ヒステリックパニック × BACK LIFT|正反対のマインドで惹かれ合うレーベルメイト

ピースフルな歌詞嫌いなんですよ

──作詞の面での違いはどう感じますか?

KICHIKU 俺は歌詞に自分の経験談や自分の感じたことしか投影できんけど、ともは自分の頭の中に世界があって、その世界での出来事や感情を歌詞に持って来れるから、全然違うんやなって。

とも(Vo / ヒステリックパニック)

とも 俺ももちろん心情を書くときは体験談とか自分が思ったことを入れるんだけど、例えばそのまま感情を描写するっていうよりは、曲のテーマにまつわる単語をとりあえずバーって書き出すんですよ、200個ぐらい。で、その中から使える言葉をチョイスして、チョイスした中からまたチョイスして……って絞った単語をパズルみたいに組み合わせてくっていう歌詞の書き方してます。

KICHIKU すげえ変わっとんな。しかもその中で韻踏めるワードで並べたりするんやろ?

とも そうそう。だからめっちゃ時間かかる(笑)。例えば今作の「ガチ恋ダークネス」だったら「ヒスパニ史上最もヘヴィでダークなラヴ・ソング」っていうテーマがあったので、恋愛にまつわる重たいワードを書き出して、その中から使えそうなものを抜き出して……。

──じゃあ歌いたいことがあって歌詞を書くということはないんですか?

とも あ、歌いたいこととかまったくないんですよ。このバンドで何か言って誰かに刺さるとも思ってないし。「ピースフル」と言ってるバンドとの対談で言うのアレなんですけど、俺はひねくれてるので、ピースフルな歌詞嫌いなんですよ(笑)。

一同 あはは(笑)。

とも よく「がんばれ!」とか歌ってる曲、あるじゃないですか。そういう曲聴いて「お前に何がわかんねん!」とか思っちゃう派なんで。自分が書いてて楽しくなったり、新しい表現方法見つけて面白がったりするために書いてるというか。病んでる曲とかは自分が実際に沈んでるときに思ってることを書いてるだけで、それで誰かの背中を押すわけじゃない。ただ「俺はこう思ったよ」って書いて、それが「その感覚わかります」ってシンパシーを感じてもらえるんだったらそれはそれでうれしいなとは思うけど。どっちかと言うと「こんな言葉遊び、面白くね?」って提示してる感覚かな。

ピースフル派のTack朗、次第にメンヘラに

KICHIKU ほんまに正反対やな。

とも 正反対っす。メッセージ性ゼロなんで。

Tack朗 むしろ共通してるとこってどこなんだろう。

とも 名古屋……?(笑) たぶん逆に自分にないものを持ってるから仲よくなるんやろな。

小林'KICHIKU'辰也(Vo, B / BACK LIFT)

KICHIKU ピースフルなもの嫌いって言われたからどうしようって思ってるけど(笑)、俺もただただ「がんばれ!」って言うのは好きじゃないかな。俺は自分と同じ意味を経験して、抜け出せずにいる人を抜け出させたいっていう考え方で。

Tack朗 ちなみに俺はピースフル好きだけどね。

KICHIKU 好きそうやもん(笑)。

とも 俺はメロディが作れないので、Tack朗と$EIGOが仮歌を入れた状態でデモを持ってきて、それに俺の歌詞を入れていくっていう曲作りなんですけど、Tack朗はめちゃめちゃピースフルな歌詞を入れて持ってくるんですよ。

Tack朗 去年出したアルバム「ノイジー・マイノリティー」に「おわかれかい」っていう曲があるんですけど、その仮歌詞とか「きっときっと大丈夫、きっと大丈夫、明日が来るから」みたいな感じだったよね?

