アイドルネッサンス×小出祐介(Base Ball Bear)「前髪がゆれる」対談|オリジナル曲で踏み出した未来への一歩

“名曲ルネッサンス”をテーマに古今の名曲をカバーしてきたアイドルネッサンスが、活動4年目にして初めてオリジナル楽曲に挑戦したミニアルバム「前髪がゆれる」を発表した。全4曲の作詞・作曲を手がけたのは、彼女たちが最初のレパートリーに選んだ「17才」の作者であるBase Ball Bearの小出祐介(Vo, G)。小出はテイストの異なる4つの楽曲で、“名曲ルネッサンス”から連なる新たなアイドルネッサンス像を作り上げている。

オリジナル楽曲に挑戦するメンバーの心意気と、彼女たちの新たな一歩を担うこととなった小出の心境を探るべく、音楽ナタリーではアイドルネッサンスの8人と小出の対談をセッティング。人見知りがそろったアイドルネッサンスは、緊張の面持ちで小出の到着を待ち構えた。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 石原敦志

あの日の手紙の真実

新井乃亜 あー、だめだ緊張する。

野本ゆめか これ(テーブルを指して)アンパンマンに見えるんだけど。

南端まいな ホントだ!

石野理子 だめだよ、小出さんと話してるときにテーブル見たら思い出しちゃうじゃん。

野本 だってアンパンマンなんだもん。しょうがないじゃん。じゃあもうこの机を解体するしかない。

アイドルネッサンス一同 アハハハハハ!(笑)

アイドルネッサンスと小出祐介。

小出祐介 (ドアを開けて登場)お願いしまーす。

アイドルネッサンス一同 よろしくお願いします!

──アイドルネッサンスは最初のレパートリーがBase Ball Bearの「17才」だったこともあり、同じSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)の中でも近しい関係なのかなと思っていたのですが、それほどお話する機会はなかったと聞きました。

小出 僕らのライブに来てくださったときとかに「あ、ありがとうございまーす」って挨拶する程度ですよ。「Base Ball Bearです」「アイドルネッサンスです」という“ハコ”でしかお話してないので、今日が初めてのちゃんとした会話ですね。

──小出さんはアイドルネッサンスにどんな印象を持っていますか?

小出 考えれば考えるほど、特殊なアイドルですよね。基本カバーしかやらず、それで3年やってきたってかなり異色だと思うんです。しかもそれで人気が出て “アイドルネッサンス印”になって、グループの売りも確立されました……っていうこのタイミングでオリジナルを始めるなんて、こんなの相当頭おかしいですよ。

アイドルネッサンス一同 アハハハハ(笑)。

小出 ほかのアイドルさんが持っていないこの特殊なグループコンセプトを、わざわざブレさせるわけですからね。音楽ビジネスとしては、もったいない側面がないとは言い切れないですもん。

──その状況で楽曲制作の依頼を受けるのは相当なプレッシャーですよね。

小出 いや、スーパープレッシャーでしたよ。だから作り手として、この方針に意義を見出さなければダメだと思いました。で、まず「手紙を書いてくれ」と言われたのが、最初の仕事なんですよ。あれが……去年のいつでしたっけ?

アイドルネッサンス

アイドルネッサンス一同 11月6日です。

小出 日付けまで覚えるてんだ(笑)。

──アイドルネッサンスが2017年からオリジナル楽曲に挑戦することを発表した、昨年秋のワンマンライブですね(参照:アイルネ、迸る!オワリカラ従えたバンド編成で新境地見せるネッサンス)。

小出 あのときは、今より軽く受け止めてたんです。アイルネのことはそれなりに知っていたし、どうにかなるはずだと。と言うのも、あの頃僕はBase Ball Bearの制作が山場に差しかかっていて、ほかのことを考える余裕が全然なくて。なのでひとまず、ライブの現場が盛り上がるような手紙を書こうと。

新井 アハハ(笑)。なるほど、確かに盛り上がりました(笑)。

小出 いい感じで盛り上がっちゃったことが、あとあと自分にプレッシャーをかけることになるんですけどね(笑)。もちろん、その責任を果たす意味でも必死で制作に取り組みましたが。

パンケーキ食べて、帰りにツツジの蜜を吸う

──アイドルネッサンスの皆さんは、小出さんやBase Ball Bearにどんな印象を持っていましたか? 野本さん、先ほど小出さんが来る前に何かおっしゃってましたよね?

野本ゆめか

野本 はい。あの……コイデサン(妙なアクセントで)。

小出 えと、海外の方なんですか?(笑)

アイドルネッサンス一同 アハハハハハ!(笑)

野本 小出さんは、いまだに中学生なんじゃないか説があるんですよ。この世代のことをわかりすぎていて、すごいなあって。

小出 そう言ってもらえてうれしいですけど、自分としては本質的にわかってるとは思っていなくて。なんでかと言うと、めちゃめちゃ考えてるんですよ。皆さんの世代のことをすげえ想像して書いているので。

百岡古宵 ええー、すごい……。

小出 そんな当てはまってました?

比嘉奈菜子 そうです! すべてが。

小出 ああ、それはよかったです。考えた甲斐があったなあ。実際はどうなんですか? 皆さんの、10代の生活は。

比嘉 歌詞の通りじゃない?

