聴き方、楽しみ方を伝えて新しいお客様と出会いたい
イヤフォンやヘッドフォンを取り巻く文化を盛り上げたい。その意思は梅田EST店のレイアウトからも感じ取れる。例えばエントランスのすぐ脇にはいくつものテーブルとスツール、そして電源タップとジュースの自動販売機が並ぶ休憩スペースが用意されており、その壁面にはヘッドフォンの歴史を追う巨大な年表が掛けられている。またヘッドフォンコーナーの頭上にはイヤフォン / ヘッドフォンの各パーツの名称やドライバ特性などが図解されたパネルが掲げられている。この店舗構成のコンセプトについて、梅田EST店の山根直店長は「ヘッドフォンのテーマパークを目指した」と説明する。
「女性のお客様が中心のショッピングモールであるESTには、女性の買い物に付き合ってきた男性のお客様も少なくない。このお店は、そういう方が、お連れの女性の方が洋服を選んでいる最中にフラッと立ち寄ってもらえるスペースでもあってほしいんです。当たり前ですが、そういう方すべてがイヤフォンやヘッドフォンに詳しいわけではない。でもここに来れば、時間つぶしがてら、いろんなイヤフォン / ヘッドフォンの音を楽しみつつ、その種類や仕組み、歴史にも詳しくなれる。そういう仕掛けを用意すれば、また新しいお客様と出会える可能性が高くなりますから」
そしてもう1つ、梅田EST店の中でもとりわけユニークな取り組みが「e☆スマホン」だ。
これはスマートフォンの販売コーナー。担当スタッフの真鍋梓氏によると、ハイレゾ対応Android機やiPhoneなど、音楽再生機能を備えるスマートフォンの新規契約や機種変更を受け付けるほか、スマートフォンでより“いい音”を鳴らすためのアドバイスや提案を行うという。
「ここは本当にシンプルに『スマホでいい音を聴いてますか?』という提案をするコーナーなんです。ただひと口に『スマホでいい音』と言っても、実は守備範囲はけっこう広くて。イヤフォン / ヘッドフォンやスマホ本体の違いによって音質が変わるのはもちろんなんですけど、同じスマホであっても使うアプリによって音質が変わることもありますし、あと当然CDから楽曲をリッピングするときのファイル形式やサンプリングレート、ビットレートによっても音質は全然違いますよね。お客様のニーズに応じて最適なスマホやイヤフォン / ヘッドフォンだけでなく、最適な操作方法をご案内するのも、e☆スマホンの仕事なんです」
少々下品な物言いにはなるが、街で音楽を聴きたいスマホユーザーにも高級なポータブルプレーヤーやヘッドフォンアンプをプレゼンテーションしたほうがはるかに“儲かる”はずだ。それだけにすでにユーザーの手元にあるスマホやパソコンの操作方法、設定1つで音質を向上させることをも提案するe☆スマホンは、イヤフォン / ヘッドフォン文化の裾野の拡大を目指す梅田EST店、ひいてはe☆イヤホンならではの施策といえるだろう。
数十万円はくだらない高級イヤフォンやヘッドフォン、プレーヤー、ポータブルヘッドフォンアンプも並び、また3Dスキャナでユーザーの“耳型”を採取して、その人にジャストフィットするカスタムモデルのイヤフォンを制作するIEMコーナーも設置。当然ながらプロやハイアマチュアのニーズにも十分応える梅田EST店ではあるが、写真の通りのその清潔感あふれる店内しかり、またここまでのスタッフ陣の言葉しかり、最近“いい音”に興味を持ち始めたビギナーにとってもフレンドリー……いや、超強力な味方になってくれることは疑うべくもない。山根店長の言葉にならってフラッと足を運んでみてはいかがだろう?
