ヒグチアイ×meiyo「JASRACイベント」振り返りインタビュー |まだまだ話し足りない2人の“続”番外編トーク (2/2)

海外での著作権使用料について

──先日のイベントでは著作権についてのさまざまなトピックがテーマになりましたが、特に印象に残っているものはありますか?

meiyo ヒグチさんが言っていた「海外で楽曲が使用された分の著作権使用料については個人でもJASRACと契約していないともらい損ねている分がある」というのは、マジで知らなかったです。

ヒグチ でも、音楽出版社を通して契約しているのに自分でもやらないといけない理由は私もわからないんですよね。

JASRACスタッフ 日本では、多くの場合、クリエイターが音楽出版社と交わす著作権契約書で、すべての著作権が音楽出版社に譲渡されています。そのため、出版社がすべての著作権を持つため、出版社からJASRACに預けていただければ、作家の方が直接JASRACメンバーでなくても、JASRACは作家の方の分も使用料を集めることができます。一方、海外では、クリエイターは出版社にすべての著作権を譲渡せず、クリエイター自身がクリエイターの取り分については権利を持つことが一般的です。クリエイター自身がJASRACのような著作権管理団体に所属していれば、海外の著作権管理団体が海外で使用料を集めてくれてJASRACに送金してくれます。クリエイターがどこの団体にも所属していない場合は、「クリエイター自身が自分の取り分を管理している(=クリエイターが自分で使用料を集める)」と理解されるため、海外の団体はクリエイター分の使用料は集めてくれないのです。

ヒグチ 前向きな権利意識みたいなことですかね。

meiyo 「そういうもんだから個人でも契約しておいたほうがいいよ」くらいは最初に教えてほしかった(笑)。

ヒグチ でも、これに関しては事務所の人もレコード会社の人も知らなかったから。私は知り合いからたまたま教えてもらったので。

meiyo 個人で契約するにはどうすればいいんですかね? 難しそう。

ヒグチ 大丈夫。私でもできたし。

左からヒグチアイ、meiyo。

左からヒグチアイ、meiyo。

JASRACスタッフ 費用も無料で、手続きはオンラインで簡単にできます。

ヒグチ イベント本編では話せなかったんですけど、JASRACから送られてくる明細にもっと具体的な情報が載っていたらいいのにと思ってるんですよね。例えば放送で使われたなら、「何月何日のなんていう番組だったのか」まで知ることできれば、そこから逆算して次に生かせるのになと。

meiyo それがあればわかりやすいですよね。あのときああいうがんばりをしたからこの額が振り込まれてるんだな、と思えるというか。

JASRACスタッフ おそらく手元に届いている明細は、JASRACが音楽出版社に支払った著作権使用料を、音楽出版社がクリエイター個人に再分配しているものの明細なんじゃないかと思います。実は、個人でJASRACと契約していただくと、さらに細かい明細をご覧いただくことができます。

ヒグチ あ、じゃあ私は海外の分は見れるんですか!

JASRACスタッフ 海外からのデータなので、国内のデータほど詳細なものではありませんが、ヒグチさんも海外の分を見ることができます。

どんな方法で聴いてくれてもうれしい

──イベント後半、YouTube配信などでもちゃんと著作権使用料が分配されるとわかって、ヒグチさんは「初めて『どんな方法で聴いてくれてもうれしいです』と心から言える」とおっしゃっていました。

ヒグチ SNSでいろいろ言われた時期があって、その意見のせいで自分のことを応援してくれてる人の声が埋もれちゃってる気がしたんですよね。誰を一番大切にしたいんだろうと考えたら、ライブに来てくれる人だなと思って、自分の中で線を引いたんです。「無料で聴いてる人のことは気にしないでいいや」って思わないとしんどかったというか。でも、イベントでmeiyoくんが「どんなふうに聴いてくれてても、みんなありがたい」と言っていて、その通りだなと。YouTubeで聴いてる人も、自分の音楽に関わってくれてるんだということを理解できたのは本当によかったです。そのうえで、私に時間とお金を使ってくれてる人のことは大事にしたいなと。

meiyo 10年くらい前には「YouTubeで聴いてますと言われるのが嫌だ」という風潮があったと思うんです。でも、僕の場合はTikTokでバズったことがきっかけで曲を聴いてもらえるようになったので。誰かが1回聴いてくれたことによって、その人の友達のオススメとして表示されるかもしれない。その広がり方を実感したんです。逆に、どんなに熱心に応援してくれてても、再生してすぐ聴くのをやめちゃったら1回としてカウントされないんですよ。だから「最後まで観てください」のひと言に尽きる(笑)。観てくれたらそれだけですごい価値だなと思います。