百岡古宵

百岡 うん。「17才」をカバーさせていただくことになったときも、「『檸檬が弾けるような日々』……ハアーッ! こういうことかー!」みたいな。私たちが言葉にできないようなことを小出さんは歌で表現していて、すごいなあと思いました。

──小出さんは誰もが経験した淡い青春を物語として描く名手だと思うのですが、17歳の小出さんが書いたわけではない物語としての「17才」像を、現在進行形で青春を謳歌する女の子たちが歌う破壊力みたいなものを、アイドルネッサンス版「17才」には感じます。

小出 それは“名曲ルネッサンス”全般に言えることですよね。青春を通り越した人が作った曲を10代の皆さんが歌うことによって、原曲になかった背景が加味されるというか。でもすごいですね。リアルタイムで「甘酸っぺえ!」と感じてるんだ。

──でもアイドルネッサンスの皆さんはどこか、現代を生きている子供たちではないような、不思議な印象がありますよね。小出さんが到着する前、メンバーの皆さんが野いちご食べたとかオシロイバナの種の粉を顔に塗ったみたいな話で「あるあるある!」と盛り上がっていて、「それって昭和で終わってるんじゃないんだ?」と驚きました。

小出 えーっ!? それ僕より前の世代の話ですよ(笑)。え、みんな学校では普通に友達と仲良くやってるんだよね? それで野いちごとか食べてるの? ツツジの蜜を吸ったり……。

アイドルネッサンス一同 あーっ!!

小出 うわうわうわ、怖い怖い怖い!!

野本 それそれ、それです! ツツジ!

小出 まだ吸ってるんだ(笑)。パンケーキとか食べに行かないの?

新井 パンケーキも食べますけど……。

小出 パンケーキ食べて、帰りにツツジの蜜を吸うんだ?(笑) 異様に朴訥としてますよね。そういう素朴さがあるから、村下孝蔵さんの曲が合ったりするのかなあ。

──皆さんは自分たちで自分たちのことを「ピュアだなあ」とは思わないですよね?

石野 変わってるなあとは思います。ほかのアイドルさんと比べても、自分たちだけ違う雰囲気だなと思うときはあります。

アイドルネッサンス「前髪がゆれる」
2017年8月8日発売 / T-Palette Records
アイドルネッサンス「前髪がゆれる」

[CD]
1500円 / TPRC-0165

TOWER RECORDS

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収録曲
  1. 交感ノート
  2. Blue Love Letter
  3. 5センチメンタル
  4. 前髪
  5. 交感ノート(inst)
  6. Blue Love Letter(inst)
  7. 5センチメンタル(inst)
  8. 前髪(inst)

全曲[作詞・作曲:小出祐介 / 編曲:イイジマケン]

ライブ / イベント情報(※終了分は割愛)

アイドルネッサンス サマーツアー 2017「君と夏を交感するネッサンス!! ~Road to Brand New Dawn~」
  • 2017年8月10日(木)東京都 新宿BLAZE
  • 2017年8月12日(土)宮城県 darwin
  • 2017年8月13日(日)愛知県 伏見JAMMIN'
  • 2017年8月20日(日)大阪府 umeda TRAD
アイドルネッサンス「前髪がゆれる」リリースイベント
  • 2017年8月8日(火)東京都 タワーレコード錦糸町店
  • 2017年8月9日(水)東京都 新宿マルイメン 屋上
  • 2017年8月11日(金・祝)千葉県 イオンモール幕張新都心 グランモール1F 屋外グランドスクエア
  • 2017年8月14日(月)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
  • 2017年8月14日(月)大阪府 あべのキューズモール3F スカイコート
  • 2017年8月19日(土)東京都 ららぽーと豊洲 シーサイドデッキ メインステージ

アイドルネッサンス×マンガ家西村ツチカ ナタリーストア オリジナルグッズ販売中

アイドルネッサンス
アイドルネッサンス
ソニー・ミュージックアーティスツ設立40周年を機に立ち上げた初のアイドルプロジェクトとして2014年1月に始動。候補生13名でスタートし、同年5月より宮本茉凜、百岡古宵、石野理子、南端まいな、比嘉奈菜子、新井乃亜、橋本佳奈の7名が正式メンバーとなった。古今の名曲を独自の歌とダンスで表現する“名曲ルネッサンス”をテーマに活動し、同年7月にはBase Ball Bearのカバー「17才」、11月には東京スカパラダイスオーケストラと村下孝蔵のカバー「太陽と心臓 / 初恋」を自主制作シングルとしてリリース。12月よりタワーレコードのアイドル専門レーベルT-Palette Recordsに所属し、2015年3月に初の全国流通盤となるシングル「YOU」を発表した。同年9月に橋本がグループを卒業し6人体制に。2016年3月に1stアルバム「アワー・ソングス」をリリースしたあと、6月には野本ゆめか、原田珠々華の2名が新メンバーとして加わった。2017年4月、レギュラー公演「アイドルネッサンスを届けるネッサンス!!」にて、小出祐介(Base Ball Bear)が手がけるグループ初のオリジナルソング「交感ノート」を初披露。8月にはオリジナル楽曲のみ4曲を収録したミニアルバム「前髪がゆれる」を発表した。
小出祐介(コイデユウスケ)
小出祐介
1984年12月9日、東京生まれのアーティスト。2001年にBase Ball Bearを結成し、高校在学中から東京都内のライブハウスを中心に活動を始める。2006年4月にミニアルバム「GIRL FRIEND」でメジャーデビューを果たし、2010年1月には初の東京・日本武道館単独公演を成功に収めた。バンドのみならず作詞・作曲家としても活動し、アップアップガールズ(仮)、東京女子流、チームしゃちほこ、南波志帆、山下智久、KinKi Kidsら多数のアーティストに楽曲を提供している。Base Ball Bearは2017年4月には最新オリジナルアルバム「光源」をリリース。8月に発売されたアイドルネッサンス初のオリジナルシングル「前髪がゆれる」では全4曲の作詞・作曲を手がけている。