クリエイターに「アイナナ」愛好家が多い理由
──「アイナナ」というコンテンツ全般の印象についても聞かせてください。改めて、皆さんはどんなところが魅力だと感じていますか?
結城 やっぱり、リアリティを感じるところなのかなあ。アイドル1人ひとりがみんな1人の人間で、それぞれに人生があって……というところまで深く描かれる作品ってあまりなかったように思いますし、そこが魅力だと思います。誰しも自分と重ねられる部分が必ずあるというか。
真崎 みんな一生懸命生きていて、時には間違ってしまうこともあるんだけど、それも含めて人生だから。「その一生懸命さを否定してはいけないよね」ということを改めて教えてくれる作品だなと思います。
kz ちゃんと“人間”を描いている印象がめちゃくちゃ強いですよね。みんなどこか欠けている部分があるというか、100%肯定できる人間としては描かれていないのが「アイナナ」の一番いいところだなと感じます。みんなそれぞれに受け手によっては「それは違うだろ」と思うような行動を取ったりもするから、ちゃんと彼らを1人の人間として捉えられるっていうか。
真崎 人間、完璧じゃないのが当たり前ですもんね。まして彼らは20歳前後の若者なわけで、完璧なほうがおかしい。
kz そうなんですよね。だから楽曲の作り手としての立場で言うと、キラキラした部分だけを描くものは求められないので、すごくやりやすいです。
結城・真崎 確かにー!
真崎 キラキラって、つまりはアイドルの作り出す虚像の部分じゃないですか。そのうえで「虚像とはいったいなんなのか?」をとことん突き詰めたのが「アイドリッシュセブン」という作品だと思うんですよ。
──確かに、ただアイドルを美しく描くだけではなく「アイドルとは?」を掘り下げていくお話でもありますよね。
真崎 うんうん、そうですね。
kz 最終的にはそのキラキラの部分を僕らが楽曲として表現するわけですけど、それが彼らの救いになれているのがありがたいなと。第6部で言えば「TOMORROW EViDENCE」がまさにそうですし。
真崎 そこがやっぱり物語であることの利点ですよね。いろんな人間らしい問題に直面するけど、物語であるからこそ、最終的に報われるところまでちゃんと描いてくれる。私たちにとってはそれがある種の成功体験として人生の参考になる部分もあると言いますか、勇気をもらえるところですよね。
──ちなみに僕が個人的に思う「アイナナ」特有の魅力って、音楽クリエイターの存在がきちんと描かれるところなんですよね。
真崎 ああー、なるほど。
結城 確かに。壮五くん、千くん、巳波くん……楽曲作りを担う人物がたくさん登場しますもんね。
──あとは桜春樹もそうですし、まげちょんとかも。いわゆるアイドルコンテンツでその部分をちゃんと描くケースは珍しいように思っていまして。
kz なくはないけど、ここまでフォーカスするのは確かに珍しいかもしれないですね。しかも、「アイナナ」の場合は彼らがけっこう軸になって描かれたりもするし。
──そのことを実際に音楽クリエイターである皆さんがどう感じているのか、個人的にすごく興味があるんですが。
kz ……すごく正直に言うと、めちゃくちゃやりづらいです(笑)。
結城・真崎 あはははは!(笑)
kz やっぱりその、そこに責任が乗っかってくるんで。
──登場人物を背負う責任?
kz そう。エクスキューズが許されない状況に追い込まれるんで、それこそ「TOMORROW EViDENCE」なんて……。
──壮五が苦心して作りあげた“会心の1曲”を具現化しないといけないわけですもんね。
結城 確かにそうだ(笑)。
kz 「それをこっちにも背負わせるんだ?」っていう。だから相当なプレッシャーがかかるんですけど、逆に言えば、だからこそできる面白いことというのも間違いなくあるんですよ。それはそれで本当にめちゃくちゃ面白いんで、貴重な経験をさせてもらえてるなあとも思いますね。
結城 うんうんうん。
真崎 あの、「Friends Day」(作中で放送された24時間番組。放送前にIDOLiSH7、Re:vale、TRIGGERが24時間合宿をして、番組のテーマソングを作るという企画に挑戦した)のときに曲ができない苦しみがけっこうストレートに描かれていたじゃないですか。あれとかはすごくこちら側の気持ちというか、「そうだよね、できないときはできないよね」と思って観てましたね。そういうところも、この作品のリアリティに一役買ってるのかもしれない。
結城 確かに。あと、千くんが旧Re:vale時代に自分の作りたい曲だけを作ってたじゃないですか。その曲作りへの向き合い方が、アイドルになることで変わっていく展開もよかったなあ。
真崎 自分のために作るのではなく……。
kz 伝える責任をちゃんと負う、っていうね。
結城 そういう心の変化がちゃんと描かれるのも、クリエイター側には刺さる部分だなって。
kz 「実際そうだよな」って思う部分がたくさんありますね。だからなのか、クリエイターには「アイナナ」愛好家が多いんですよ。
結城 へえー!
真崎 そうなんですね!
kz それくらいクリエイターに刺さる部分の多い作品だし、アイドルたちがプロフェッショナルに徹する姿勢には学ぶところも多いです。「こうありたい」という気持ちで見ることは本当に多いですね。
プロフィール
kz(ケーゼット)
アニメソング、ゲーム、J-POPなどを手がける音楽プロデューサー。ソロユニット・livetuneとしても活動している。DJとしても活躍し「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」「ULTRA JAPAN」「超会議」など多彩なフェスやイベントに出演している。
結城アイラ(ユウキアイラ)
アーティスト、作詞家、声優。2007年にテレビアニメ「sola」のオープニングテーマ「colorless wind」で歌手デビュー。2018年には声優ユニット・NOW ON AIRの3rdシングル「わたし的Progress」のサウンドプロデュースを担当し、2022年10月にはデビュー15周年を記念したシングル「Zeal」を配信を配信リリースした。
結城アイラ(ASUKA) (@airayuuki) | Twitter
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真崎エリカ(マサキエリカ)
2009年に活動を開始した作詞家。「アイドルマスター」シリーズや「アイドリッシュセブン」などのプロジェクトの楽曲のほか、大橋彩香やTrySailといった声優アーティストの楽曲の作詞も手がけている。
真崎エリカ (@masakierica) | Twitter