背伸びしない。ありのままの気持ちを一気に書く
──メジャーデビューの経緯を教えてください。
ユニバーサルの方に声をかけていただきました。独立してからは仲間を引き連れて走ることしか考えてなかったんです。人脈もないから、とりあえず一生懸命進もうと。声がかかったのは自分的には全然意図してなかったタイミングでした。本当にありがたいです。
──「Issue」のリリースを控えた今の心境は?
早く出てほしい……。なんかファンを待たせちゃって申し訳ないという気持ちが強くて。これまでの私はいわゆる個人事業主だったので、基本的にはほとんどすべてを自分1人で完結させることができていたんですね。でも今回は大きな企業との仕事で、関わってくれる人の数も段違いに多い。だからこういうスピード感に私が適応しなきゃいけない。社会勉強をさせてもらっている感覚です。
──「Issue」における「君」は何を指しているんでしょうか?
これは曲を聴いてる人がそれぞれ自分の状況に重ねられるようにするための「君」ですね。だからそれぞれ解釈が違ってていいと思っています。
──リリックの「極端な考え方で 人や出来事を図って すぐに答えを出そうとする所も身を守る術だったんだ」といったところは、HITOMINさんの半生にもつながるのかなと思いました。
それはありますね。例えば、今回は新しい活動のフェーズに入って、いろんな準備をしていく中で葛藤も少なからずあったんです。それが歌詞に反映されてる。いろんなサポートを受けてるのに、相手を信じきれない自分に対する反省とか。というか、「Issue」の歌詞は私の対人関係全般に当てはまることかもしれない。特に、この業界に入ってから斜に構えてしまうことが多くなったので。
──「1人になりたがるのは 君を巻き込みたくないから」という部分も、先ほどのあまり自宅から出ないという発言とつながりますね。
確かに。バッドなところを人に見せたくないんですよね。なんでも自分で処理するというか、自己解決する癖がついちゃってる。自分が誰かの負担になりたくないというか。でもそれが行き過ぎて、逆にこっちがシャットアウトしちゃったり。いい意味でも悪い意味でも相手に期待しなくなったし、わかってもらおうとも思わなくなった。勝手に人にがっかりするのもよくないと思いますし、結局は自己解決が一番だな、みたいなとこがモロに出た歌詞ですね。
──作詞で最も重視されていることは?
背伸びしないこと。まずテーマを決めて、あとは一気にありのままを書きます。
──歌詞のテーマはどのように見つけるんですか?
自分が日々思ったことや感じたことをiPhoneのメモにぶわーっと書いてるんです。トラックを聴いて、その雰囲気に合うのはどれかなってメモの中にから引っ張り出します。
──「Issue」のMVも撮影されたそうですね。
はい。今回は雨を降らせて撮影しました。雨粒を映すためには大粒で、かつかなり水量を出さないといけないんですよ。嵐かってくらいのレベルでした(笑)。真夏の撮影だったけど、1時間くらいしたらガタガタ震え始めて。でも歌の世界観に入り込んで感情を乗せられたし、がんばって目を開けてリップシンクしてるのでぜひ観てもらいたいです。
「Issue」は自分の弱い部分について歌った曲
──「ファンの方を待たせちゃって申し訳ない」とおっしゃってましたが、前作「UNTITLED」は去年の12月リリースですよね。ツアーもあったし、そんなに期間が空いてる感じはしないのですが。
これまでは半年ごとにEPを出していたので、それでいうとけっこう空いちゃってますね。自分が止まっていると、今の音楽シーンの消費のスピードを実感させられるというか。「待たせちゃって申し訳ない」けど、同時にステイしたことで“ゲーム”が俯瞰的に見えた。
──HITOMINさんは自分がいるシーンをいわゆるヒップホップゲームのように捉えている?
うーん……。私自身がそこに飛び込みたいとは思ってないんですよ。ただこの業界にはマネーゲームの側面もあると思う。
──となると、HITOMINさんのモチベーションはどこにあるんですか?
好きな人たちと一緒に同じ目標に向かって楽しく走り続けること。でもそれはすごく難しい。仲間との結束だって崩れるときは簡単に崩れてしまうから。だからこそ面白いんです。常に自分がどうあるべきか葛藤してます。そこにモチベーションを見出してるかな。
──昨年12月から今年4月まで開催された「UNTITLED Tour」はどんな経験になりましたか?
あまり記憶にないんですよ。忙しすぎて……。私はマネージャーがいないから、楽曲制作しつつ、ミックスやマスタリング作業の連絡をエンジニアにして、ジャケ写を作り、グッズを作り、リハーサルをしてみたいな。それを全部私がまとめてました。グッズの売り子さんの手配とか。あと倉庫からグッズを各地に発送したり(笑)。
──それはヤバいですね……。
そう、ヤバいんですよ(笑)。ツアーは駆け抜けるという感覚が強かったです。
──HITOMINさんにとってファンはどんな存在ですか?
私を支えてくれる存在です。「UNTITLED Tour」はかなりキャパい瞬間があって、メンタルがわーっとなってしまったこともありました。ステージで歌詞を飛ばしてしまったことも。そしたら私の代わりにお客さんが歌ってくれたんですよ。ほかにも「ヒトミが生き甲斐」とか「救われた」と言ってくれた子たちもいて。ファンが支えてくれたからツアーを完走できたと思っています。あと今回のツアーで思ったのは、自分のメンタルやバイブスってファンの子たちに見えちゃうことです。そこはすごく反省してるし、解決しなきゃいけない課題ですね。ファンは本当に近い存在なんだなと再確認しました。
──今後はステージに集中できるようにしたいと。
そうですね。ただマネージャーを探そうとするとあまりいいことが起きないので、ご縁があればという感じです(笑)。
──「Issue」を聴いて疑問に思ったんですが、HITOMINさんはご自身のことが好きですか?
もともとはすごく自分が嫌いでした。でもこの仕事をするようになって、けっこう個性的な方と出会う機会が多くて。自分はめっちゃ普通だったんだなと感じました(笑)。だから以前よりは好きになったかな。別に自分を全肯定するつもりはないけど、昔よりは生きるのが気楽になりましたね。自分らしく生きようって。
──(笑)。
確かに「Issue」は自分の弱い部分について歌ってる曲です。だからこの曲は自分に対して素直になれる状態でゆっくり聴いてもらえたらうれしいかな。
──最後に今後の目標を教えてください。
みんなが楽しいと思えることを探し続けていきたいです。私もいろんな人を巻き込んでいきたいし、そのためにいろんな経験や勉強をしていきます。もし面白そうだなと思ったらついてきてくれたらうれしいです。
プロフィール
HITOMIN(ヒトミン)
2019年にTwitter(現X)に投稿したカバー曲動画で注目を浴び、同年にシングル「Who is that girl」でデビューしたフィメールアーティスト。2ndシングル「body」、3rdシングル「Phone」を立て続けにリリースし、2019年9月には1st EP「Bad Bitch」を500枚限定で発売する。2020年7月に2nd EP「Stronger」をリリース。リード曲「SAYONARA」のミュージックビデオは公開から1カ月で再生数100万回を突破した。2023年12月からは自身最大規模となるツアー「UNTITLED Tour」を開催し、2024年4月にはツアーファイナルとして東京・O-EASTでワンマンライブを行った。2024年9月に配信シングル「Issue」でメジャーデビューを果たす。
HITOMIN - UNIVERSAL MUSIC JAPAN