自分たちを超えていくI Don't Like Mondays.|TVアニメ「ONE PIECE」主題歌に込めた譲れないメッセージ (2/2)

無敵じゃないルフィが好き

──TVアニメ「ONE PIECE」の主題歌として制作された新曲「PAINT」は、アイドラにとって初めてのアニメ主題歌です。まずマンガの「ONE PIECE」は読んでました?

YU がっつり読んでましたね。中学生の頃に兄貴が読んでいて、自分も読むようになって。その時点で4巻か5巻くらいだったんですけど、それからずっと読み続けてます。

CHOJI 僕はかなり遅くて、エースが死んだときくらいから読み始めたんですよ。

SHUKI 自分はチョッパーが登場した頃から読んでるので、だいぶ初期からですね。感動的な映画とかを観ても全然泣けない性格なんですけど、チョッパーのエピソードを読んだときに泣きそうになって。マンガでそういう体験をしたのは初めてでした。

KENJI 僕も初期の頃から「ジャンプ」の連載で読んでましたね。特にサンジが好きで。

──KENJIさん、ちょっとサンジに似てますね。

KENJI (笑)。海上レストランオーナー(サンジの育ての親)のゼフも好きですね。うちの親父も寡黙な人なんですけど、それもちょっと重なって。

KENJI(B)

KENJI(B)

──皆さんそれぞれ思い入れがあるんですね。新主題歌の「PAINT」は疾走感あふれるロックチューンですが、制作はどのように進められたんですか?

YU まずアニメの制作サイドと打ち合わせさせてもらったんです。僕とSHUKIが出席して、自分たちの曲が使われるのはどのあたりのエピソードなのかを聞いて。あとは「ONE PIECE」のアニメ主題歌に必要な要素をレクチャーしてもらったり。それを持ち帰って、メンバー全員で共有したうえで制作を始めました。僕自身も「ONE PIECE」のファンだし、アイドラらしさを出そうとは思ってなくて。

CHOJI そうだね。

YU アニメがさらによくなるような曲を作るべきだし、それが映像と音楽を合わせる意味だとも思うんですよ。バンドのエゴを押し付けるつもりはなかったし、メンバーも同じ意見でした。具体的には、全体の疾走感、ワクワク感が一番大事だと思っていて。観てる人に「始まった!」と思ってもらえるようなサウンドというか。

SHUKI メンバー全員、オープニング映像もイメージしてましたね。その時点ではまだ映像はないんだけど、アニメが始まったときに、どういう音楽が流れてきたらいいかを考えて。

CHOJI そうだね。テンポが速いから、あまり細かいフレーズを弾くとスケールが小さくなるような気がして。北欧感、バイキングのイメージを取り入れながら、1回聴けばすぐに印象に残るようなフレーズを意識していました。音質もめちゃくちゃ研究しましたね。アンプ、ギター、エフェクターの組み合わせをいろいろ試して……無限の沼にハマりました(笑)。

CHOJI(G)

CHOJI(G)

SHUKI ワクワク感を出すために曲の展開も工夫していて。セクションごとにかなりサウンドが違うんですが、それをわかりやすく出すのがドラムの役割なのかなと。デモの段階では打ち込みだったのをレコーディングでは生で録ったんですが、打ち込みっぽい感じも出したくて、2テイク分のドラムを重ねてるところもあったり。かなり緻密に積み上げてますね。

KENJI 歴代の「ONE PIECE」のオープニングテーマを聴いて、それぞれのアプローチも研究しました。ベースに関してはアタック感が大事で。ピックを弾く位置、弦に当てる場所もかなり考えましたね。

──メンバー全員のプレイヤビリティも生かされてるんですね。もちろん、歌詞もめちゃくちゃ大事ですよね。

YU そうですね。歌詞が一番大事だし、「ONE PIECE」をどう解釈して、それをどんなふうに曲に落とし込むか、すごく考えました。正直、最初は不安だったし、プレッシャーもありました。

SHUKI そうだよね。

YU まず、原作のマンガを読み直すところから始めて。尾田栄一郎先生の真意はわかりませんが、自分自身がどういう部分に勇気をもらって、どうして感動したのか? どこに共感したのかを改めて考えてみたんです。もう1つ心がけていたのは、アニメを観終わって、現実に戻ったときに役に立つ何かを表現にすること。「ONE PIECE」の世界に寄り添いながら、それだけで完結させたくなくて。ノンフィクションとフィクションを行き来する曲というか。

YU(Vo)

YU(Vo)

──現実の生活や人生にもパワーを与えたい、と。

YU はい。コロナ禍で世界の混乱が続いている中で、まずは自分自身を勇気付ける曲にしようと思ったんです。僕らもそうですけど、ライブができなくなったり、音楽業界はダイレクトに影響を受けたじゃないですか。個人的にも「この先どうしよう」と思ったし、改めて自分自身と向き合うきっかけになって。その中で「バンドが好き」「音楽が好き」という根本の部分に立ち返って、「これだけは譲れない」という気持ちになれたんですよね。それを「PAINT」の歌詞にも結び付けて、「好きなものを追求すれば、道は切り拓けるはず」というメッセージを込めました。

──なるほど。「羅針盤」「魂の示す航路」など、「ONE PIECE」の世界とリンクした言葉もちりばめられていて。

YU 「いざ手を伸ばして 風を切り裂いて 暗闇を蹴っ飛ばして」はまさにそうですね。ルフィ、ゾロ、サンジを想起してもらえるワーディングだと思うし、そういう言葉を汲み上げることでアニメともつながっていくのかなと。これは物語全体から感じることですけど、仲間がいること自体が宝物だし、そのエッセンスも表現したかったんですよね。

