生田斗真「スーパーロマンス」インタビュー|世紀のロマンスが始まる──活動30周年で踏み出した新たな地平 (2/2)

オーダーは“岡村さん全部乗せプレート”

──岡村さんの名前は、最初から挙がっていたものだったんですか?

そうですね。もちろん、自分がご一緒したい方と音楽を作りたいという思いが大前提にありましたし、僕が最初に「岡村さんがいいな」と名前を出したんですけど、そこから岡村ちゃん以外に考えられなくなってしまって。ファンキーでセクシーで、でもどこかつかみどころのない感じの岡村ちゃんの曲を自分なりに表現してみたいと思って「絶対に岡村さんでお願いします」ということになりました。

──今の生田さんが岡村さんの曲を歌うこと自体、年齢的にもすごくマッチしているなと思いました。

そう言っていただけてよかったです。確かに、もう少し若い頃だったらギラギラしすぎていて、今の年齢だからこその重みとか落ち着いている感じ、だけどちょっと遊び心もある感じは出せなかったかもしれないですね。

生田斗真

──岡村さんに楽曲をお願いするとき、どういうオーダーをしましたか?

岡村さんからも「『こんな曲を作ってください』とはっきり言ってくれたほうが作りやすいんですよ。なんでも言ってください」と言っていただいたので、「『だいすき』のようにキャッチーでポップで、なおかつ『ぶーしゃかLOOP』みたいなグルーヴ感や変態性もあって、『カルアミルク』のセクシーさもある、大人のラブソングがいいです」と岡村さん全部乗せプレートみたいなオーダーをしたら、本当にそんな曲を作っていただきました。そこにプラスして、ドラマ(「パンダより恋が苦手な私たち」)の世界観や恋愛観もしっかり歌詞に入れ込んでいただいて。かなり急ピッチな作業を強いてしまって、岡村さんには大変な思いをさせてしまったと思うんですけど、本当に素晴らしいデビュー曲をいただけたなと感動しました。

──完成した楽曲「スーパーロマンス」を聴くと、生田さんに岡村さんが憑依したんじゃないかと思うような歌唱パートも随所に見受けられます。

デモ音源は岡村さんが歌ってくださっていて、「これ、絶対にご本人が歌ったほうがいいんじゃないか?」ってぐらいの岡村ちゃん節だったので、僕もそれを踏襲して歌うようにしました。レコーディングにも岡村さんが立ち会ってディレクションをしてくださったんですけど、歌よりも間奏とかアウトロに入っているシャウトやフェイクが難しくて。デモにはそのへんが入っていなくて、現場で「余白があるから、自分が思った感じでちょっと何か入れてもらえますか?」と言われたものの、やったことがないからわからないじゃないですか。すると、岡村さんが「じゃあ僕、ちょっとやってみますね」とブースに入って、「ベイベ!」とか「ウッ!」とかやるわけですよ。それがもう僕らが知ってる岡村靖幸そのもので、ブースの外にいるみんながすごく盛り上がるわけですけど、じゃあそれを自分が真似しようとすると慣れてないから、すごく難しい。何回も録り直しましたけど、いまだにあれが正解だったのか不安です(笑)。

──ああいうシャウトやフェイクって本能的に出てくるものだから、意識してやろうとするとそりゃ難しいですよね。

グルーヴで勝手に出てくるみたいなやつですよね。でも、その「勝手に出てくる」文化が僕にはないんですよ(笑)。だから、ちゃんとリズムに合わせて「カモン!」とか「Oh~ベイベー!」とやってもダメなんだっていう。ほかのアーティストさんからも「そういう余白を埋めるシャウトやフェイクが、実は一番難しい」とのちのち聞いて、「ああ、自分だけじゃないんだ。よかった」と少しだけホッとしました。

生田斗真

まだ経験したことないことって、こんなにもあるんだ

──その「スーパーロマンス」は、ドラマ「パンダより恋が苦手な私たち」の初回放送直後の1月10日22時から配信がスタートしました。生田さんは同時刻から放送の音楽番組「with MUSIC」に出演し、“アーティスト・生田斗真”として「スーパーロマンス」を初パフォーマンスされました。

アーティストとしての音楽番組出演もあれが初めてだったので、ドキドキでしたよ。しかも「with MUSIC」はお客さんの前で歌唱するので、僕のファンクラブの皆さんにお声がけして収録に入ってもらったんですよ。募集した時点では僕が歌手デビューすることも発表前だったから、みんな「ドラマの番宣でトークするのかな?」と思ってスタジオに集まったら、いきなり歌衣装を着た僕が出てきて。しかも、「今から歌うのは、今度出す1stデジタルシングルです」と伝えるわけですよ。そうしたら、みんな急に泣き出してしまって。中には、30年近く僕のことを応援してくださっている方もいらっしゃって、きっと心の中で「歌手としてデビューしてくれないかな」と願いつつ、それもどこかあきらめてしまっていて、「たまに舞台で歌を聴けたらうれしい」くらいに思っていたんじゃないかな。そうやって号泣しているみんなの前で、アーティストとして初めて歌ったんですが、あれは今でも忘れられないですね。

