音楽ナタリー Power Push - 八王子P×マーティ・フリードマン「アイマリンプロジェクト ~iMarine Project~」

DEAD or ALIVEなコラボが生んだ最高の「いいじゃん!」

パチンコメーカー・SANYOが展開する「アイマリンプロジェクト ~iMarine Project~」第2弾の新曲として八王子Pが「Marine Bloomin'」を制作。この楽曲のゲストギタリストとしてマーティ・フリードマンが参加している。

「アイマリンプロジェクト」はクリエイター、そしてユーザーのインスピレーションをもとに、SANYOの人気機種「海物語」のメインキャラクター・マリンちゃんの新しい可能性に挑み、新キャラクター「アイマリンちゃん」およびオリジナル楽曲、ミュージックビデオを共創していくプロジェクト。八王子Pは2015年4月にプロジェクト第1弾の楽曲として、シンガーに鹿乃を迎え「Marine Dreamin'」を発表している。

音楽ナタリーではプロジェクト第2弾のミュージックビデオの公開を記念して、楽曲制作でタッグを組んだ八王子Pとマーティの対談を企画。異なるジャンルで活躍してきた両者が制作をともにし、第1弾に引き続き鹿乃が歌を担当した新曲「Marine Bloomin'」の制作背景のほか、日米の一般的な音楽観の違いといった話題を語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 上山陽介

冒険的な上に音楽が好き

──マーティさんは今回の「アイマリンプロジェクト ~iMarine Project~」にゲストとしてオファーされて、どういう印象を持ちましたか?

アイマリンちゃん

マーティ 八王子さんの音楽を聴かせてもらったらギターなしでも「全然イイ!」って感じだったんだよね。そこに僕のギターを入れるのってすごく冒険的なことだと思って。僕は冒険的なこと以外やりたくないタイプだから、今回はすぐ「やる!」って返事をしました。

──冒険的なコラボじゃない依頼の場合、断ることもあるんですか?

マーティ もう断りまくりですよ(笑)。だって人生は短いじゃん? 僕はやると決めたらキチンとやるタイプだから、冒険的じゃない仕事には時間を使いたくないんですよ。今回は冒険的な上に、八王子さんの曲が好きっていうダブルパンチ。だから喜んで引き受けました。

八王子P 光栄です。ありがとうございます。

──八王子さんはこれまで打ち込みによる楽曲を多く発表していましたから、マーティさんとのコラボに驚いたファンも多いと思います。

八王子P これまで生のギターの音を曲に入れたことがほとんどなかったんですけど、少し前から、自分の曲に生音を入れたいなって思っていて。だからマーティさんとのコラボが実現できたのは、僕にとってもすごくいい機会でした。

マーティ 僕、実はダンスミュージックとかクラブミュージックとか打ち込み系の音楽がとても好きなんですよ。今回のコラボで一番興味深かったのは、完全に打ち込みで作っている八王子さんの曲に、僕の汗臭い生の音を混ぜるとどうなるのか?ってところ。最終的に両方の味が共存して、より“おいしく”なった。日本でよくあるじゃん? バナナチョコとかオレンジチョコとか、意外な組み合わせなんだけど、食べてみるとハマってる。それが音楽で起こってると思う。

不正解なんて1つもないレコーディング

──八王子さんにとって「アイマリンプロジェクト ~iMarine Project~」の楽曲制作は2度目となりますが、今回はテーマが「Bitter & Sweet」となっています。

八王子P 前作「Marine Dreamin'」でアイマリンちゃんのスイートの部分は十分伝わったと思っていたので、今回はビターをどうやって伝えていくかというところにすごく重点を置いています。カッコよさだったり、シリアスな要素をどう入れていくか、イメージを膨らましているときにマーティさんとのコラボの話が持ち上がって。

マーティ 八王子さんの作った新曲「Marine Bloomin'」、デモをもらったときはサビが頭から離れなくて、眠れなくなっちゃったんですよ(笑)。

八王子P ありがとうございます!

