ヒグチアイ×meiyo「JASRACイベント」振り返りインタビュー |まだまだ話し足りない2人の“続”番外編トーク

さまざまなアーティストに創作の喜びや苦悩、秘訣などを語ってもらいつつ、音楽活動を支える経済面に対する意識についても聞く日本音楽著作権協会(JASRAC)との共同企画「音楽と生きる、音楽で生きる」。その番外編として、芦沢ムネトのMCのもとヒグチアイとmeiyoが出演するトーク&ライブイベント「音楽と生きる、音楽で生きる Special Supported by JASRAC」が3月23日にYouTubeで配信された。音楽ナタリーではイベントを終えた2人にインタビューし、イベントの感想や話し足りなかったことなどをざっくばらんに語り合ってもらった。なお本日3月30日にはさらに、イベントのエクストラコンテンツを収めた限定動画も公開された。応募フォームに必要事項を入力すれば誰でも観られるので、ぜひチェックしてみてほしい。

取材・文 / 張江浩司撮影 / Viola Kam(V'z Twinkle)

「音楽と生きる、音楽で生きる Special Supported by JASRAC」

エクストラコンテンツの視聴方法はこちら

ヒグチアイが“音楽で生きる”と思ったタイミング

──JASRACとの共同連載では以前meiyoさんに“音楽で生きる”ようになったきっかけをお聞きしました(参照:meiyoインタビュー「音楽でみんなと相思相愛になりたい。でも…」彼が“音楽と生きる、音楽で生きる”ジレンマ)。ヒグチさんはいかがですか?

ヒグチアイ 2歳の頃からクラシックピアノをやっていたんですけど、シンガーソングライターとしての活動は18歳、高校3年生の夏からかな。ライブをすることになったときに、カバー曲をやる発想がなくて、自分で曲を作るものだと思ってたんですね。そこで作曲したのがスタートだと思います。「この人に憧れて」みたいな感じはなく、なんとなく始めてみたところから地続きでここまでやってるというか。

──「将来は絶対にミュージシャンとして成功するぞ!」という野望があったわけでもなく。

ヒグチ 音楽はずっとやっていたから、それで何かしら飯を食べていくんだろうとは思ってました。でも、音楽の授業で同級生に歌い方を教えることになったときに、全然理解してもらえなくて。音を合わせて歌えない人に、どうやって説明したらいいのかわからない。指導者にはなれないと思ったことを覚えてます。だから、自分でやるしかないなと。

──消去法的にシンガーソングライターになったんですね。「仕事としてやっていけそうだぞ」と思ったタイミングは覚えていますか?

ヒグチ この先、音楽で生活していけるかいまだにちょっと心配なんですけど、今ライブで使っている鍵盤は30kgあるんです。ケースを含めると50kgくらいあって、自分1人では持ち運べないんですね。絶対に誰かスタッフを雇わないと、この鍵盤を使えない。そのためには「音楽で食っている」という状態じゃないといけないなと、覚悟を決めて鍵盤を買いました。それが5、6年前です。

──文字通り、人の手を借りないといけない状況になったという。

ヒグチ シンガーソングライターとして1人でやっていく分にはどうとでもなるんですけど、スタッフの分を考えると、倍稼がないといけないなって。

──先日のイベントでは、ヒグチさんは「ライブの3曲目くらいでようやくスイッチが入る」という話をされていました。音楽を始めたきっかけと同じく、ライブも実生活と地続きというか、オンオフの境目が曖昧な印象です。

ヒグチ そうですね。現実から逃れられない感じ。

ヒグチアイ

ヒグチアイ

──一方でmeiyoさんは袖からステージに出た途端にオンに切り替わるとおっしゃってました。いろいろなインタビューで「バズるために必要なこと」を分析して「なにやってもうまくいかない」を書いたと話されてますし、かなり意図的に自らモードを変えてるんだなと。正反対のお二人ですよね。

meiyo 確かに。めっちゃそうですね。

ヒグチ meiyoくんみたいにパパパッと切り替えられたらよかったなと思いますよね。「ステージに出たら緊張しない」みたいなことを言うミュージシャンもいますけど、すごくアーティストっぽくていいなと思う。自分ができないからうらやましいんですよね。どこでそのスキルを身に付けたのかすごく気になる。

meiyo もともとかもしれないですね。ドラマーとしてバンドをやってた頃を思い返しても緊張はしてなくて「見せてやりますよ」みたいな、肩を回してる感じだった気がします。末っ子なのもあって、何かをやって見せたら「すごいね」と褒められる人生だったので。だから、褒めてくれる人がいない状況だと、逆にめっちゃ緊張するんですよ。お客さんが少ないライブハウスとか、無観客配信とか。

