ナタリー PowerPush - JAWEYE
紆余曲折のバンドマン人生
その注目度に比例して高まり続けるバンドのテンションを余すことなく注ぎ込んだ初のシングル「STARGAZER」をリリースしたJAWEYE。“アイデンティティ”という共通コンセプトを掲げて制作された3編の収録曲「STARGAZER」「Plastic Sunlight」「MURAKUMO」は、それぞれにJAWEYEとしての多彩な魅力を鮮烈に表現している。
ナタリー3度目の登場となる今回は、フロントマンである上田浩平(Vo,G)に単独インタビューを実施。彼が歩んできた紆余曲折の音楽遍歴を赤裸々に語ってもらうことで、バンドマンとしての確固たるアイデンティティに迫ってみたいと思う。
取材・文 / もりひでゆき インタビュー撮影 / 臼杵成晃
何も具体的な結果がなかった
──上田さんが音楽でメシを食っていきたいと明確に思い始めたのっていつ頃なんですか?
高校卒業間近の頃だと思います。僕は付属の高校に通っていたので、大学へはエスカレーター式に上がれたんですよ。だから基本的に進路を決めるっていう概念がなかったんだけど、その分、自分の人生についていろいろ考えていたというか。俺は何をしようかなって。
──そこで思い浮かんだのが音楽だったと。
そう。なれるんだったらミュージシャンになりたいなって。夢みたいな話ではあるけど、そこに向かってがんばるのもいいかなって。で、高校時代はコピーバンドをやってたんだけど、卒業した後、オリジナルのバンドを地元の音楽好きなやつらと組んだんですよね。それが19歳の頃。
──それがJAWEYEの前に組んでいたバンドということになるんですよね。
そうです。7年ぐらいやってました。ライブをバンバンやっていく中で、3、4年目ぐらいのときにライブハウスのレーベルからCDを出すことになって、インディーズデビューも経験しました。そのCDが割と売れたし、結構順調に進んでたと思いますね。で、俺はもうバンドでやっていけるなっていう手応えも感じ始めたので、大学を辞めるという暴挙に出たんですけど(笑)。
──音楽一本で進んで行けるという自信が芽生えたと。
そのときが一番、自信がみなぎってましたね。「俺、行ける!」みたいな(笑)。野心に満ちあふれてたし。でも今思い返してみると、そこには何も具体的な結果がなかったんですよ、結局。CDが何万枚売れたとか、ワンマンで何100人を集めたとか、そういう結果が一切なかったのに、なんとなくCDが出せて、なんとなく評価されたから、なんとなく自分は行けると思い込んでただけだったっていう。年齢的な若さも関係してたと思いますし。
アンプのツマミをいじってるときに突然、猛烈にイヤになった
──大学を辞めたけど、まだ音楽だけで食っていける状況でもなかったわけですよね。
そうっすね。イタメシ屋とか中古ゲーム屋とかでバイトしつつ音楽をやるっていう生活で。実際のところは音楽やってる時間よりも、バイトやってるほうが長いっていうありがちな感じでした(笑)。で、そういう状況を続けてると生活がルーチン化してきて、自分の感性とか前に進もうっていう気持ちとか、いろんなことがマヒしてくるんですよ。ほんとは自分で何かアクションを起こして新しいことをやるなりすればいいんだけど、そういう発想にもならず気持ちがどんどんダウナーになっていって、曲も作れないし、ライブも惰性でやってる感じになっていて。
──マズい状況ですね。
僕らは当時、午前中にスタジオへ入るっていう健康的なバンドだったんですけど、ある日の朝、スタジオでアンプのツマミをいじってるときに突然、猛烈にそういう状況がイヤになったんです。毎日こんなこと続けてるけど別に前に進んでるわけもないし、この後またバイトでしょっていう。で、バンドを解散することに決めたんです。
──そこには思うような結果が出ないことへのいらだちもあったんですかね?
