ナタリー PowerPush - J-Min
時代と国境を越えた歌声の力 すべての音楽好きが涙する濃厚カバー盤完成
こんなにオリジナリティの強い曲を自分が歌って意味があるのかなって
——もとの楽曲は“超”がつくほどの名曲ばかりなんですが、これらの楽曲に歌がぜんぜん負けていない。これはすごいことだと感じました。
J-Min:プレッシャーはありました、もちろん。それにこんなにオリジナリティの強い曲を自分が歌って意味があるのかなって。意味が生まれてくるのかなってすごく思って。ちょっと怖かったりしたんですけど、でも周りの皆さんが「すごくいい」って言ってくださって(笑)。
——強い思い入れや先入観がないから、かえって歌いやすい部分もあったんじゃないですか?
J-Min:そうかも。うん、私にとってはまったく白紙で歌うって感じでしたから。
——確かにすごく素直なカバーですよね。アレンジも歌い方も奇をてらったところがまったくないし。
J-Min:そうですね。私はやっぱり声を聴いてほしいんです。オリジナルがすごい曲ばかりだったので、今回は特に自分の声を生かしたほうがカバーとしての魅力は出せると思ったっていうのもあるし。
——歌詞についてはどうですか。時代も国も違うところで生まれた曲ですが、理解できない部分はありませんでしたか?
J-Min:はい、わからないということはないです。逆に今はおしゃれな歌詞とかいっぱいあると思うんですけど、そっちのほうが私にはわからない言葉が多かったりして。今回私が歌った曲はみんなシンプルで、私でも普通に読んですぐわかるくらいの日本語が多かったので。そこにはきっともっと深い意味もあるんでしょうけど、私にとってはイメージしやすかったですね。それが私がその時代の曲を好きな理由かもしれないです。シンプルで素直で力強くて。
歌い手としてはそう言い切られるとちょっと寂しい
——あと聴いていて感じたんですが、J-Minさんは声が湿ってますよね。
J-Min:湿ってる?
——ウェットな感触があるなあと思って。そこが心に染みるポイントだと思うんですが、そのあたり自覚はありますか?
J-Min:いえ、自分がどう見えてるかはわからないですね。
——例えばカラッと乾いたロックを歌うよりは、ちょっと陰があったりするようなもの、日本のフォークソングや、もっと言えば演歌なんかとも相性がいいんじゃないかと感じました。
J-Min:なんでも歌いたいですよ。演歌を歌うときは着物を着て(笑)。
——いや、着物じゃなくてもいいんですが(笑)。でもそういう演歌的な感性って、日本と韓国は共通なものがあるかもしれませんね。
J-Min:あんまり考えたことがないんですけど、でも、うん、たぶんそうですね。文化も似てるしすごく近いですからね。
——そう思って聴くと、今回カバーしている曲もどこか悲しかったり切なかったりする曲が多い気がします。
J-Min:意識したわけではないですけど、そうなりました(笑)。そういう部分にみなさんが説得力を感じて、いいって言ってくれるのは嬉しいです。でもそれは時と環境によって変わるものだと思うので、それだけが私の声ではないと思っています。
——時と環境というのは、今の時代背景のことですか?
J-Min:時代もあるし、自分の年齢とかも。ティーンエイジャーからちょっと社会に入ったっていう感じもあるし、あと自分の国から離れて日本に来てる、お母さんと離れてるっていうのもあるだろうし。自分自身もまだまだ変わっていくと思います。
——なるほど。では切ない曲が得意なだけのシンガーではないと。
J-Min:うーん、そうですね。歌い手としてはそう言い切られるとちょっと寂しいなと思います。今の私はこれです、っていうのは言えます。でももっといろんな私を楽しみにしてもらえれば嬉しいなと思います。
——期待しています。どうもありがとうございました。
CD収録曲
- 傘がない(井上陽水)
- 満月の夕(ソウル・フラワー・ ユニオン)
- 春夏秋冬(泉谷しげる)
- ONE DAY(KUWATA BAND)
- 久遠(仲井戸麗市)
- スローバラード(RCサクセション)
- 眠れぬ夜(オフコース)
- ボーナストラック
The First Star(上を向いて歩こう)(坂本九)
プロフィール
J-Min(じぇいみん)
1988年韓国生まれ、現在20歳のシンガー。2006年春、ソウルに来ていた日本のレーベルスタッフの前でナタリー・インブルーリアの「トーン」を弾き語りで歌い、その透明感あふれる歌声でスタッフを驚かせる。2007年9月に1stミニアルバム「ころがる林檎」でデビュー。2008年1月には2nd「Dream on...」をリリース。2008年11月19日にカバーアルバム「The Singer」を発表し、歌い手としての新たな魅力をアピールした。日本語、英語、韓国語を話し、ギターとピアノを演奏する。フェイバリットアーティストはミシェル・ブランチ、カサビアン、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、チック・コリアなど。