注目のフィメールアーティストHITOMIN、メジャーデビューを果たす彼女の「Issue」とは?

若い世代に注目されているフィメールアーティストのHITOMINがデジタルシングル「Issue」でメジャーデビューした。

2019年にTwitter(現X)に投稿したカバー動画で注目を浴びたHITOMINは、インディーズで活動を開始すると半年に1枚というハイペースでEPをリリースし、「Phone」「SAYONARA」「Trip」といったヒット曲を続け様に発表。2023年12月からは自身最大規模となる全国ツアーを開催し、今年4月にツアーファイナルとして東京・Spotify O-EASTでワンマンライブを行った。

ナタリーではそんなHITOMINのメジャーデビューを記念してインタビューを実施。メジャーデビュー曲「Issue」の話題はもちろん、彼女のバックグラウンド、信念に迫った。質実剛健な彼女の言葉をぜひ受け止めてほしい。

取材・文 / 宮崎敬太撮影 / 西村満

何もできない私だけど、なぜか音楽だけはできた

──ナタリー初登場ということで、まずは簡単にHITOMINさんに自己紹介をしていただきたいです。

いきなりこんな話で恐縮なんですが、私は複雑な家庭環境で育ちまして。よくわからない理由でしょっちゅう怒鳴られたし、それ以上のこともありました。そういう現実から逃げたくて、小さい頃から空想にふけったり、本を読んだりするのが好きだったんです。今思うと、私が音楽やエンタテインメントを好きになったきっかけは自分の家庭環境だったと思います。特に好きだったのが、ディズニーチャンネルで放送していた「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」というドラマ。「こういう世界っていいなあ」と憧れを抱いてしました。

──それは何歳くらいの頃ですか?

いつだったかな。ちっちゃい頃です。私、16、17歳で実家を父親に追い出されてるからその前ですね。

──追い出された?

ええ。普通の家庭でも親と喧嘩して「出ていきなさい!」みたいなことってあると思うんですけど、うちはちょっと変わってたから本当にリュック1個だけで放り出されたんです。私も父親とは一緒にいたくなかったので、そのまま出ていきました。仲良しの友達に連絡したら、その子のご両親がいろいろご苦労された方で、私の状況を理解してくれたのでしばらくその家に泊めてもらいました。でもさすがにずっと居候するのは申し訳なくて。私自身も徐々にやんちゃな感じになっていき……。以降はかわいいエピソードが皆無です(笑)。

HITOMIN

──そんな中、10代の最後にタイガの「Girls Have Fun」を日本語で歌った動画がSNSでバズを生んでアーティストとしての第一歩を踏み出すことになりました。

ありがたいことに。2019年から2022年頃までタイプライターさん主宰のBTB ENTに所属させていただき、現在は独立して基本的に1人で活動しています。マネージャーもいないんですよ(笑)。ツアーの内容を決めたり、会場を押さえたり、スケジュール管理をしたり、グッズを発注したりとかも自分でやってます。周りにいるのは、メールの返信をしてくれたりする人、昔から映像や写真を撮ってくれてる人、バックDJやダンサーの女の子とか6、7人。少数精鋭ですが、信頼できるいいメンバーに恵まれて活動しております。

──昔からの仲間ですか?

いえ、音楽活動をする中で知り合った人たちです。この業界で長く関係を築けたり、忖度なしでいられる人はすごく少ない。何度も裏切られてきたし。でも、もう慣れました。今一緒にやってる人たちはとても信頼できる仲間たちです。

──クリエイティブの制作と実務を並行されてるんですね。

そうなんです。自分で担っている責任が大きいので、交渉するときに関係者の方にも強く当たってしまって嫌われたりっていうのもあるかもしれないのですが、クリエイティブとビジネスの両方を見れてるからこそ、フラットになれてる部分はあると思います。ただ、お金の部分は無頓着なので損しているかもしれないですね(笑)。

──そもそも音楽制作を始めたきっかけは?

「Girls Have Fun」のカバーがバズって、BTB ENTから声をかけてもらったときに「曲を作ってきて」と言われたんですよ。でも作り方なんてわからない。そしたら友達がケータイでも作れるVolocoというアプリを教えてくれたんです。それを使ってなんとなくやってみたら意外と形になったので、BTB ENTにデモとして持って行ったら「じゃあこれをちゃんと録り直してみよう」となりました。私、何もできないんですよ。マジで。でもなんか音楽だけはできた。

──「ハンナ・モンタナ」の音楽が刷り込まれてたのかもしれないですね。

そうそう。これまで聴いてきた曲の影響はあるのかも。音楽が作れるのは自分でも変な感じ。びっくりしました。

──HITOMINさんが影響を受けたアーティストは?

やっぱりマイリー・サイラスですね。「ハンナ・モンタナ」が私のルーツなので。日本だったら藤井風さんや宇多田ヒカルさん。お二人の哲学的な世界観がすごく好きです。ただ、海外の楽曲を中心に聴くことが多いかもしれないですね。それも、アーティスト単位ではなく、曲単体でいろいろ聴いてます。最近は友達が好きで教えていただいたフレッド・アゲインがすごくカッコよくて聴くようになりました。

HITOMIN

──音楽活動を始めた当初からメジャーデビューは意識されていたんですか?

どうだろう。当時のレーベル的には考えてたのかも。「歌詞の言葉遣いに気を付けてほしい」というのは言われていました。でも、私としてはずっと自分らしい歌を歌いたいと考えてますね。

──そういうスタンスは曲からにじみ出てると思います。

本当ですか! 私、引きこもりなのでめったに外出しないんですね。でもたまに出かけると声をかけてもらったり、ライブでみんなに観てもらえるのはいまだにすごく変な感じ。みんな「そういうことはいつか慣れるよ」と言ってくれるけど、まだ全然違和感があります。もちろん大前提としてありがたいという気持ちです。でもちょっと高いステージに立って、マイクを握ってるときは、照明が当たってキラキラして見えるかもしれないけど、私は本当にみんなと変わんないんです。