ナタリー PowerPush - J-Min

時代と国境を越えた歌声の力 すべての音楽好きが涙する濃厚カバー盤完成

J-Min(ジェイミン)の名前を知っている人は今はまだ少ないかもしれない。彼女は20歳になったばかりの才能あふれる若きシンガー。韓国で生まれ育ち、2007年9月に日本でデビュー。これまでに2枚のミニアルバムをリリースしている。

そんなJ-Minが、新作ミニアルバム「The Singer」を発表。この作品はブリティッシュロック調だった前2作から一転、アコースティックサウンドに乗せて「スローバラード」「満月の夕」などジャパニーズロックの名曲をカバーした作品だ。カバーブームに沸く現在の音楽シーンの中でもひときわ異彩を放つこのアルバムは、決して奇をてらわず、どこまでも直球勝負。その歌の強さを前面に押し出すことで、聴く者に新鮮な感動を与えてくれる。

日本で暮らす多くの音楽ファン(特に30代以降)にとってはなじみ深い名曲が並んでいるが、J-Minは日本で暮らし始めてまだ2年足らず。なぜこの選曲なのか。そしてこの歌声の力強さはいったい何なのか。

アルバム完成に至るエピソードについて、J-Minとプロデューサーの佐藤剛氏に話を聞いた。

(取材・文 / 大山卓也)

濃い1枚になってると思います

——アルバム「The Singer」が完成しましたが、今の感想を教えてください。

J-Min:そうですね、濃い1枚になってると思います。

——確かにこれは相当濃いですよね。

J-Min:作業しているときには、これほどになるとは思わなかったんですけど、やってるうちにどんどんアイデアも出てきて、いつのまにかこんなになっていて。自分で言うのもちょっとあれですけど、すごく。……自分で言っていいのかな?(笑)

——どうぞ(笑)。

J-Min:こんなクオリティ、カバーなのにこんなにできたんだって、すごく嬉しいんです。なんて言うのかな、自分では今までよりもっと大きい世界が広げられたと思うし。

——選曲もちょっとこれはすごいですよね。

J-Min:そうですね。

——今、日本はカバーが流行っていますが、意外性と迫力では群を抜いていると思います。名曲中の名曲ばかりですが、この選曲はJ-Minさん自身が?

J-Min:私が生まれる前の曲もたくさんあるし、正直よく知らなかったんですよね。だから最初はスタッフの方々に「こういう曲があるけどどう?」って教えてもらったり、私もネットで探したりして。そこで「あ、これはいいな」って思う曲もあったし、逆に「これはちょっとどうかな」って思う曲もあったし。それを1曲ずつ全部歌いながら選んでいった感じですね。

心と歌は直接つながってる

——J-Minさんが日本に来たのはいつでしたっけ?

J-Min:一昨年ですね。一昨年の6月。

——しかもJ-Minさんは現在まだ20歳で。それにしては渋いというか、なかなか通好みの選曲ですよね。

J-Min:オフコースの「眠れぬ夜」や桑田さんの「ONE DAY」は、ネットで見て、いいなあと思って。「傘がない」は前から知ってたんです、偶然。以前のサポートギターの方が、楽屋で弾いてて。「その歌詞は何ですか!?」って衝撃を受けて(笑)。ちょっと教えてもらって、たまに鼻歌で歌ったりしてたんですね。

——なるほど。選曲の基準はどのあたりに?

J-Min:うーん、もとのオリジナルの曲がよければいいというわけじゃなくて、自分でもよくわからないんですよ。でも聴いてみるとやっぱり70年代の楽曲を好きになる傾向があって、もともとフォークやカントリーが好きだし。心に染みるのはその時代のメロディが多かったかもしれないです。

——じゃあ歌ってみて初めてわかるという感じなんでしょうか。

J-Min:そうですね。いいと思って歌ってみたら「あれ?これ違うね」っていう曲もあったし、逆に「これはちょっとどうかな」って言ってた中にも、歌ったら「え、これちょっとよくない?」っていうのもありましたね。

——面白いですね。

J-Min:自分でもよくわからないんですけどね。やっぱり心と歌は直接つながってるんですね。自分であまり好きじゃない曲を歌ったら、スタッフの方にもすぐ「この曲あんまり好きじゃないでしょ」ってわかってしまうんです(笑)。

カバーミニアルバム『The Singer』 / 2008年11月19日発売 / 2000円(税込) / AVCD-23680 / avex trax

CD収録曲(オリジナルアーティスト)
  1. 傘がない(井上陽水)
  2. 満月の夕(ソウル・フラワー・ ユニオン)
  3. 春夏秋冬(泉谷しげる)
  4. ONE DAY(KUWATA BAND)
  5. 久遠(仲井戸麗市)
  6. スローバラード(RCサクセション)
  7. 眠れぬ夜(オフコース)
  8. ボーナストラック
    The First Star(上を向いて歩こう)(坂本九)

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プロフィール

J-Min(じぇいみん)

1988年韓国生まれ、現在20歳のシンガー。2006年春、ソウルに来ていた日本のレーベルスタッフの前でナタリー・インブルーリアの「トーン」を弾き語りで歌い、その透明感あふれる歌声でスタッフを驚かせる。2007年9月に1stミニアルバム「ころがる林檎」でデビュー。2008年1月には2nd「Dream on...」をリリース。2008年11月19日にカバーアルバム「The Singer」を発表し、歌い手としての新たな魅力をアピールした。日本語、英語、韓国語を話し、ギターとピアノを演奏する。フェイバリットアーティストはミシェル・ブランチ、カサビアン、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、チック・コリアなど。