マーティ 基本的に僕はポップスのファンだからすぐ覚えられる、キャッチ—であるってことがすごく大事だと思ってるんです。だからこの曲は超よかった。

──「アイマリンプロジェクト ~iMarine Project~」の告知動画でお2人は、今回のプロジェクトを「Dead Or Aliveなコラボ」と表現していましたよね。

マーティ 打ち込みの音楽に僕の弾くような太いギターを合わせた曲って全然ないからね。もちろん融合したらどうなるかデンジャラスではあったけど、デモを聴いたらアイデアもたくさんあふれてきて、「これは絶対うまくいくな」って確信しました。

八王子P

八王子P デモの段階でリズム系のギターは打ち込んでいたんですけど、ギターソロの部分は一切フレーズを入れず、コードだけをおわたししていたんです。レコーディング前の打ち合わせでもマーティさんには僕が出したアイデアをどんどん取り入れてくださって。出てくるメロディがどれもよく聴こえちゃうから、ジャッジをしなきゃいけないのがすごく大変でした。

マーティ レコーディングでも一緒だったんだけど、八王子さんは僕が何か弾くたびに「それもアリですよね」と言ってました(笑)。

八王子P マーティさんが弾いてくれるフレーズに不正解なんて1つもないんですよ。僕は一歩引いて楽曲全体を俯瞰しながらどれが最適かを選ばなくちゃいけなかったから、ものすごいプレッシャーを感じてました。

マーティ 現場によってはプロデューサーと意見が合わないこともありますから。僕が好きじゃないフレーズを気に入って「それ最高!」みたいになっちゃうこともあるんだよね。今回は全体的なイメージは八王子さんに任せつつ、僕のアイデアを形にし続けていったって感じだったかな。

八王子P レコーディングのときに「あ、これだ!」って僕が思ったときにマーティさんも笑顔だとメッチャうれしかったですね。これで間違いないんだなって。

マーティ 僕と八王子さんの音楽的な相性がよかった気がするんだよね。レコーディングのときに「何これ?」ってなっちゃうような、微妙な瞬間が一切なかったからね。

──完成した音源を聴いた印象はどうでしたか?

マーティ 八王子さんがいいテイクを選んでくれたし、アレンジもカッコよくて「最高にいいじゃん!」って感じでした。

八王子P ありがとうございます。テイクを選ぶ作業とかものすごく悩んだんですけど、それってものすごく贅沢な時間というか。楽しみながらできましたし、本当に貴重な経験をさせてもらいました。

アイマリンプロジェクト ~iMarine Project~
クリエイター、そしてユーザーのインスピレーションをもとに「海物語」のメインキャラクターであるマリンちゃんの新しい可能性に挑み、新キャラクター「アイマリンちゃん」およびオリジナル楽曲、ミュージックビデオを共創していくプロジェクト。2015年4月に第1弾楽曲として「Marine Dreamin'」が制作され、そのミュージックビデオの総再生数は280万回、アイマリンプロジェクト関連動画の総再生回数は1000万回を突破した。2016年3月に第2弾新曲「Marine Bloomin'」のミュージックビデオが公開。「Bitter & Sweet」というテーマが設けられた第2弾には八王子P(楽曲)、鹿乃(ボーカル)、Yumiko a.k.a. MTP(振付)、U35(キャラクターデザイン)、わかむらP(映像監督)、さらにゲストクリエイターとしてマーティ・フリードマンが参加している。

八王子P×マーティ・フリードマン×鹿乃
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八王子P(ハチオウジピー)
八王子P

VOCALOIDを使用して音源制作をするボカロPとして活躍する男性アーティスト。クールな4つ打ちトラックにキャッチーなメロディを乗せたダンスチューンを得意とする。2009年12月、ニコニコ動画で公開した「エレクトリック・ラブ」が注目を集め有名ボカロPの仲間入りを果たす。2011年11月に台湾でリリースしたベストアルバム「Sweet Devil feat. 初音ミク」は現地の週間売上チャートで4位に入る健闘ぶりを見せた。2012年2月、アルバム「electric love」でメジャーデビュー。2013年にはTOY'S FACTORYからアルバム「ViViD WAVE」、2014年には「Twinkle World」、2015年9月に「Desktop Cinderella」をリリースした。

マーティ・フリードマン
マーティ・フリードマン

ギタリスト、作曲家、プロデューサー。1990年にMegadethに加入し、ギタリストとして活躍。同バンド脱退後の2004年に活動の拠点をアメリカから日本へと移す。2005年に放送されたテレビ東京の音楽番組「ヘビメタさん」にレギュラー出演するなど、タレントとしても活動の幅を広げている。2008年には日経BP出版センターより著書「い~じゃん!J-POP -だから僕は日本にやって来た-」を刊行。2008年には「グーグーだって猫である」「デトロイト・メタル・シティ」といった映画にも出演している。また2014年にはアレキシ・ライホやダンコ・ジョーンズといった洋楽アーティストをゲストに招いて制作されたソロアルバム「インフェルノ」をリリースした。