HYDE|「ANTI」を経て突入した新時代

HYDE流“令和ソング”

──2曲目の「INTERPLAY」についてもお聞きします。こちらはこれまでのHYDEさんのソロ曲の系譜を継いでいるように感じました。こちらはhicoさんとの共作です。

hicoがプログラミングして僕がギターを弾きながら作った曲ですね。

──要素が多いですよね。

「INTERPLAY」のミュージックビデオのワンシーン。

そうですね。キーボードとか入れる要素が多かったし、「もっと派手にして」とかhicoの腕に任せた部分も多かった。基本的にはこれまでとやり方は変わらなかったかな。

──hicoさんはレコーディングに立ち会われるんですか?

いるときもあります。スタジオでハーモニーのアイデアが出てくることもあるので、その場で取り入れたりするし。

──曲の着想点は?

「パチスロ真・北斗無双」のテーマソングなので、フィーバーがかかったときに景気がいい曲じゃないとダメかなと。かかった瞬間にバラードが流れ始めたらダメでしょ?

──それはテンションが上がりませんね……。

「キター!」という感じになれる曲がいいなと思って、そこは意識しました。あと作っていたのがちょうど令和になった頃だったんです。その当時、“令和ソング”がいろいろリリースされてましたけど、実は僕も作ってたんです、という。

──歌詞にある「待ち望んだ時代」というのは、その意味が込められていたんですね。

そうです。令和を迎えた思いと、2020年という新しい時代が始まったという両方の意味を込めました。

──なるほど。「ANTI」を経て、新しいフェーズに飛び込んでいくHYDEさんの意識みたいなものが込められているのかな?と想像していました。

ふふふ(笑)。あと2019年は自然災害も多かった気がするんです。そこに対する復興の願いも込めました。「つらい時代だったけど、俺たちは次に行こうぜ」という。今年は東京オリンピックの年でもあるし、そこをひっくるめて新しい時代を歓迎しようという思いを表現したかった。

作りたいのは“ゾンビもの”MV

──今回は「BELIEVING IN MYSELF」と「INTERPLAY」の両方のミュージックビデオが作られて、「BELIEVING IN MYSELF」は東京の夜景をメインにした場面とライブの映像で構成されています。こちらのMVで印象的だったシーンはありますか?

「BELIEVING IN MYSELF」のミュージックビデオのワンシーン。

タイムラプスという車の光だけが映像に残るシーンかな。あと自分的には撮影時に体調が悪かったので、ソロのシーンは悲しそうな顔をしてます(笑)。

──MVの解説で「苦悩するHYDE」といった説明が添えられていましたが、リアルに苦しまれていたんですね……。

はははは(笑)。熱にうなされていました。

──ところで以前、HYDEさんはMVの構想などもご自身で考えて、コンテなども描かれると聞いたのですが、今回もその手法で?

まあ、大まかには。今回は最後にお客さんを交えたライブシーンを入れるというアイデアがあったところに、監督が提案してきた車などの光が流れるタイムラプスを採用した感じでしたね。

──後半に登場するツアーファイナルで撮られた映像は圧巻でした。オーディエンスに支えられているシーンが特に。

お客さんがこんなにが集まる瞬間はこれからしばらくないだろうから、録っておきたいなと思って。ファンの子が「重いー!」「もう無理だよ!」って言ってましたね(笑)。

──「INTERPLAY」のMVはバンドの演奏をメインにした内容ですね。

こっちは撮影時にLEDのライトやレーザーを使いつつ、個性を出したいと思って映像にあえてフィルターをかけて昔のビデオ的な雰囲気を出しました。

──1980年代の洋楽のビデオの空気感がありますよね。ザラっとしつつ、鮮やかな雰囲気と言いますか。衣装も特徴的で、黒と白の2つの衣装を着用されていましたが、白い衣装は「時計じかけのオレンジ」の主人公・アレックスがモチーフなんでしょうか?

「BELIEVING IN MYSELF」のミュージックビデオのワンシーン。

そうそう。去年実施したアメリカツアーでも着ていた衣装に「時計じかけのオレンジ」っぽいものが取り入れられてたんですよね。で、MV撮影のときに白は着用する予定はなかったんだけど、スチール撮影の際に着ていたら、MVの監督が「その衣装がいい」と言ってきたので着用しました。

──最近、日本の音楽シーンではシングル曲でなくてもMVやリリックビデオが制作されることが増えている気がするのですが、HYDEさんとしてはいかがですか?

プロモーションツールというのは変わらないけど、以前よりSNSで流すことが大事になってきて、量産しないといけないような感じがしていて。「1曲にお金をかけるよりも、アルバム全曲分のMVを作るほうが効率がいいのかな?」とか。例えば、昔の1曲分の予算で10曲分作るような。SNSやYouTubeで観てもらって、曲を聴く機会を作るのが大事になってると思います。

──MVはもともとプロモーションツールとして生まれた背景があるとは思うのですが、映像作品としてのアート性なども注目されますよね。

そうですね。アート性も追求しつつ、プロモーションツールとして両立させなきゃいけない……そこをうまいことやりたいなと思うんですけど、なかなかうまくいかないですね。予算をたくさん使って壮大なものを作ればいいということでもないし、とにかくアイデアが大事な気がするんですよね。

──試行錯誤されているんですね。今後MVに取り入れたいアイデア、やってみたいことというのはありますか?

あるある! 昔から作ってみたいと思ってるものが。

──なんですか?

ゾンビもの!

──確かにHYDEさんの曲に合いそうですね(笑)。

「INTERPLAY」のミュージックビデオのワンシーン。

このアイデアはめちゃくちゃヒットさせることができると思うんですけど、曲を選びますね。「BELIEVING IN MYSELF」にゾンビが出てきちゃダメでしょ?

──確かに。

まあ、MVに関してはアイデアを常々持っておかないと、いざ撮影が決まってから考え始めるとうまくいかない。やっぱり無理やり感が出ちゃうから。

──世情が不安定なので先行きが見えないところがあると思いますが、2020年のHYDEさんの展望について教えていただけますか?

残念ながらライブが中止になってしまったり、いろいろ見えない部分があるとは思うんだけど、やれることをやっていきます。ライブができない状況であれば、その時間を使って曲を作れるしね。時間を無駄にするつもりはないです。今年もいろんなことを企画してるし、ライブも予定しています。

──どんな状況であっても音楽活動は続けていく。

そうですね。