音楽ナタリー Power Push - 八王子P×マーティ・フリードマン「アイマリンプロジェクト ~iMarine Project~」

DEAD or ALIVEなコラボが生んだ最高の「いいじゃん!」

VOCALOIDはアートとしてレベルが高い

──八王子さんはこれまでVOCALOIDを使用した楽曲を数多く発表しているアーティストですが、マーティさんはVOCALOIDについてどう思っていますか?

マーティ・フリードマン

マーティ 機械的な音の歌声って僕はとっても現代的なボーカルの解釈だと思っているんです。今やみんなが同じテクノロジーを持っているわけですから、本当にセンスが必要な仕事なんですよね。キレイに曲の流れを守りながら音を出してるという点で、アートとしてレベルが高いことだと考えています。

八王子P ソフトさえ買えばみんな同じことができますから、確かに技術の差はほとんどなくなってきてますね。機材も安くなってますから、この人にしかできないことっていうのはどんどん減っています。お金をかけなくても音楽を作れる時代になったという意味ではすごくいいことだと思うんですけど、どんどん上にのし上がっていこうとしたとき、何を自分らしさとしてアピールするか、ほかとどう差を付けるのかは難しくなっていると思います。

マーティ 僕の仕事はコラボが多いから、「期待されているマーティっぽさってどんなものだろう」って考えながら演奏していますね。自分なりのものがある上で、オーダーをしてくれた方も満足するものを作る。それこそがアーティストの仕事だからね。

八王子P 例えば今回のプロジェクトだったら、アイマリンちゃんというキャラクターが先にあって、「Bitter & Sweet」というテーマ、マーティさんとのコラボという要素など、いろいろあるんです。その中で八王子Pらしいもの、僕ならではの要素をどう出していこうかっていうのはすごく考えて曲を作ってます。

なんでもありが日本のオリジナリティ

──先ほどマーティさんは「打ち込み系の音楽と太いギターサウンドの融合は全然ない」と話していましたが、それはアメリカでも同じなのでしょうか?

マーティ アメリカでもありませんね。違う音楽ジャンルの掛け合わせは日本のほうが進んでいます。日本の音楽ファンってすごくジャンルレスだと思う。アメリカだったらロックのファンはたいていダンスミュージックが嫌い。ダンスミュージックのファンはロックが嫌いですから。J-POPという言葉でいろんなジャンルの音楽を括っているのはとてもすてきなことですよね。

八王子P

八王子P 海外だと、例えばハウスミュージックっていうジャンルがさらにディープハウスやエレクトロハウスなどに細かくカテゴライズされているんですよね。今マーティさんがおっしゃった通りJ-POPってなんでもアリなんです。例えば最近のアイドルソングはいろんなジャンルがクロスオーバーしていて、本当にカオスな状況なんですけど逆にそれが日本の音楽のオリジナリティになり得るのかなと思っています。

マーティ 日本では曲のメロディが一番大事にされてるじゃん?

八王子P おっしゃる通り、日本人はすごくメロディを重視していると思います。

マーティ 僕のイメージだと、例えばアメリカのクラブミュージックファンは音色がどうか、ダンスができるかどうかばっかりを気にしてる感じ。日本ではキャッチ—かどうか、口ずさめるかどうかが大事だからいろんなジャンルの音楽がJ-POPとして聴かれている。国によって音楽の解釈が全然違うのは面白いよね。

アイマリンプロジェクト ~iMarine Project~
クリエイター、そしてユーザーのインスピレーションをもとに「海物語」のメインキャラクターであるマリンちゃんの新しい可能性に挑み、新キャラクター「アイマリンちゃん」およびオリジナル楽曲、ミュージックビデオを共創していくプロジェクト。2015年4月に第1弾楽曲として「Marine Dreamin'」が制作され、そのミュージックビデオの総再生数は280万回、アイマリンプロジェクト関連動画の総再生回数は1000万回を突破した。2016年3月に第2弾新曲「Marine Bloomin'」のミュージックビデオが公開。「Bitter & Sweet」というテーマが設けられた第2弾には八王子P(楽曲)、鹿乃(ボーカル)、Yumiko a.k.a. MTP(振付)、U35(キャラクターデザイン)、わかむらP(映像監督)、さらにゲストクリエイターとしてマーティ・フリードマンが参加している。

八王子P×マーティ・フリードマン×鹿乃
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八王子P(ハチオウジピー)
八王子P

VOCALOIDを使用して音源制作をするボカロPとして活躍する男性アーティスト。クールな4つ打ちトラックにキャッチーなメロディを乗せたダンスチューンを得意とする。2009年12月、ニコニコ動画で公開した「エレクトリック・ラブ」が注目を集め有名ボカロPの仲間入りを果たす。2011年11月に台湾でリリースしたベストアルバム「Sweet Devil feat. 初音ミク」は現地の週間売上チャートで4位に入る健闘ぶりを見せた。2012年2月、アルバム「electric love」でメジャーデビュー。2013年にはTOY'S FACTORYからアルバム「ViViD WAVE」、2014年には「Twinkle World」、2015年9月に「Desktop Cinderella」をリリースした。

マーティ・フリードマン
マーティ・フリードマン

ギタリスト、作曲家、プロデューサー。1990年にMegadethに加入し、ギタリストとして活躍。同バンド脱退後の2004年に活動の拠点をアメリカから日本へと移す。2005年に放送されたテレビ東京の音楽番組「ヘビメタさん」にレギュラー出演するなど、タレントとしても活動の幅を広げている。2008年には日経BP出版センターより著書「い~じゃん!J-POP -だから僕は日本にやって来た-」を刊行。2008年には「グーグーだって猫である」「デトロイト・メタル・シティ」といった映画にも出演している。また2014年にはアレキシ・ライホやダンコ・ジョーンズといった洋楽アーティストをゲストに招いて制作されたソロアルバム「インフェルノ」をリリースした。