ナタリー PowerPush - 石崎ひゅーい

1stシングルで日常を脱出 「ファンタジックレディオ」

日常じゃないところに連れて行ってくれる作品

──その第2歩目となる今回のシングルはポップな曲ですよね。これはどんなところから着想していった曲なんですか?

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いろいろ理由がある曲なんです。まず歌詞で「baby」と、ちょっと言ってみたかったんですね。僕、歌の中で「baby」って、今まであんまり使ったことがなくて。でもいろんなロックミュージシャンや好きな人たちの歌を聴いてると、みんな結構「baby」を使ってるじゃないですか。

──忌野清志郎さんとか、多いですね。

そうですね。それで「あ、俺も使わないと」と思ったんです。その動機と、あとは「スター・ウォーズ」とか……。

──また「スター・ウォーズ」なんですか?(笑)

はい。「インディ・ジョーンズ」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を夏にすごく観てて。金がかかってるファンタジーの王道っていうか。

──SF映画ですね。

そう、その現実逃避させてくれる感じがすごく良くて、「日常じゃないところに連れて行ってくれる作品を僕も作りたい」と思ったんですよね。それがこの曲を作る動機になったんです。

──なるほど、だから「ファンタジック」なんですね。では「レディオ」は?

それはよくわかんないです。なんとなく出てきた言葉ですね。

──そうですか。でも想像というか、空想の世界ということなんですね。

うん、そうですね。この主人公がいて……まあ僕なんですけど、その人は家でネットサーフィンとかをしている男の人で。外にもあんまり出ないで、例えば社会のことを面倒くさく思ってるんですよね。生きづらい世の中だとすごく感じてて。人って、そういうのを毎日考えちゃうじゃないですか? イヤなことばかり考えて、ワーッてなっちゃうみたいな。そのワーッてなっちゃってるときに、好きな誰かのことを思ってる。そんな歌ですね。

「あなた死ぬところだったわよ」

──そんな中で気になったんですが、「公園のすみにピッピちゃんを埋めよう」という歌詞は、どういうことなんですか?

これは、情けなかった自分の過去も思い出しちゃうっていうことなんですけど。僕、ちっちゃい頃にピッピちゃんって鳥を飼ってたんです。僕が飼いたいと言って飼ったんですけど、そのピッピちゃんを、わりとすぐ死なせちゃったんです。僕が相手にしてなかったかなんだかのせいだと思うんですけど。そういうことを思い出して書きました。

──ちょっと悲しい話ですね。「ハダカンボのまま 遠くの島に逃げちゃいたい」という歌詞がありますが、あなたは裸になるのが好きらしいですね。ライブのときでも、レコーディングでも。

そう、裸になるのが好きなんですよ。で、「遠くの島に逃げちゃいたい」と思ったりもしてるんですけど。だけど人間だから2日か3日経つと、結局それも諦めて普通の生活に戻りたくなっちゃう、みたいな。多分俺がそういうタイプなんですよね。あれこれ言ってるくせに、いざやってみることになると「ちょっとヤだ」みたいな。そんなだらしない部分というか、どうしようもない、愚かな自分を歌ってます。

──例えばどんなときに、だらしない自分を自覚するんですか?

うーん、急性アルコール中毒を2回やったときですね。あれって、すごいんですよ。穴という穴の機能が、全部きかなくなるんです。マジで! まず鼻水が出て、ゲロを吐いて、ウンコもずっと垂れ流しだし。それですごく泡を吹いて、呼吸できなくて、みたいな。

──(笑)。それはかなり激しいほうじゃないですか?

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俺がなったそういう状態がレベル9ぐらいで、レベル10が死亡だと読んだことがあります(笑)。それは大学ぐらいのときのことで、看護婦さんに「あなた死ぬところだったわよ」って言われたし、周りの友達にもすごく迷惑をかけたんだけど。その1カ月後ぐらいにもう1回、また急性アルコール中毒になっちゃう、みたいな。自分でも「愚かだなあ」と思って。でも「まあ、みんなそんなもんだろう」と、ちょっと思ってるんですけど。

──そこまでいく人はあまりいないと思いますよ。

(笑)。俺だけかなあ? そこからすごく反省して、ちゃんとお酒のペースを考えるようになりましたね。

ライブDVD / Blu-ray「キミがいないLIVE」 / 2012年11月21日発売 / EPICレコードジャパン
「キミがいないLIVE」 / [DVD] / 2000円 / ESBL-2331 / Amazon.co.jpへ
「キミがいないLIVE」 / [Blu-ray Disc] / 2000円 / ESXL-21 / Amazon.co.jpへ
収録内容
  1. ガールフレンド
  2. シーベルト
  3. 常識
  4. ナイトミルク
  5. 第三惑星交響曲
  6. 3329人
  7. ひまわり畑の夜
石崎ひゅーい (いしざきひゅーい)

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身の男性シンガーソングライター。風変わりな名前は本名で、高校時代より音楽活動を開始する。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年4月から行われたRakeの全国ツアーでは12会場でオープニングアクトを務めた。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビュー。11月には1stシングル「ファンタジックレディオ」と、初のライブDVD / Blu-ray「キミがいないLIVE」を同時リリースする。自身の心情やエピソードを歌った、赤裸々な中に幻想的な表情を見せる歌詞、強い印象を与えるメロディライン、ダイナミックなライブパフォーマンスで、大きな注目を集めている。