そういう気持ちとは違ってたと思いますね。結果って、ある程度はもうしょうがないところがあると思うんですよ。運みたいなところもあるし。そうじゃなくてやっぱり自分たちのモチベーションっていう部分が大きかったんだと思います。いい曲を作る、いい演奏をする、いいライブをするっていう自分たちの中でのハードルをそもそも作ってなかったし、そのハードルが仮に作れていたとしても、あの頃の自分たちにはきっとそれが越えられなかったんだと思うんですよ。だからすべてがイヤになってしまったというか。
──CDの売り上げとかライブの動員とか、そういった目先の数字以上に、バンドにとっては大事なことがあるんでしょうね。
数字ってわかりやすいものではあるし、ひとつの指針にはなると思うんですけどね。でも、やっぱり大事なのは気持ちの部分なんですよ。売れてる売れてないにかかわらず。音楽を生業にしたいっていう理想は変わらずにあったけど、いろんなことを知れば知るほど難しいなって思うようになっていったので、当時の僕の音楽に対する考え方や関わり方は揺らぎまくりでしたね(笑)。
バンドを解散してサラリーマンに
──バイトをしていたとはいえ、精神的にも生活的にも真ん中に存在していたバンドを解散させることに対しての不安はなかったですか?
それはなかったです。もうほんとにバンドが苦痛になっていたので。ただ、バンドをやっている時点でも別な不安はありましたよ。結婚して子供を作って、みたいな安定した生活が俺にはできるんだろうか、老後はどうなるんだろうかとかね。演奏してる陰でそういう人生に対しての不安はいっぱいありました。正直、苦しいときもありましたね。今はそういう不安はクリアできたというか、うまく付き合っていけるようになった感じですけど。音楽というものは僕の人生の中にしっかり存在してますけど、生きていくためにはバンドじゃなくて他の仕事をしてもいいわけだし。実際、前のバンドを解散させた後は3年間ぐらい全く音楽に関係ない仕事をしてましたからね。サラリーマンとして。
──その気持ちの切り替えもすごいですよね。そこの踏ん切りが付かない人って多そうですけど。
そういう人もいるでしょうね。でも俺はバンバン働いてた。バンドをやってたからって同い年の会社員には絶対負けねえ、めちゃくちゃ稼いでやるって思ってましたからね、そのときは。そこにはバンドマンならではの反骨精神もあったので(笑)。あとね、会社もバンドも人でできてることは同じだなってすごく感じることができたんですよ。それは会社員になって良かったなって思うことで。人でできてるっていうことは結局、モチベーションが大事になってくるんですよね。だからもし次にバンドをやることがあったら、バンドを始めたときに持ってた気持ちを芯に置いて、モチベーションを保ちながら活動しないとやっぱりダメだなっていうことは思うようになってましたね。
ニューシングル「STARGAZER」/ 2012年8月7日発売 / 1050円 / LD&K Records / R3RCD-112
CD収録曲
- STARGAZER
- Plastic Sunlight
- MURAKUMO
ワンマンライブ情報
JAWEYE 1st ONE-MAN LIVE!! 「Exhibitionist! viol.2」-STARGAZER Release Party-
2012年9月23日(日)東京都 渋谷Star Lounge
OPEN 17:30 / START 18:00
オープニングアクト / DJあり
料金:前売 2800円 / 当日 3300円(ドリンク代別)
一般発売:2012年8月11日(土)
ローソンチケット(Lコード:76472 )
JAWEYE(じょあい)
上田浩平(Vo, G)、師崎洋平(G)、齋藤孝(B)、松尾篤佳(Dr)の4人によって2010年に結成。パンク、エモ、ギターロックなどのバンドサウンドとエレクトロの要素を融合させた独自のスタイルで注目を集め、2011年4月にミニアルバム「alpha」をリリース。その後ライブサポートとして活動していたマニピュレーターの高橋広祐が正式加入し、5人組となる。2012年1月に2ndミニアルバム「Binary Monolith」をリリース。8月7日には初のシングル「STARGAZER」を発表した。