ほのかりん|傷心から生まれた10曲の愛の歌

日記には感情の記憶を残したいだけ

──りんさんは12歳でモデルデビューして、ガールズバンド・コムシコムサを組んだのは16歳のときですよね。曲を作り始めたのはいつですか?

ちゃんとタイトルまで決めて作り始めたのは、バンドを組んだときかな。メンバーに聴かせることはなかったですけど。それまで日記に書いてただけだったものに、ちゃんとメロディを付けて曲にしたって感じです。

──今回のアルバムにはその頃に書き溜めた曲も収録されているんですか?

そうですね。当時スタッフに送った10曲くらいの中に「メロンソーダ」も「ピローケース」も「夏好きの君」も「東京」も入ってたんですよ。それ以外はあとから新しく作りました。

──「それまで日記に書いていたものにメロディを付けた」と言っていましたが、日記は今も付けているんですね。

今もパソコンに書いてます。

──それが曲を作るときのネタ帳みたいになる?

感情に任せて書いちゃってるから、読み返すと何を書いているのかわかんないんですよね(笑)。感情の記憶を残したいだけで、基本的には「なんであんなこと言われなきゃいけないんだよ!」みたいなことばっかり書いてる。メモに書くときのほうがポエムっぽい感じになります。

──メモと日記はまた別のものなんですね。

全然違います。日記は「こんなイヤなことがあった。最悪だ」みたいなことしか書いてない。「幸せだ」って書いた日はないかもしれない(笑)。負がすごいです。

──それは曲作りとは関係ないんですね。

うん。基本的に、誰かにイヤなことされてもその人にぶつけるってことができなくて、しっかりお家に持って帰っちゃうタイプなんです。「そういえば今日あんなこと言われたわ!」って思い出したときにワッってなるので、それを書き出すだけ。「ふう」ってなります。

──曲を思いつくのはどんなときですか?

ほのかりん

えー、わかんない。遊んで帰ってるときにめっちゃ病むんで……あ、病んだときか。病んだときが多いかもしれないですね。基本的にそれが普通の状態なんですけど(笑)。

「息をするように」としか言えない

──さっきのエンパスの話もそうですけど、生きづらそう。

はい。なので音楽があってよかったです。自分が音楽を聴くときもそういう感じでしか聴かないので、音楽を聴いて「ノる」っていうことが大人になるまでわからなかったんですよ。だいたい聴きながら泣いてたし。だから私の曲も、そこを軸にして聴いてほしいんですよ。「愛の共有をしてほしい」っていうのはそういうことで。この10曲はかろうじて「愛」というテーマでつながってるだけであって、曲調も全然違うじゃないですか。作るときにこうしようとか思ってるわけではないんですよね。

──こうなった、としか言いようがないと。

そう。「どういうときに作ったんですか?」って聞かれたら、「息をするように」としか言えないというか。いっぱい文字書いてると、たまに何も考えてないのにバタバタバタって打てるとき、ありません? しかもそれがちゃんと文章になってる!みたいな。そんな感じです。

──自動筆記的な。そうすると「どういうときに作ったんですか?」と聞かれても困りますね。

「メトロ」は起きてそのままギターを手にしてて5分で作ったんですよ。夢にテイラー・スウィフトが出てきたの。なんでだろう? 私、洋楽まったく聴かないし、テイラー・スウィフトの曲も全然知らないのに(笑)。「やばい!」って起きて、そのままギターを鷲づかみして。だから何を考えながら作ったのか記憶がないんですよね。「Envy」もそっち寄りかな。“スロースターター”っていうワードを使いたいだけのために作ったみたいな曲です(笑)。ほかの人がどうやって曲を作るのか、見たい聞きたいって感じ。

──自分でほかの人の曲を聴くときも、とことん浸る感じ?