とも もう、俺が一番嫌いなタイプ。しかも仮タイトルは「きっと大丈夫」だった(笑)。

Tack朗 メロディめちゃくちゃいいから「これCMソングとかにしたら絶対売れる!」と思って、ピースフルな歌詞を当てたのに、ともから「ハナレバナレになるなんて 逢えなくなるなんて初めから分かっていた」っていう正反対な歌詞が上がってきて。

KICHIKU ネガティブやなあ。

Tack朗 逆に楽しいですけどね。自分が作ったポップなメロディに、よくここまで偏屈な歌詞乗せてくるなって。で、レコーディングで自分のパートを歌うときにはともを憑依させて歌うっていう。僕のもともとのパーソナリティとしてはKICHIKU派だと思うんですよ。「イエーイ! 楽しくやろうぜ!」みたいな。でもともが作る歌詞を歌うようになって、だんだんメンヘラになってきてる気がする。

とも 洗脳ってこうやってやっていくんですね。

メジャーフィールドで戦うということ

KICHIKU メジャーって場所をまだ俺らはまったく知らんから、ヒスパニはメジャーフィールドでどういう心情で戦っとるんやろう?っていうのを聞きたい。

とも 反社会的なこと言ったら怒られる。

KICHIKU うそー! 怒られる?

とも 歌詞でね。やっぱり好き勝手歌ってたインディーズのときよりは、言葉を選ばないといけないから制約があるのは事実なんだけど、そのぶん表現の力が付いた気がする。使えない言葉があるからこそ、「じゃあそれを伝えるためにどう表現するか?」と考えるうちに、作詞する人間として表現の幅が広がっていくんじゃないかな。ヒスパニは特に、メジャーに行って今まで通りのやり方ではうまくいかないことが多いんだけど、メジャーならではの戦い方をだいぶ身に付けられたと思う。いまだに怒られるけど(笑)。いろんな面でバンドの成長につながる気がするんで、がんばってください。

KICHIKU がんばります!

とも がんばれ、後輩!(笑) メロディックパンクのシーンって最近また盛り上がってきてる気がするんだよね。逆に俺らのいるラウドシーンは正直ちょっと衰退してるんだけど。BACK LIFTは盛り上がってきてるメロディックパンクシーンをどう見てて、どうメジャーで戦っていくの?

KICHIKU 確かにHi-STANDARDの復活のおかげもあって、このシーンは盛り上がってきてるとは思う。だけどじゃあメロディックパンクのバンドが全部売れるかと言うと、もちろんそうではなくて。例えばWANIMAとか04 Limited Sazabys、Dizzy Sunfistが売れてるのって、すごく各々に武器があるからで。「じゃあBACK LIFTはどうするか?」と言うと、もちろんメロディックパンクっていう基盤は絶対にブレないようにしたいんやけど、俺らは日本語詞もできるし、ポエトリーリーディングとかも取り入れられるようになってきてて、そういう俺らにしか作れへん曲で勝負していきたい。あと俺らだけで売れるんじゃなくて、横……しかもいろんなジャンルの同世代のバンドと一緒に上に行きたいと思ってる。それの1つがヒスパニやと思ってるんやけど。今で言ったら「TRIPLE AXE」(HEY-SMITH、coldrain、SiMの3組が2012年から毎年開催している合同ライブ)とか最強やん。

Tack朗 確かに。

KICHIKU だからメジャーでは、そういう横のつながりを大切にして戦っていきたい。ヒスパニは何を武器にしてるの?

とも 俺らは隙間産業だと思ってて。「TRIPLE AXE」の3組のような強いバンドがたくさんいて、じゃあその中でどう戦っていくかって考えたときに、うちらって見た目も声も、誰かとかぶることってないと思うんだよ。まず誰も俺らみたいなことやりたいと思わないと思うので。なので、このごちゃごちゃした感じをより追求していきたいと思ってます。よろしく、後輩!(笑)

KICHIKU はい! よろしくお願いします!(笑)

左からとも(Vo / ヒステリックパニック)、Tack朗(G, Vo / ヒステリックパニック)、小林'KICHIKU'辰也(Vo, B / BACK LIFT)。
ヒステリックパニック「LIVE A LIVE」
2017年6月21日発売 / BLACK SHEEP RECORDS
ヒステリックパニック「LIVE A LIVE」