──2番の「今いる居場所が 理想とは違っても 僕は僕を超えていくんだ」というフレーズもグッと来ました。

YU ありがとうございます。その歌詞は去年の夏のオリンピックの影響もあって。普段はスポーツを観るタイプではないんですが、すごく感動したんですよ。競技に打ち込んで、目標を達成する姿に心を打たれたんですが、そうやってフォーカスされる選手ってほんのひと握りじゃないですか。

KENJI うん。

YU それはアスリートだけじゃなくて、いろんな立場の人に当てはまるんじゃないかなって。僕自身も目標を達成したわけではないし、メダルをもらったこともなくて。それでも明日は来るし、生きていかなくちゃいけない。そのときにどうやって自分を奮い立たせるか?ということも「PAINT」に込めたかったんですよね。

──勝者だけではなく、理想とは違ってもがんばる人々にエールを送る。

YU そうですね。僕が「ONE PIECE」を好きな理由の1つは、ルフィが無敵じゃないところなんです。何度も負けるし、大切な存在を失って自分の無力さを思い知る場面もある。特にエースが死んだときに号泣するシーンは印象に残ってるし、あの姿に僕は勇気をもらったんですよね。

誰に何を言われても「自信作です」

──強く、深いメッセージが込められた歌詞ですが、メンバーの皆さんはどう捉えていますか?

SHUKI 30代になった僕らがこういう曲をやることは、今の世の中的にも必要なことだと思っていて。この前もスタッフ、メンバーを交えて今後のアイドラについてどうしていきたいか話したんですが、自分たちが好きなのは表面的にきれいなものではなくて、仲間同士の情熱だったり、何があっても進み続ける姿なんですよ。以前のアイドラは表面的に着飾っているイメージがあったかもしれないけど、そういう僕らが「ONE PIECE」の主題歌をやることに意味があるのかなと。YUの歌詞もすごくストレートだし、決意が伝わってきて。こういう気持ちは何歳になっても忘れたくないし、この先の活動にとっても大事だと思いますね。

SHUKI(Dr)

SHUKI(Dr)

KENJI アニメの世界を大事にしながら、YU自身の感情もしっかり出ていて。すごくバランスがいいし、初めて歌詞を読んだときは感動しました。完全に期待を超えてきましたね。

CHOJI うん。変な言い方ですけど、「これで採用されなかったら、しょうがない」と納得できるなと。

YU 「今いる居場所が 理想とは違っても」は、まさに自分が感じていることなんで。この曲がどんなふうに「ONE PIECE」と共鳴するのか、めちゃくちゃ楽しみです。たぶんいろんな意見があると思うんですが、誰に何を言われても「自信作です」と言える曲になったので。

──I Don't Like Mondays.の2022年は「PAINT」のリリースから始まります。今年はどうなりそうですか?

YU 「ONE PIECE」の主題歌をやらせてもらうことで、必然的に注目度は高くなると思うんですよ。それはすごくうれしいし、もちろん僕らにとっても大きいことなんですけど、「PAINT」が代表曲になるのは違うだろうなという気持ちもあって。

SHUKI こういうフェーズを迎えて周囲からの期待も高まってる中、次に自分たちが何をやるかが大事で。個人的にはどこまで軸を広げられるかがポイントだと思ってます。「アイドラの音楽はこれです」と枠を決めるのは、自分たちのリミットを決めてしまうことになるし、皆さんの想像を超えるような活動をしてきたいなと。

YU 僕らが培ってきたアイドラを自分たちで超えていくというか。それ自体がアイドラらしさだと思うんですよね。

KENJI 「PAINT」でも「僕は僕を超えていくんだ」と歌ってますからね。この曲を超えるのは相当大変だし、プレッシャーもあるけど、やらないとダメですね。

CHOJI 自分たちがやってきたことを信じながら、守りに入らず、どんどん新しいことをやっていきたいですね。2022年は自分たちにとって大きなチャンスだと思うし、どんどん面白いことに挑戦したいです。

YU 制作もやらないと。未来の僕らは絶賛制作中です(笑)。

I Don't Like Mondays.

I Don't Like Mondays.

ライブ情報

I Don't Like Mondays. FRIDAY LOVERs TOUR 2022 "B SIDE" supported by Fanicon

  • 2022年2月12日(土)愛知県 SPADE BOX
  • 2022年3月5日(土)大阪府 BananaHall
  • 2022年4月23日(土)東京都 NEW PIER HALL

プロフィール

I Don't Like Mondays.(アイドントライクマンデイズ)

YU(Vo)、CHOJI(G)、KENJI(B)、SHUKI(Dr)からなる4人組バンド。2012年に東京・表参道で結成され、2014年9月にミニアルバム「PLAY」でメジャーデビュー。ソウル、R&B、ファンクなどブラックミュージックを含むさまざまなテイストを取り入れたスタイリッシュなロックサウンドで人気を集める。2019年にエイベックスに移籍し、同年4月に移籍第1弾シングル「Do Ya?」を配信リリース後、8月に約3年ぶりのアルバム「FUTURE」を発表。2020年に配信シングル「Plastic City」「全部アナタのせいなんだ」「Sunflower」を立て続けに発表し、8月からは5カ月連続配信リリースを行った。2021年8月に4thアルバム「Black Humor」をリリース。2022年1月にTVアニメ「ONE PIECE(ワンピース)」の主題歌となる「PAINT」を配信した。