってもらえたらいいなと。聴いた人が、今の自分が未来に向けて何かを残しているという考えになってくれたらうれしいです。

──なぜそういう思いに至ったんでしょうか?

子供が生まれたことで創作意欲がすごく増したんです。せっかくソングライターという仕事をしているなら、子供のために何か作品を残していきたいと思ったんですね。それでこの「残像」という言葉がすごく自分の中に響いたんです。自分の発する音、言葉、パフォーマンスが、何かのパワーに変わっていけばいいなって。そう思いました。

「Storyteller」はいい意味で未完成品

──今回のアルバムは、歌詞の余白を残した曲が多いですよね。どの曲もあまりはっきりと結論が歌われていない。

そうですね。僕には聴いた人に考える余地を残した歌詞がすごく心地よかった。もちろんストレートにメッセージを伝えるような曲も大好きだけど、聴いてくれる人に最終的に判断してもらうと言うか、色を着けてもらうと言うか……音楽の面白いところって余白だと思うんです。それに、余白のある歌詞だからこそ、僕もどんどん想像を膨らませることができた。もしも言葉で完全に答えが出ていたら、作れるサウンドも狭くなっていた気がするんです。今回は作詞と作曲を分担してやってたから、こういう作品になったんだと思います。

──昔の日本の歌謡曲を制作するような発想ですね。作詞家、作曲家、シンガーがそれぞれ役割を分担して作ることで、クリエイティビティを高め合う形と言うか。

うん。そういうところも今回の狙いだったんです。だからこそ余白のある作品ができたと思うし、いい意味で未完成品になったと思います。

──何よりも旧知の仲である呼人さんと制作したからこそ、こんな内容になったのかもしれませんね。

そうですね。呼人さんも誰とでもこういう作り方をできるわけではないと言っていて、「(今回の制作は)すごく楽しかった」と言ってくれたのはうれしかったです。彼はすごく包容力がある人で、名前の通り人を呼ぶ人ですね。周りにどんどん人が集まってくる、すごくパワフルな人だと思います。

──アルバムを携えてのツアーも始まりますね。どんな内容になるんですか?

今回は今までとは違った内容になると思います。と言うのも「Storyteller」は制作段階でイメージができあがっていた曲が多いので、ライブでもできるだけそれを崩さず忠実にやってみようと思っているんです。事前に打ち込んだ音を、生演奏と同期させたり。そういうのは初めての試みなので楽しみです。

K
K「Storyteller」
2018年1月24日発売 / Victor Entertainment
K「Storyteller」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
5184円 / VIZL-1295

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K「Storyteller」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64915

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CD収録曲
  1. Piano
  2. Story
  3. GATE11
  4. シャイン
  5. 指輪物語
  6. ボーダー
  7. 春の雪(Album ver.)
  8. Louder
  9. プリテンダー
  10. 桐箪笥のうた
  11. Bless U
  12. 残像

<初回限定盤ボーナストラック>

  1. 遠雷(Album Ver.)
初回限定盤DVD収録内容

live K 2017 ~Anthology Night~

  • イケナイ DRIVE
  • Cover Girl
  • 525600min.~Seasons of love~
  • スニーカー
  • Only Human
  • 遠雷
  • over...
  • 桐箪笥のうた
  • 641
  • You're My Home
  • プリテンダー
  • 7 days
  • 反省ゼロ
  • Music in My Life
  • Last Love
  • Y.E.S.
  • GATE11
  • シャイン
  • Bye My Friends

live K tour 2018 ~Storyteller~

  • 2018年2月3日(土)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
  • 2018年2月4日(日)東京都 日本青年館
  • 2018年2月8日(木)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2018年2月9日(金)福岡県 イムズホール
  • 2018年2月16日(金)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2018年2月18日(日)大阪府 森ノ宮ピロティホール
  • 2018年3月1日(木)北海道 札幌市教育文化会館 小ホール
K(ケイ)
K
1983年11月生まれ、韓国・ソウル出身の男性シンガーソングライター。地元ソウルの教会で続けていたピアノライブが話題となり、2005年3月にシングル「over...」で日本デビューを果たす。同年リリースしたシングル「Only Human」がテレビドラマ「1リットルの涙」の主題歌に採用されスマッシュヒットを記録。2010年11月には東京・日本武道館で単独ライブを行った。同年12月に初のベストアルバム「K-BEST」をリリースし、その後兵役のため2年間の活動休止に入る。2012年10月に兵役を終え、音楽活動を再開。2013年に復帰作となるミニアルバム「641」を発表した。2017年2月にビクターエンタテインメントより寺岡呼人プロデュースによるシングル「シャイン」を発表。2018年1月に寺岡呼人が作詞およびプロデュースを手がけた、“詞先アルバム”「Storyteller」をリリースした。2月より全国ツアー「live K tour 2018 ~Storyteller~」を開催。