基本的に歌詞しか聴いてないです。次に声。それ以外はあんまり興味ない。だから私、あんまりライブが好きじゃないんです。ライブってうるさいじゃないですか。歌詞が聞こえなくなるのがすごいイヤで「そこ聴きたかったー!」ってなっちゃう(笑)。ダンスミュージックとか、ノれる音楽のライブのときはいいんですけどね。

スキマスイッチの存在が大きい

──りんさんは椎名林檎さんが一番好き……と言うか、それどころじゃないくらい巨大な存在だそうですね。

好きとか嫌いとか、そういう話じゃないんですよ。人生です(笑)。物心ついたときにはもう歌ってましたから。「林檎好きなんだ。どのアルバムが一番好き?」とか言われても「選べるわけないじゃん!」みたいな。「逆にあんた言える? どのアルバムのどの曲が好きか」ってなっちゃうんです。

──「林檎さんみたいになりたい」とは思わない?

思わないです。「ちょっと林檎っぽいね」って言われるんですけど、めちゃめちゃ聴いてきたから自然にそうなってるだけなんですよね。私自身は林檎っぽいなんて微塵も思わないから。

──ほかに好きな音楽は?

今はいっぱい聴くようになりました。CRCK/LCKSがすごい好きです。ほかに何が好きかな……最近スピッツを聴き始めました。あと大きいのはスキマスイッチですね。「ドーシタートースター」って曲がすごい好きで、今でも聴くんですけど。ずっと1人で話をしてるみたいな歌詞なんですよ。つらい現実を受け入れられない主人公が、受け入れようと自分でルールを作ってがんばるんです。初めて聴いたとき、幼いながらにめっちゃ悲しい歌だなって思って、そこで歌詞の重みを知ったのかもしれないです。それまでは林檎さんの歌を聴いてても、何を歌ってるのかわかってなかったと思うし。

ほのかりん

エロい男女の掛け合いがやりたい

──さっき、病んだときに曲ができるって言っていましたけど……。

プラスの感情になるときって逆にいつなんだよって疑問を持つほど、マイナスがメインです。

──「楽しーい!」ってときはない?

あんまないんですよ。楽しんでる自分を俯瞰して見てる感じで、楽しみきれない。すごいイヤだけど、楽しめたら楽しめたで帰り道に病んじゃうんで、楽しみ切らないでいたいのかも。

──病んだ状態から歌が生まれるとすると、成功したら音楽活動のモチベーションを保つのが難しくなりそうですね(笑)。

それ別の人にも言われたんですけど、大丈夫だなって思いました。人と会えば会うほど感情がマイナスになっていくから(笑)。1人でいると病んじゃうから表に出よう、人に会おうってなるじゃないですか。でも会ったら会ったですっげえ疲れて、帰ってきて「やっぱ1人でいよっかな」みたいになっちゃう。なんでこんなやつになったんだろうねって感じ。生きづらいです。

──それでどうしようもない気持ちになって、いつの間にか歌を作っちゃうのだとしたら、お客さんがそれを聴いて共感してくれるのは最高ですね。

ホントそう。私を認めてもらったみたいな気持ちになります。

──今後アーティストとしてやってみたいことは?

いろんな人と歌いたいですね。BARBEE BOYSみたいなエロい男女の掛け合いがやりたい。そのための曲を書いてみたいです。

ほのかりん「LOVE ME TENDER」
2018年5月9日発売 / フォーライフミュージックエンタテイメント
ほのかりん「LOVE ME TENDER」

[CD]
2400円 / FLCF-4513

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収録曲
  1. 愛別れ
  2. メロンソーダ
  3. ピローケース
  4. Envy
  5. 夢裡
  6. 夏好きの君
  7. メトロ
  8. ふわふわ
  9. 東京
ほのかりん
1996年10月4日生まれ。中学生の頃からモデルや女優として活動し、2013年にガールズバンド・コムシコムサにギタリストとして参加。このバンドは2016年に新人アーティストの登竜門的イベント「Coming Next 2016」に出演する。その後バンドを脱退し、ソロデビューに向けての準備を開始。2017年9月にソロデビュー曲「メロンソーダ」を配信リリース。2018年5月に初のフルアルバム「LOVE ME TENDER」を発表した。