──お二人とも、楽曲が届いている実感を大事にされているんですね。ヒグチさんはライブで、meiyoさんはネット上のバズでそれを感じているという。

ヒグチ うんうん、確かに。でも、バズらせようと思ってバズらせられる人は本当にすごいなと思う。どうやって曲を作ってるのか聞いてみたい。聞いてもできないだろうけど(笑)。めっちゃ気になるから、今度ごはん行こ。

meiyo ホント行きたいっす。

ヒグチ 行こう行こう。

──では最後に、今回の配信を観るクリエイターの方々に向けてひと言お願いします。

meiyo meiyoを普段から聴いてくださってる方は、いろんな人に楽曲提供とかもしてるからmeiyoはなんでも知ってると思っているかもしれませんが、今回のイベントで自分は本当に何も知らないんだなと痛感しました。突然バズって急にいろいろやらせてもらって今に至るから、権利のことも勉強しておいたほうがいいと思いましたね。「俺みたいになるな」とみんなに伝えたい(笑)。僕らの世代はお金の話を避ける傾向があるかもしれないですけど、そんなことも言ってられないので、みんなでがんばって勉強していきましょう。

ヒグチ イベントでKENDRIXというサービスが紹介されましたよね。ブロックチェーンを用いた楽曲管理システムで、盗作対策、不正利用の抑止につながるという。それを聞いて、すごくいいなと思ったんです。この時代はパクりパクられが増えている気もするし、パクっている自覚はなくても無意識にパクっちゃってることもあると思うので。音楽は頭の中にあるものだから、言ってしまえば無料で作れるんですよね。だから軽く扱っちゃうことも多いと思う。でも、その権利を守ってくれる仕組みがあるから、面倒くさがらずに登録したほうがいいよなと。クリエイターって面倒くさがるじゃないですか。私もそうなんですけど(笑)。自分の音楽をちゃんと大切に持ち続けていれば、何かに変わる可能性もあるので。仕組みを大いに利用して、たくさん曲を書いて、拗ねずにがんばっていってほしいなと思います。

左からヒグチアイ、meiyo。

左からヒグチアイ、meiyo。

「音楽と生きる、音楽で生きる Special Supported by JASRAC」

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プロフィール

ヒグチアイ

1989年11月28日生まれ、香川生まれ長野育ちのソロアーティスト。2歳からピアノを習い、18歳でシンガーソングライターとして活動を開始。大学進学に伴い拠点を東京に移す。年間150本以上のライブを行い、年齢や性別を問わず、幅広い層の支持を獲得。2014年2月に初の全国流通盤となるアルバム「三十万人」をリリースし、2016年11月にアルバム「百六十度」でメジャーデビューを果たした。2021年にポニーキャニオンへ移籍。2022年1月に配信された「『進撃の巨人』The Final Season 2」のエンディングテーマ「悪魔の子」が話題となる。近年は香取慎吾、のん、青山吉能、ChroNoiRら他アーティストへの楽曲提供を行うほか、アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の主題歌を含む多数曲の作詞を“樋口愛”名義で手がけている。10月に6thアルバム「私宝主義」をリリース。2026年4月5日からNHK BSプレミアム4K、NHK BSで放送されるドラマ「対決」の主題歌として新曲「ひと匙」を書き下ろした。また、2025年2月よりアフロ(MOROHA)とのユニット・天々高々としても活動中。

meiyo(メイヨー)

“令和のポップマエストロ”の異名を取る、1991年生まれの音楽家、ドラマー。ロックバンド・シガテラのドラマーとして音楽活動をスタート。2015年に「ワタナベタカシ」名義でソロ活動を開始し、2018年「meiyo」に改名。2021年夏、自身の”なにやってもうまくいかない”人生を歌った楽曲「なにやってもうまくいかない」をTikTokに投稿したところバズを巻き起こし、ユニバーサルミュージックよりメジャーデビューを果たす。TikTokで30億再生を記録したasmi「PAKU」、NHK総合「Venue101」にて結成されたかまいたち・濱家隆一と生田絵梨花のユニット・ハマいく「ビートDEトーヒ」、Ado「クラクラ」などの提供曲が次々とヒット。2023年はau三太郎シリーズ「ココロ、オドルほうで。」編のCMソングの歌唱を担当したほか、メジャー1stアルバム「POP SOS」をリリースした。2026年に自身がリスペクトするアーティストとコラボレーションするプロジェクト「meiyo研究所」を始動。1月に詩羽(水曜日のカンパネラ)を迎えた「アイエナラエ feat. 詩羽」を配信リリースした。9月にメジャーデビュー5周年記念ライブ「meiyo FES」(仮)を東京・東京キネマ倶楽部にて開催する。