音楽ナタリー Power Push - いい音で音楽を

report 沖井礼二(TWEEDEES)meets ウッドコーンスピーカー

TWEEDEESのベーシストとしての活動をメインに、竹達彩奈をはじめとする外部アーティストへの楽曲提供でも高い評価を集める沖井礼二。TWEEDEESではブリティッシュロックからクラシカルな映画のサウンドトラックまで、幅広い音楽を吸収したポップなサウンドを追求している。

今回沖井に試聴してもらったのは、木製のコーンが採用されたJVCウッドコーンシリーズの最新機種にして最小モデル、EX-NW1。手のひらサイズの小さなスピーカーと、同じくコンパクトなサイズの専用アンプをセットにした機種で、スマートフォンやタブレットがBluetoothで無線接続できるほか、USB端子も備えているので、外部のUSBストレージやパソコンに収めたハイレゾ音源なども手軽に楽しめる。沖井は愛用のAPPLE iPhoneをBluetooth接続し、コーラスの華やかな映画音楽やTWEEDEESの楽曲を試聴。「僕は“オーディオ耳”ではないからなあ」と謙遜しながらも、その性能についてたっぷりと語ってくれた。

取材 / 臼杵成晃 文 / 大橋千夏 撮影 / 佐藤類

JVC EX-NW1

JVC EX-NW1

「音楽的」な鳴り方

(アニメ「伝説巨人イデオン」のエンディングテーマ「コスモスに君と」を聴いて)うんうん、なるほど。これはいいステレオですね。ちょっと待ってくださいね。(「コスモスに君と」のクライマックスを何度か聴き返しながら)これはいいステレオですね。

──ピアノ曲からアニソンまで、ジャンルも時代も幅広い選曲で試聴されていましたが、「イデオン」の反応が一番いいですね(笑)。

いやいや、あの曲は実はものすごく音がいいんですよ。イントロの弦なんか特に素晴らしいですから!

沖井礼二

沖井礼二

──沖井さんにとってのリファレンス音源みたいな。

はい。それにしても、こんな小さなスピーカーでここまでいい音が鳴るんですね。音の分離がよくてハイもローもキレイに出ているし、鳴り方が非常に音楽的だなと思いました。

──音楽的?

音楽はただバランスがいいとか、「正しい」だけでは聴いていても面白くない。例えばスタジオに置いてあるスピーカーってバランスは完璧なんだけど、決して音楽的なものとは言えなくて。あれはレコーディングした音源をチェックするために、みんなして眉間にシワを寄せながら聴くものですから(笑)。それに比べてこのスピーカーの鳴り方はまろやかと言うのかな。ちゃんと聴き手を気持ちよくさせてくれる絶妙なバランスが考えられているなと。

──なるほど。特に気持ちいいと感じたのはどんな音楽ですか?

ピアノものとかコーラスものですね。ジーン・ケリーの「I Like Myself」なんかもよかった。特にハイの響きには下品にならないツヤ感があって、本当にクオリティが高いですよ。僕は個人的にもコーラスものが好きだから、このスピーカーでお気に入りのアナログ盤を聴いてみたいですね。

フラットな状態が1番美しい

──普段はレコードで音楽を聴くことが多いんですか?

そうですね。仕事終わりに、照明を暗くしたリビングでレコードを聴きながら晩酌するのが毎晩の楽しみで。このひとときのために仕事しているようなものです(笑)。このスピーカーは、まさにそういう部屋聴きにぴったりだと思いますね。

──外で音楽を聴かれるときはどのように?

iPhoneと付属の純正イヤフォンを使っています。自分の曲をチェックするときもこのセットですね。レコーディングスタジオみたいな環境で音楽を聴く人は、実際のところほとんどいないわけだから、こういう一般的な環境での鳴り方が気になるし、作り手としてはそこできちんといい音で鳴る音楽を作るべきだと考えています。

沖井礼二

沖井礼二

──ほかにも沖井さんがリスニング機器を選ぶときのこだわりはありますか?

例えばやたらと「ローが出ます」とか、わざとらしいものは嫌ですね。それは言わば醤油を入れすぎた料理みたいなもので(笑)。音の輪郭がなくなって、本来の作り手の意図が見えづらくなってしまう。僕もいろんな機器を使ってきましたけど、結局フラットな状態で聴く音楽が一番美しいんですよね。それこそ制作側が考えに考え抜いて作っている音なわけだし、そこはアーティストとリスナーの信頼関係でもあるんじゃないでしょうか。

音楽のよし悪しがシビアに出る

──TWEEDESの「速度と力」を聴いて「なるほど」とおっしゃっていましたが、どんな気付きがあったんでしょうか。

このスピーカーで聴くと、音圧の上げ方とかバランスとか、自分の音楽の弱点がよくわかります。バランスが悪いものはちゃんと悪いまま鳴るし、その音楽の出来のよし悪しがシビアに出るなと。でも、鳴らすべきはいい音楽ですからね。そういう意味でもこのスピーカーは本当に使えるなあ。真剣に購入を考えます(笑)。これ、レコードプレーヤーも接続できるのかな。

沖井礼二

沖井礼二

──アナログ入力もあるので、フォノイコライザーを内臓したプレーヤーならそのまま使えます。アナログレコードやハイレゾ音源など音楽の楽しみ方もさまざまですが、1人の音楽リスナーとしての沖井さんは近頃どんな傾向にありますか?

最近は「ロック」「ポップ」みたいなジャンルの縦割りをとても退屈に感じていて。作り手も聴き手も、それぞれのジャンルの中に無理にでも自分を押し込もうとしてるような雰囲気を感じているんですよね。僕は本当のポップって、そういった壁をも飛び越えるエンタテイメントだと考えているんです。晩酌の友にサントラ盤ばかり選んでいるのもそのせいかな。もっと自由に、いくつものジャンルを横断するような作品を作りたい。近頃はそんなことを考えています。

プロフィール

沖井礼二(TWEEDEES)

Rickenbacker Model 4003S Firegloがトレードマークのベーシスト。1997年にCymbalsを結成し、リーダーとして個性的な作編曲及びベースプレイで注目を集める。2003年のCymbals解散後は、ソロユニットFROGや新井仁らとのバンドSCOTT GOES FORなどで活動しながら、作曲家、音楽プロデューサーとしても才能を発揮している。現在はシンガー清浦夏実とのバンド・TWEEDEESで活動中。TWEEDEESのライブでは、沖井の長すぎるMCに21歳年下の清浦が注意を促す場面が多々見られる。

Lisa「Brave Freak Out(Special Edition)」
TWEEDEES「The Second Time Around」
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mora

2016年12月21日更新