HYDE「TAKING THEM DOWN」インタビュー|今こそ反撃の狼煙をあげるとき。獰猛な新曲が示すHYDEの現在地 (2/2)

100%のHYDEを見せる

「TAKING THEM DOWN」を携えてのワンマンツアーは、全国7都市で合計20公演が行われる。ツアーファイナルの舞台は幕張メッセ。アリーナ規模でのスタンディング形式のライブは2019年12月に開催された「HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL」以来、約4年ぶりとなる。

「ツアーは今回からバンドメンバーが増えてツインギターになるので、これまでとは雰囲気が変わると思います。当初はこれまでのソロライブと同じ編成でツアーを回る予定だったんだけど、スケジュールの調整がなかなかうまくいかなくて。どうしようかと考えている中で、ツインギターでやってみるのはどうかと提案を受けて。案外アリかもなと思ってツインギターでやってみることにしました。最初はどうなのかな?と思ったけど、こうやって編成を自由に変えられるのも僕の強みだし、アリなんじゃないかと。ステージのセットはシンプルになります。ここ数年は『NEO TOKYO』(近未来の東京をイメージした架空都市。2019年のライブからモチーフとして用いられてきた)のステージセットを使ってたけど、ライヴハウスは趣向を変えて密室感を出します。ギターも増えるし、かなり激しいライブになると思いますよ。すべてのコロナ禍の制限が取り払われたタイミングで開催する『HYDE LIVE 2023』は、これまで培ったものをすべて反映した100%のHYDEが観られる機会になると思います。」

HYDE

従来とは異なる試みがある一方で、HYDEは変えたくないことについても言及した。

「今、チケット代が全体的に高くなってると思うんです。さまざまなものの価格高騰もあって仕方ない部分ではあるんですけど、そこはまだ抵抗したい。できるだけ多くの人に門が開かれている状態を作りたいので、ライブハウス公演のチケット代は今までと同じ税抜き6660円にこだわりました。ツアーファイナルのアリーナ公演のチケットの料金は、会場が大きくなる分、セットなど大掛かりになるのでどうしてもライブハウスよりは上がってしまうんですけど、それでも今回は楽天NFTが協賛してくれることで『ANTI FINAL』(2019年12月開催の千葉・幕張メッセ国際展示場4~6ホール公演)より値下げしています。」

試行錯誤を余儀なくされたコロナ禍において、HYDEも多くのアーティスト同様にトライ&エラーを繰り返してきた。ライブハウスを舞台にした配信ライブや、長年得意としていたスタンディングライブではなく、着席でも楽しめるアコースティックスタイルとなった「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」、オーケストラを率いての「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」を開催するなど、新たな可能性を提示してきた。率先してライブ活動を展開する彼の姿に影響を受けたアーティストも多かったことだろう。

「ライブをやらないと周りのスタッフがごはんを食べられないというのが根本的にあったんですよ。だから何かしないといけないとコロナ禍の初期から思ってました。一時はライブハウスがどんどん潰れて、感染を広げる悪の巣窟みたいな感じで言われたことも苦しかった。そんな状況下であっても、ルールを守りながら面白いことをすることで、スタッフもすごく盛り上がって、『まだ生きていけるな、俺たち』と確かめることができた。率先して活動する中で、日本のバンドマンたちが、連帯して少しずつルールを守りながら、音楽の現場、元の世界を取り戻そうと努力していったと思うんです。直接会ったり話したりはしなくても仲間意識が芽生えた。共通の“敵”がいると人って団結するじゃない? コロナ禍はそういう意味でアーティスト同士の団結力が強くなりましたね。」

HYDE「TAKING THEM DOWN」ジャケット

HYDE「TAKING THEM DOWN」ジャケット

音楽も絵も“キャッチー”であるかどうか

活発な音楽活動を展開するHYDEだが、最近では自身が兄貴と慕う画家・井上文太の初画集「閃き ~ INSPIRATIONS ~画狂人 井上文太」をプロデュースしたり、その井上のアトリエで絵を共作したりと、アート方面での才覚も披露している。その活動が音楽にフィードバックされることはあるのだろうか。