あなたのイヤフォン見せてください
先の岡田氏の言葉の通り、e☆イヤホンスタッフはイヤフォン / ヘッドフォンの“専門家”。ではそんな面々はどんなイヤフォン / ヘッドフォンとプレーヤーを使っている? ここでは4人のスタッフを直撃。それぞれの愛機を聞いた。
クリニックドクター
ガッキーさん(29歳)
イヤフォン:VISION EARS VE6 Xcontrol カスタムIEMモデル
プレーヤー:ASTELL&KERN AK120II
ヘッドフォンアンプ:CHORD ELECTRONICS Mojo
e☆イヤホンチェーンの修理・カスタマイズ部隊のボスを務めているガッキーさんがこの日使っていたのはドイツのブランドVISION EARSのイヤフォンVE6 Xcontrolのカスタムモデル。オーディオプレーヤーASTELL&KERN AK120IIとポータブルヘッドフォンアンプCHORD ELECTRONICS MojoをGND分離配線対応の自作光ケーブルで接続し、そのMojoとイヤフォンを繋ぐ、曰く「ちょっと度が過ぎたマニアぶりを発揮した(笑)」システムで、Linkin Parkに代表されるエモ・ラウドロック系や、フルオーケストラによるクラシックを聴くという。「エモ・ラウド系を聴くなら、現段階でもっとも理想的なセッティングがこれですね」
梅田EST店カスタムIEM担当
かじかじさん(25歳)
イヤフォン:WESTONE W80
プレーヤー:ASTELL&KERN AK70
かじかじさんは、プロのアーティストが使用するイヤモニターなど、3Dスキャナで採取した人物の“耳型”をもとに、その耳にピッタリのイヤフォンを制作するカスタムIEM担当。アメリカの工場を自費で見学するほど、その愛機W80のメーカー・WESTONEのファンなのだとか。「プレーヤーのASTELL&KERN AK70はロック向き。低音に迫力を加えつつも、高音をシャキッと鳴らしてくれる。そしてこのW80は元気がいい音像と、音の広がり方が特長的な機種。この組み合わせでBUMP OF CHICKENを再生すると、スタジオ録音盤であってもアリーナやホールでのライブ音源を聴いているような感覚になれるんです」
買取部門
ももちゃんさん(21歳)
イヤフォン:SKULLCANDY Bombshell
プレーヤー:SONY WALKMAN Aシリーズ「ナルトVSサスケ最終決戦記念」モデル NW-A25/NRT
e☆イヤホン梅田EST店の買取部門に籍を置くももちゃんさんの愛機は女性専用モデルを謳うSKULLCANDYのイヤフォンBombshell。“男性よりも高音域にセンシティブである”“聴感上の違和感にストレスを覚えやすい”と言われる女性の耳にとって心地のよい音場を目指した1台だ。「これを選んだ一番の理由はかわいいデザインや色だったりするんですけど(笑)、やっぱり音も明らかによくて。EDMみたいな打ち込み系の曲が特にキレイに聞こえるんですよ。低音はちゃんと鳴るし、でも高音は曇らないって感じで」。ちなみにこの日はボカロナンバーを聴きながら出勤してきたとのこと。
PR本部
岡田卓也さん(28歳)
イヤフォン:JH AUDIO Layla カスタムIEMモデル
プレーヤー:ASTELL&KERN AK380
ヘッドフォンアンプ:AK380専用パワーアンプ AK380-AMP-MT
今回梅田EST店を案内し、またイヤフォン / ヘッドフォンシーンの今を教えてくれた岡田さんが持ち歩いているのは写真の通り、なんともゴツい組み合わせ。さらにこの日はCANAL WORKSのカスタムイヤフォンも持ち歩いているという。「僕、音楽はもちろん好きなんですけど、それ以上にイヤフォンというアイテムそのものが好きなんです。だからたとえ会社の行き帰りだけであっても、そのとき聴いているジャンルに応じて使い分けたいんです」。曰くJH AUDIOのLaylaはジャズやクラシックに強く、この日はスムースジャズの父、グローヴァー・ワシントンJr.を聴いていたのだとか。
2016年12月21日更新