ヒグチ 私は見られてないほうができるというか、自分に期待が集まってるのがすごく嫌で。期待しないでほしい。だからワンマンが一番緊張する。

meiyo 真逆だ(笑)。

ヒグチ 下剋上みたいなほうが燃えるというか。先輩との対バンとかで「この人には届かないかもしれないけど、絶対振り向かせる!」みたいな感じでやりたいんですよね。みんながあったかい気持ちで観ててくれるとやりづらくなっちゃう。

meiyo めちゃくちゃカッコいいっすね。

ヒグチ そう思ってくれるかもしれないけど、私はmeiyoになりたい(笑)。たぶん、今後も音楽を続けていくなら下剋上よりも、私のことを好きな人が観に来てくれるほうが多くなってくるわけじゃん。そのときに何を返せるか。ちゃんと期待に応えたいけど、それが難しいんだよな。

1人でやることと、誰かとやること

──お二人がお互いにうらやましいと思っている気持ちは、イベントの端々にも出ていました。ヒグチさんがMOROHAさんと組んでいるユニット・天々高々の話をしているときに、meiyoさんが「うらやましい」とつぶやいていましたね。

meiyo 天々高々はヒグチさんがサビのメロディと伴奏を考えて、歌詞とフロウについてはアフロさんが作る分業制と話していたので、あんまりそういうやり方で制作したことがないなと。誰かとコラボレーション的にやることはあるんですけど、終わりが決まっていない長いスパンで一緒に曲を作る相手がいるのはいいなと思って。

meiyo

meiyo

ヒグチ でも、バンド活動もしてるんだよね?

meiyo そうなんですけど、結局メンバーの誰かが持ってきた曲をみんなで演奏することが多いんです。

ヒグチ 共作じゃないってことか。

meiyo それに近いものはあるんですけど、最近は忙しいこともあって、そもそもバンドでの曲作りをほとんどしなくなっちゃって。

ヒグチ でも、誰かと一緒に作ると、例えば「この歌詞が気になる」と思ってもすごく気を使うじゃないですか。レコーディングでも、私はこの歌い方をしたいけど、相手は違う歌い方がよくて揉めちゃって、機嫌が悪いまま録り始めることもあったし(笑)。1人でやってるときはディレクターとかの意見があったとしても最終的には私が決めて責任を取るけど、同じだけ責任を持っている人がいるというのはこんなにも大変なのかと。もちろん、どっちの楽しさもあるんだけどね。1人での活動があるから、誰かと一緒にやるのも成立するんだなと思う。意見を譲ったりする練習にはなるかも。

meiyo 誰かに曲を提供するときに、歌録りのディレクションもやります?

ヒグチ 1回だけレコーディングに立ち会ったことはある。どうしてもと頼まれて、でも何か指示するのが苦手すぎて「ごめんなさい、もうできないです」って。結局、ほかの人にやってもらって、それ以降やってない(笑)。

meiyo 自分もめちゃくちゃ苦手なんですよ。でも、完全にお任せして自分が想定したニュアンスとまったく違うよくないものになる可能性もあるから、一応できる限りレコーディング現場に行くようにはしてる。そういう意味では、人と一緒に曲作りしてるなとは思いますけどね。

ヒグチ めちゃくちゃ作ってるよ。でも、meiyoくんは人とやるの苦手だと思う(笑)。絶対に相手とぶつかって、でも「やめよう」とも言えなくて、ツルツル続けちゃう未来が見えるわ。

meiyo そんなに具体的に「苦手だと思う」って言われたのは人生で初めてだ(笑)。

ヒグチ 私もそうだから。内面はめっちゃ頑固だからいろいろ言いたいんだけど、外側は優しいから気を使って言えなくなっちゃう。はっきり言ったほうが相手にとってもいいとわかっていても、うまく言葉にできないんだよね。

meiyo うーん、そうなんだよな。怖いですね……。

ヒグチ でも、そうやってがんばって人と関わってうまくいかなくて、というのを繰り返していくしかないんでしょうね。