──一生に一度、あるかないかの経験になりましたね。

本当に。「まだ経験したことないことって、こんなにもあるんだ」と、音楽活動を始めてたくさん感じています。

──この取材時点ではまだ完成前ですが、ミュージックビデオも撮影したそうですね。

はい。MV撮影はホルモンとの「殺意vs殺意(共犯:生田斗真)」で一度経験していたものの、1本撮るのにこんなに時間がかかるんだと改めてびっくりしました。だって、夜中の3時4時まで撮ってましたから。ホルモンのときもけっこう時間がかかって、メンバーは深夜でもテンションをガーッと上げてヘドバンしているから「大変だね」と労ったんですけど、「昨日もこれくらいの時間までやってたよ」と普通に話していて。「音楽業界、ヤバい!」と思いましたよ(笑)。ただ、それすらも初めての経験だったから、めちゃくちゃ刺激的でしたけどね。

生田斗真

──MVではめちゃくちゃ踊っているそうですね。

ダンス以外にも、ちょっとした仕掛けが用意されているんです。監督の瀬里義治さんもいつかご一緒したいなと思っていた方で。こちらからお声がけしたんですけど、せっかく俳優が音楽活動をするんだから、僕ならではのMVが作れたらいいなと思っていろいろ相談しました。内容に関しては深く説明しませんが、なかなか面白いものに仕上がったんじゃないかと思います。

より自分を知る、新しい自分を発見するために

──音楽活動は今後も定期的に続いていくわけですよね。

もちろんです。実は、身近な人から「ここまでやりきったし、もしかして引退しようと思ってる?」と言われてしまったんですけどね(笑)。それくらい1曲目から全部乗せ状態ですし、ここまで盛りすぎると2曲目3曲目とかアルバムでやることなくなっちゃうとか、「あんまりロケットスタートすぎても失速しちゃうよね」と思う方もいらっしゃると思うんです。ただ、先がどうなるかわからないからこそ、今やりたいことを、やりたい人たちとやろうと決めたので、次についてもしっかり考えていますし、それ以降もフルスロットルで楽しくやっていこうと思っています。

──最初のhideさんの話じゃないですが、型にとらわれることなく、自分が楽しいと思うポップでエンタテインメント性の強い音楽を追求していくことで、1曲1曲異なるカラーを見せてくれるんじゃないかと、今から次を楽しみにしています。

ありがとうございます。今おっしゃっていただいたことは、僕が目指すべきところなのかなとなんとなく思っています。実際、聴いてきた音楽ジャンルも激しいものだけじゃなく幅広いですし、それこそ自分がここまでやってきたことの幅も広いので、そういう表現のほうが僕には合っているのかなと思います。

──よくミュージシャンの方が演技の世界を一度経験すると、音楽活動に戻ったときに、その刺激が新たな原動力になるという話を耳にしますが、生田さんにとってもこの音楽活動が役者としての新たな引き出しにもつながるのではないでしょうか。

そうかもしれないですね。それこそ舞台で歌ったりすることもありますけど、役者としてお芝居はすごく追求してきたものの、歌となるとまだ研究が足りないなと自分では思っていて。ただ、歌もセリフ同様に言葉を伝える表現ですし、きっと今まで積み重ねてきた自分なりの表現と重なる部分もあるはず。それに、音楽の世界に足を踏み入れてからまだ日が浅いですけど、普段なかなか会わないような人たちとの作業も増えましたし、こういう音楽媒体の取材も初めての経験だから刺激になりますし、社会勉強という点でもたくさん刺激を得られている。より自分のことを知る、新しい自分を発見するという意味でも、このプロジェクトは“役者・生田斗真”にとってすごく大きな意味のあるものになるんじゃないかと思っています。

生田斗真

プロフィール

生田斗真(イクタトウマ)

1984年10月7日生まれ、北海道出身。1996年にNHK Eテレ「天才てれびくん」に出演後、ドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」や「魔王」で話題を集め、2011年に映画「人間失格」「ハナミズキ」で「キネマ旬報ベスト・テン」新人男優賞、「ブルーリボン賞」新人賞を受賞した。そのほか、映画の代表作に「土竜の唄」シリーズ、「予告犯」「グラスホッパー」「彼らが本気で編むときは」「友罪」「告白 コンフェッション」、ドラマでは「ウロボロス~この愛こそ、正義。」「俺の話は長い」「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」「警部補ダイマジン」といった作品で主演を務める。近年はNHK大河ドラマ「べらぼう」、Netflixシリーズ「さよならのつづき」、舞台「バサラオ」などでも注目を集める。2024年公開の映画「告白 コンフェッション」では、主題歌「殺意vs殺意(共犯:生田斗真)」でマキシマム ザ ホルモンとコラボした。2026年に入ってから音楽活動をスタート。1月に上白石萌歌とダブル主演を務める日本テレビ系ドラマ「パンダより恋が苦手な私たち」の主題歌「スーパーロマンス」でアーティストデビューした。


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