「音楽自体にアートの影響を直接落とし込むのは難しいんですよね。でも、ただ曲を作るだけじゃなくて、ジャケットのアートワークやミュージックビデオのような表現方法もあって、いろいろつながっているんです。ひと言で音楽と言っても表現が入り組んでいるから、僕は絵が描けてよかったなと思います。とはいっても絵はデザインの提案やアイデアの共有のために描くことが多くて、作品として発表するつもりはないんです。絵を描く時間があったらお酒を飲んじゃうしね(笑)。でも、絵を描くときもキャッチーであるかどうかは念頭にありますね。例えば自分の部屋に飾りたいかどうかなんです。それは音楽も一緒。ソロでは自分が聴きたい、ライブで盛り上がる曲を作ってる。自分にとってキャッチーかどうかが、音楽でもアートでも指標になってますね。」

HYDE

「人の評価が作品作りに影響することは?」そんな無粋な質問をぶつけたところ、HYDEはきっぱりとこう返した。

「人の評価をどこまで信用していいのかわからないんです。もちろん人の意見には耳を傾けるけど、結局は自分が気に入らないと、たとえ他人に褒められても納得できない。自分がよさを理解していないのに人には薦められないというか。」

確たる信念のもと、音楽にもアートにも向き合っているHYDE。次に期待されるのは「ANTI」(2019年リリース)以来となるフルアルバムのリリースだ。制作期間中という話を耳にし、進捗を聞いてみたところ……。

「今はどういう作品にしようかと考えてるところなんです。4年ぶりのアルバムだけど、その間にシングルはたくさん出してきたので。曲数としてはあと数曲作ればいい状態なんだけど、それがなかなか……モード的には『ANTI』を引き継ぎつつ、新しいアルバムでひと区切りつけたいなと思ってます。そもそも僕の場合、余生みたいなものなので(笑)、焦らずに自分が納得する作品を作っていきたいんです。」

「余生」というにはあまりにアグレッシブすぎる活動ぶりにツッコミを入れると、HYDEは笑いながらこう答えた。

「今の僕は売れることを気にしてないんですよ。自分が好きな音楽を作って、それが売れてくれたらいいなくらいの気持ちなので。『TAKING THEM DOWN』のサウンドからも伝わる通り、アルバムは残念ながらかなり攻撃的な内容になると思います(笑)。」

HYDE

ライブ情報

HYDE LIVE 2023

  • 2023年6月17日(土)東京都 Zepp Haneda(TOKYO) ※SOLD OUT
  • 2023年6月18日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)(BEAUTY & THE BEAST)
  • 2023年6月20日(火)東京都 Zepp Haneda(TOKYO) ※SOLD OUT
  • 2023年6月21日(水)東京都 Zepp Haneda(TOKYO) ※SOLD OUT
  • 2023年6月24日(土)神奈川県 KT Zepp Yokohama ※SOLD OUT
  • 2023年6月25日(日)神奈川県 KT Zepp Yokohama ※SOLD OUT
  • 2023年7月1日(土)福岡県 Zepp Fukuoka ※SOLD OUT
  • 2023年7月2日(日)福岡県 Zepp Fukuoka ※SOLD OUT
  • 2023年7月5日(水)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2023年7月6日(木)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2023年7月8日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside ※SOLD OUT
  • 2023年7月9日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2023年7月19日(水)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2023年7月20日(木)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2023年7月22日(土)愛知県 Zepp Nagoya ※SOLD OUT
  • 2023年7月23日(日)愛知県 Zepp Nagoya ※SOLD OUT
  • 2023年8月5日(土)宮城県 チームスマイル・仙台PIT ※SOLD OUT
  • 2023年8月6日(日)宮城県 チームスマイル・仙台PIT ※SOLD OUT

HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT

  • 2023年9月9日(土)千葉県 幕張メッセ 幕張イベントホール
  • 2023年9月10日(日)千葉県 幕張メッセ 幕張イベントホール

HYDEPARK 2023

  • 2023年6月19日(月)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2023年7月7日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2023年7月21日(金)愛知県 Zepp Nagoya

プロフィール

HYDE(ハイド)

L'Arc-en-Ciel、VAMPSのボーカリスト。2001年にソロ活動をスタートし、日本のみならずワールドワイドに活動している。ツアーの一環でアメリカ・Madison Square Gardenや東京・国立競技場などで単独ライブを行い成功を収めている。2022年6月より対バン形式のライブハウスツアー「HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH」を開催。ソロ活動20周年を迎えた2021年に開催した「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」「20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU」の模様を収めた映像作品を、2022年7月にリリースした。2023年6月に新曲「TAKING THEM DOWN」を配信リリース。同月よりワンマンツアー「HYDE LIVE 2023」を開催する。