[CD]
2268円 / VICL-64803

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CD収録曲
  1. A:LIVE
  2. ガチ恋ダークネス
  3. 月曜日が始まんで~
  4. Head Bang!
  5. 全日本ぬるぬる音頭
  6. ブルーバード
  7. swan song
BACK LIFT「BLANKS」
2017年5月24日発売 / BLACK SHEEP RECORDS
BACK LIFT「BLANKS」

[CD]
1944円 / VICL-64791

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CD収録曲
  1. White
  2. Don't worry be alright
  3. Bitter
  4. You're A Fool
  5. THE LINKg
ヒステリックパニック「DEAD or ALIVE」TOUR 2017

2017年8月29日(火)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO(※ワンマンライブ)

2017年9月1日(金) 千葉県 千葉LOOK

2017年9月2日(土) 埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3

2017年9月9日(土) 長野県 ALECX

2017年9月10日(日)富山県 Soul Power

2017年9月15日(金)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎

2017年9月17日(日)山梨県 KAZOO HALL

2017年9月23日(土・祝)青森県 八戸ROXX(※ワンマンライブ)

2017年9月24日(日)岩手県 the five morioka

2017年9月26日(火)茨城県 mito LIGHT HOUSE

2017年9月27日(水)福島県 郡山CLUB #9

2017年10月5日(木)愛媛県 松山サロンキティ

2017年10月6日(金)高知県 X-pt.

2017年10月14日(土)新潟県 CLUB RIVERST

2017年10月15日(日)群馬県 高崎club FLEEZ

2017年10月21日(土)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA

2017年10月22日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠

2017年10月26日(木)北海道 CASINO DRIVE

2017年10月27日(金)北海道 札幌KRAPS HALL(※ワンマンライブ)

2017年10月29日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX(※ワンマンライブ)

2017年11月3日(金・祝)石川県 vanvanV4(※ワンマンライブ)

2017年11月5日(日)東京都 TSUTAYA O-EAST(※ワンマンライブ)

2017年11月11日(土)広島県 SECOND CRUTCH(※ワンマンライブ)

2017年11月12日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO(※ワンマンライブ)

2017年11月18日(土)福岡県 DRUM Be-1(※ワンマンライブ)

2017年11月23日(木・祝)香川県 DIME(※ワンマンライブ)

BACK LIFT「BLANKS TOUR 2017」

2017年7月6日(木)大阪府 OSAKA MUSE

2017年7月14日(金)東京都 TSUTAYA O-WEST

2017年7月21日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

ヒステリックパニック
ヒステリックパニック
2012年に名古屋で結成されたラウドバンド。現在はとも(Vo)、Tack朗(G, Vo)、$EIGO(G, Cho)、おかっち(B)、やっち(Dr)の5人で活動している。2013年7月にタワーレコード限定でリリースした4曲入りCD「4U」がヒット。ANGRY FROG REBIRTH、HER NAME IN BLOODといったバンドのツアーにゲスト出演し、各地で知名度を上げる。2015年4月にシングル「うそつき。」でメジャーデビュー。7月にフルアルバム「オトナとオモチャ」、2016年4月にシングル「シンデレラ・シンドローム」、7月に2ndフルアルバム「ノイジー・マイノリティー」をリリースし、2017年6月にアルバム「LIVE A LIVE」を発表した。
BACK LIFT(バックリフト)
BACK LIFT
2007年に名古屋で結成されたスリーピースバンド。メンバーチェンジを経て、現在は小林'KICHIKU'辰也(Vo, B)、深谷'YU-PON'雄基(G, Cho)、都築'HEAVIN'史生(Dr, Cho)の3人で活動している。2010年よりTRUST RECORDSに所属。3枚のフルアルバム、2枚のミニアルバム、3枚のシングルをリリース。2017年にミニアルバム「BLANKS」をビクターエンタテインメント内のレーベル・BLACK SHEEP RECORDSよりリリースし、メジャーデビューを果たした。