HYDE|アコースティックツアー「ANTI WIRE」で見出した活路

僕はO型なんで

──おっしゃる通り「ANTI WIRE」全編にわたってさまざまなアレンジが楽しめる内容になっていますが、ご自身として一番手応えを感じた曲はありますか?

「DEFEAT」とか「LET IT OUT」は、ハードロックサウンドでありながらジャジーになっていて、ほかにこういうアレンジをする人はいないんじゃないかというくらい新しい感じがしましたね。自信があるというか、いろんな人がきっとカッコいいって言ってくれるやろなと。「DEFEAT」はまだライブでオリジナルバージョンをやったことないんですけど(笑)。強弱の“弱”が出ている「EVERGREEN」とか「ANOTHER MOMENT」も新鮮だったね。ここまで音量を落としたことないなって。

──確かにアコースティックでありながら、激しさも穏やかさも両方味わえるようなライブでした。

あとはやっぱりファンが喜ぶような代表曲をやってあげたいし、コアファンだけじゃなくライトな人たちも喜べるような選曲をしたいと思いつつ、いかに世界観と両立させるか考えました。例えば「HELLO」は1回セットリストから外したんです。明るすぎて世界観と合わないなと思って。でも、曲が足りないし、もう1回トライしようという話になって、その結果PABLOがギターを弾かない形になりました。

──その理由は?

ピアノメインでバッキングをしたときに、ギターが入るところがなかったんです。それで曲が成立するようにとPABLOがギターを弾かないという判断をした。彼はギタリストだし、弾かないという決断は普通なかなかできないと思うんです。でもPABLOはそういう場面で“引く”ことができる。「HELLO」ではすっかり“タンバラー”になってましたね(笑)。

──個人的には「I'm so happy」「GLAMOROUS SKY」「KISS OF DEATH」といったセルフカバー曲がシティポップ風の洗練されたアレンジになっていて、音源も欲しくなりました。あとグッときたのはやはり最後の「ORDINARY WORLD」でしょうか。HYDEさんは早く普通の世界が戻ってきて、この曲を歌う日が来なくなってほしいとおっしゃっていましたが、今回は歌わざるを得ない状況だったのかなと。

HYDE「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」の様子。(撮影:岡田貴之)

コロナ禍真っ只中だったんでね。でも、ファンが灯すスマホのライトが本当にきれいで、あの光を見ていると願いが届くような気持ちになるんです。

──MCの中で客席を前に「僕は幸せ」という言葉も口にされていて。

ステージで歌っていて楽しいというのももちろんあるんですけど、ファンが喜んでいるのを生で感じられたのが大きくて。僕はO型だから人に合わせるほうで、自分がしたことに対して相手が喜んでるかどうかはけっこう重要なんです。ファンがいなかったら音楽は続けていないでしょうし。

──ソロを始めた頃からそういう気持ちだったんですか?

いや、1stアルバムの「ROENTGEN」(2002年3月発売)を作った頃はあまりファンのことは考えてなかったかもしれないです。ライブもほとんどしなかったし、それぞれが家で聴いてくれればいいやっていう。別に顔が見えなくてもよかった。でも、今となってはファンのことを想像しないでアルバムを出すのはつまらないですね。

HYDE「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」の様子。(撮影:岡田貴之、田中和子)

HYDE「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」の様子。(撮影:岡田貴之、田中和子)

20年前の自分にかける言葉
「悔いを残すな」「やることやれ」

──「ANTI WIRE」の成功を経て、「ROENTGEN」の再現ツアーが6月にスタートします。

「ANTI WIRE」はロックモードの延長線上でステージにいる5人だけで演奏したんですけど、次はストリングスや管楽器も入れた壮大なオーケストラコンサートになります。同じアコースティック公演だけど聴感上は全然違うと思うし、アコースティックってこんなに幅広いんだなということを感じてもらえると思います。

──ひと言でアコースティックと言っても違う内容だと。

「ROENTGEN」自体がオーケストラが入っている曲が多かったので、再現するにしてもオーケストラがいないと成立しないんです。デジタルにしてトラックを流すという手段もあるけれど、今回はあえて20年前のアレンジでやりたいと思ってます。

──“エピソード”的には何に当たるんでしょうか?

あ、「ROENTGEN」の再現ツアーは「ANTI」とは関係なくて、自分の中では全然別物。「ANTI」の続きに関しては「DEFEAT」や「LET IT OUT」が収録されたアルバムを来年以降に発表してつなげていくつもりです。

──両極端の活動を同時に回していくんですね。切り替えが大変そうですが……。

切り替えは全然問題ないです。状況に合わせて変わっていくO型なんでね(笑)。

──そのほか、特別公演として、7月31日と8月1日に京都の平安神宮でのコンサートが行われると聞きました。

もともと「ZIPANG」のミュージックビデオを京都の東寺で撮影した頃から、いつか神社やお寺でライブをしたいという気持ちがあったんですけど、このタイミングならやれるかな?って考えてたら、平安神宮での話がまとまりました。神社で神降ろしじゃないけど、そんなコンサートができたら歴史的にカッコいいんじゃないかと。独特な場所なので、そのときにしかできないことをやりたいと思っていますし、今からワクワクしてますね。平安神宮でいろんなアーティストがライブをされていると思いますが、「一番すごい」と言わせるつもりで挑みます。野外だから天気だけが心配なんですけどね……。

──野外公演の宿命ですね。「ROENTGEN II」も現在制作中とのことですが、「ROENTGEN」制作時の20年前の自分に言葉をかけるとしたらどんなことを伝えますか?

なんやろなあ、「やることやっとけよ」って感じじゃないですか? 「悔いを残すな」「やることやれ」と。20年間残るアルバムが生まれるんだからがんばりなさいと(笑)。

──ちなみにその頃は将来的にツアーの開催や、続編を作る構想などは……。

もちろんないですよ。精も根も尽き果てて、「ROENTGEN」みたいなアルバムは二度と作りたくないし、無理だと思ってました。

──でも時を経て向き合える気持ちが芽生えたんですね。その「ROENTGEN II」の進捗はいかがですか?

まだ全然できてないですけど、制作は楽しいですね。以前とは作り方が変わってきて旋律がメインになってる。これまではメロディよりリフや展開を意識してたけど、やっぱりメロディがメインになると新鮮で面白くて。リリースは先ですが、「ROENTGEN」の再現ツアーで何曲かは新曲も披露する予定です。

──「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」を経て、ソロ20周年のアニバーサリーイヤーがいよいよ始まると。

はい。楽しみにしていてください。

ツアー情報

20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021
  • 2021年6月25日(金)東京都 中野サンプラザホール
  • 2021年6月26日(土)東京都 中野サンプラザホール
  • 2021年6月30日(水)大阪府 オリックス劇場
  • 2021年7月1日(木)大阪府 オリックス劇場
  • 2021年7月21日(水)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2021年7月25日(日)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
  • 2021年8月7日(土)千葉県 千葉県文化会館
  • 2021年8月9日(月・祝)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2021年8月11日(水)埼玉県 川口総合文化センターリリア メインホール
  • 2021年8月14日(土)神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
  • 2021年8月15日(日)神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
  • 2021年9月12日(日)福岡県 福岡サンパレス
  • 2021年9月24日(金)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2021年9月26日(日)広島県 上野学園ホール
20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU
  • 2021年7月31日(土)京都府 平安神宮
  • 2021年8月1日(日)京都府 平安神宮